稼働原発がゼロになって10日が経過し、原発再稼働をめぐる攻防はより激しくなっているが、今回は、今までとは少し違う「マクロな環境」という視点から原発問題を考えてみたい。

 

人口増加

いまからおよそ200年前の1800年ごろ、地球の人口はおよそ10億人だったと推定されている。その後、1930年に20億人、1960年に30億人、1975年に40億人、1987年に50億人、1999年に60億人、そして2011年についに70億人に達している。

10億人を追加するのに要した年月は1800年以降、それぞれ130年、30年、15年、12年、12年、12年だったことになる。最近は12年ごとに10億人が増加している傾向が続くが、これは、たった1年半で、日本と同じ人口が地球に追加されていくことと同じだ。また、現在80歳の人は、その人生のうちに世界人口が3.5倍にもなっていることになる。

今後、2050年には世界人口は約90億人に達すると見込まれている。

 

都市人口 VS 農村人口

 2008年、世界の都市人口が農村人口を人類史上はじめて上回った。あまり注目されなかったニュースではあるが、世界の環境問題を考えるうえではとても重要な数字だ。

人類が初めて農耕を主とせず、都市にその生活をゆだねたことになる。また2006年には、農業人口がサービスセクターの労働人口をはじめて下回ったという。

都市に頼る人口が増えることは、単なる人口増加よりも問題として深刻だ。現在、世界中で週に300万人の割合で都市人口が増加しているという。1週間にも満たない時間をあなたが過ごすうちに、大阪市が世界でひとつ出来上がっている計算だ。

1950年代に世界で人口が1000万人を超えていた都市は、ニューヨークと東京(関東圏含む)の2つしかなかったが、2007年までに19都市まで増えた。2025年には25都市まで増えるという。世界の都市化は急速に加速している。

都市化が進めば進むほど、食料生産はより少ない人口で担わなければならない。単一作物の大規模農業化が進むことになるが、食料生産の産業化に気候変動という現象が付け加わることで作物が壊滅的なダメージを負うリスクは高まる。


消費量の増大

増える人口、そして人口の都市への流入は止まらない。しかし、人類の消費は、まるで限界がないかのように増加する一方だ。

現在70億人超の世界人口すべての人が、アメリカ人と同じ消費活動をしたら、その消費量は地球上に人口720億人いるのと同じになるという。どう考えても、このような消費活動は持続可能ではない。地球の営みにも限界があることを知りながら、見て見ぬふりの現状維持が続く。


リオ+20が6月20日に開幕

40年前の1972年は環境元年と言われる。ストックホルムで行われた国連の人間環境会議において「人間環境宣言」が採択され、国際会議で初めて環境保全に関する取組を宣言したからだ。この当時からすでに、先進国は開発をおさえ環境保全を優先することを求められ、途上国は貧困の撲滅などの開発を優先することを主張していた。

その20年後の1992年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「環境と開発に関する国際連合会議」が開催された。「持続可能な開発」をスローガンとした「リオ宣言」が採択され、地球規模での生態系の保全と開発の持続可能性を順守することを約束した。

さらにそれから20年が経過したのが今年2012年だ。6月20日から、再度ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに世界約120か国の首脳レベルが集結して、環境問題について話し合う通称「リオ+20」という会議が開催される。

しかし、人間環境宣言後の40年間で、環境破壊は一層進んできた。資源の搾取、そして過剰な消費も衰える傾向にない。人口もこの40年間で約2倍になり、地球の生態系は気候変動、汚染などのより厳しい影響を受けている。

この「リオ+20」において、3度目の正直として真に社会のあり方を変えられる経済の枠組みを作れなければ「リオ+40」では手遅れだ。


「原発ゼロ」と「グリーンエコノミー」

今年のリオ+20で注目されているキーワードが「グリーンエコノミー」だ。前回のリオ宣言後、「持続可能な開発」を「経済の持続可能性」ととらえ、言い訳程度の環境保護への取り組みで満足してしまうことも多かった。いわゆる「グリーンウォッシュ」と呼ばれる行為だ。

この「グリーンエコノミー」が「グリーンウォッシュ」となる失敗はもう許されない。

グリーンピースは、「グリーンエコノミー」を、「経済成長そのものを目標とする経済ではなく、社会が抱える課題を克服する手段としての経済と定義すべき」とリオに集まる各国政府に訴える。また、この会議にて、豊かさを測る指標としてのGDPの限界が指摘されていることにも注目している。

グリーンピースが考える「グリーンエコノミー」を具体的に実現できるのは何か?それは私たちの目の前にある原発問題だ。

現在、関西電力の大飯原発再稼働をめぐって電力需給に関する議論がヒートアップしている。その中で、関電を含む産業界や政府は、「電力が足りないから再稼働で追加する」という従来の姿勢だ。一方で大阪府市や関西広域連合は、再稼働をしないという電力供給量の中で、どう対応できるか、さまざまな工夫を募集し、対策を立てようとしている。

後者の対応は、グリーンピースの考える「グリーンエコノミー」に近い対応だ。つまり、限界を設定し(この場合は電力供給量)、その中でどのように最適な方法をとるのか創意工夫をし、イノベーションを奨励する。これにより、経済を縮小することも含めて最適化していくことで、逆に活力を見出す。

これは、原発再稼働だけではなく、長期的なエネルギー政策を選択する際にも当てはまる。

現在、経産省の委員会において2030年にどのような電源構成を目指すのかの議論が行われている。

この議論の末、「原発ゼロ」という選択をし、その範囲で経済を最適化し、イノベーションを奨励することは最先端の「グリーンエコノミー」と言える。

このようにマクロな視点で地球環境と国際関係を考えると、「原発ゼロ」を選択し経済を最適化していくような「グリーンエコノミー」を着実に実施し、経済成長自体ではなく、生活の質や幸福度を向上するノウハウを蓄積することが、日本を含めた先進国に求められていることとなる。

原発を崇拝し、膨らみ過ぎた日本経済をどのようにスマートに縮小していくのか。ここに次世代の希望を見出したい。

GDP成長率などに惑わされず、堂々と「原発ゼロ」を選択し、経済成長自体を目標とする社会から決別する節目の年にしたい。


参考文献 : 「THE NEW NORTH THE WORLD IN 2050」 Laurence Smith, Profile Book Ltd (2010)