■ アディダス、ナイキ、プーマ、H&M、ユニクロなどと取引実績のある繊維加工工場の排水から、有害化学物質検出
グリーンピースは2011年7月から、世界各国のオフィスが一体となって、化学物質による水汚染をなくしていく"デトックス"キャンペーンを行っています。
キャンペーンスタートは2011年7月13日。
グリーンピース・インターナショナルが北京と香港で記者会見を行い、アディダスやナイキ、プーマなどの世界的なスポーツ用品メーカーや、H&M、ユニクロなど大手衣料品メーカーと取引実績のある中国の2つの繊維加工工場(Youngor Textile City Complex社、Well Dyeing Factory Limited社)の排水から、有害化学物質が検出されたことを明らかにしました。
キャンペーンのスタート時に公開されたイメージビデオ"Nike vs. addidas detox challenge"
■ 企業への働きかけ
© John Javellana / Greenpeace
2つの工場から採取した排水サンプルからは、残留性や生物濃縮性のある重金属や環境ホルモンなどの有害化学物質が検出され、環境に対しての長期間にわたる影響が心配されています。
また、8月23日に発表したレポートでは、世界各国で生産・販売されている衣服を独自調査した結果を発表し、生産過程で使用されたと思われる有害化学物質が衣服にも残っている現状を指摘しました。
© Qiu Bo / Greenpeace
こうした問題の解決のためには、企業がサプライチェーン全体を通して有害な化学物質の使用を監視・削減しながら、最終的には"排出ゼロ"、つまり使用を中止するための取り組みが必要です。
そしてその第一歩は、有害化学物質の排出ゼロをめざすと宣言し、計画を発表することです。
■ 中国政府への働きかけ
グリーンピースは、企業への働きかけと合わせて、中国政府に対しても、有害化学物質の排出をなくす規制を整え、汚染物質の排出状況を市民が知ることができるしくみをつくることを求めています。
大手ブランドの衣料品をつくる中国の工場の排水から有害化学物質が見つかりました。デトックス・キャンペーン全体についてのビデオ(英語)。
■ユニクロの画期的な宣言
今回のキャンペーンには、唯一の日本企業としてユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)が登場します。
グリーンピースは、ファーストリテイリング社と有害化学物質の排出ゼロを目指して協議を続けてきました。
その結果同社は、2011年8月12日に、「当社グループの危険化学物質の排出削減・撲滅に向けた取り組みについて」と題した文章をウェブサイトに掲載し「私たちは、予防原則に基づき、ライフサイクル全般にわたる危険化学物質の排出がゼロとなるよう、誠心誠意取り組んでまいります」と宣言しました。
さらに、2013年1月9日、ファーストリテイリングは、2020年までにすべての有害化学物質の使用・排出をゼロにする「デトックス宣言」を発表。
生産工場周辺の住民の知る権利を尊重し、2013年末までに同社の全生産の80%における生産拠点について有害化学物質の使用状況を情報開示することなどを含むもので、世界的なアパレル業界をリードする画期的な合意をグリーンピースとかわしました。(合意文はこちら >>)
ユニクロのコメント:
「ユニクロは、水質保全を地球規模の重要な問題だと認識しており、有害化学物質ゼロをめざすグリーンピースの活動に加わることを誇りに思います」
(ファーストリテイリング社のグループ執行役員で企業の社会的責任(CSR)を担当する新田幸弘氏)
アジア最大のアパレルメーカーであるユニクロの動きは、国内外のアパレル業界だけでなく、中国など生産拠点国での有害化学物質の規制強化にもつながっていくことが予想されます。
■プーマ、ナイキ、H&Mなど12社も
© Greenpeace / Gerard Til
海外勢では、2011年7月26日に、世界3位の巨大スポーツブランドPuma(プーマ)社が、「2020年までに、自社製品のすべての製造過程において有害化学物質の排出ゼロを目指し、今後この目標をどのように達成するかについての具体的なアクションプランを8週間以内に発表する」と同社のウェブサイトで宣言しています。
さらに、2011年8月17日には、世界最大のスポーツウェアブランドのNike(ナイキ)社が、同様に「2020年までに有害化学物質の排出をゼロにし、消費者への情報公開も行う」と発表しました。
これまでに「デトックス宣言」を行ったのは、次の13社です(2013年1月16日現在)。
Puma、Nike、adidas、Li-ning、H&M、C&A、M&S、Zara、Mango、Esprit、Levi's、ファーストリテイリング、Benetton
■デトックス・ファッション=最新トレンド
© Greenpeace / John Novis
世界のスポーツ・アパレルブランド30数社を対象とするデトックス・キャンペーン。
長期間におよぶ調査、世界中でのパフォーマンス、イベント、オンライン署名が広くメディアにも取り上げられ、多くの人がキャンペーンに参加し成功へと導きました。
グリーンピースが、常に業界のトップ企業に働きかけるのは、市場へと与える影響が非常に大きいこと、そしてトップ企業にこそ社会的責任をしっかりと果たしてもらいたいからです。
ファーストリテイリング社の今回のリーダーシップは、日本企業による社会的責任のとらえ方として特に先進的な取り組みと言えます。
同社をはじめ、「デトックス宣言」を行った企業の今後の着実な取り組みに注目するとともに、まだ宣言をしていない企業にはより積極的な取り組みを期待します。
Zaraにデトックス宣言を求める人々。世界の街角から。
映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」で若き日のチェ・ゲバラ役で出演したガエル・ガルシア・ベルナルさんが、グリーンピースのデトックス・キャンペーンに参加してくれました!(・・・ちょっとマイクの位置が気になりますね・・・。画面下のメニューから「字幕」を選ぶと日本語字幕が表示されます)
■ デトックス・キャンペーン詳細
【日本語ブログ】
【レポート(英語)】
- 2011年5月25日発表 Hidden Consequences (水汚染の過去・現在・未来)
- 2011年7月13日発表 Dirty Laundry (衣料業界の不都合な真実: このキャンペーンの参加企業は、P38~掲載しています。)
- 2011年8月発表 Dirty Laundry2: Hung Out to Dry (衣類に残存する化学物質)
- 2012年4月発表 Dirty Laundry: Reloaded(衣類を洗濯した時の化学物質の流出)
- 2012年11月発表 Toxic Threads (対象ブランドを拡大した調査)