「虹の戦士」の力を結集したい

 「いまに、地球は病み、海は黒ずみ、川の水は毒となり、動物たち植物たちも姿を消しはじめるとき、まさにそのとき、人々を救うために世界中から虹の戦士が現れる」 

これは、北米のネイティブアメリカンに伝わる伝説です。

創立当初のグリーンピースメンバーが北米ネイティブアメリカンの村を訪問し歓迎をうける

1971年、数人の若者が米国・アラスカ沖での核実験を止めようとおんぼろ船をチャーターし、核実験海域へと出航しました。

無鉄砲と思われた彼らの行動が世論を喚起し、その後、米国はアラスカ沖での核実験を中止します。

グリーンピースと名乗った彼らが、その航海中に感銘を受けたのがこの「虹の戦士」伝説で、その後グリーンピースは、所有する船を「虹の戦士号」と名付け活動してきました。

 (写真:活動初期のグリーンピースメンバーが北米ネイティブアメリカンの村を訪問し歓迎をうける)

 

短期的な経済利益より、次世代の利益を 

昨年も、グリーンピースは世界280万人のサポーターの方々のご協力で、さまざまな成果を残すことができました。

しかし、地球規模でみれば環境問題はまったなしです。

石油メジャーが手つかずの自然が残る北極圏での海底油田開発を進めたり、生物多様性の宝庫であるインドネシアの熱帯雨林がコピー用紙やパーム油のために伐採され続けたり、甚大な事故を起こした原発を「経済」を言い訳に再稼働しようとしたりしています。

これらは、次世代の人の命や環境より、短期的な経済利益を優先してしまうという現代の悪癖を象徴的に表していると言えるのではないでしょうか。

「悪いとわかっていても止められない。仕方がない」という社会は暴走列車のようにスピードを上げはじめている気がします。

 

経済・社会構造を変えたい 

次世代の取り分を奪って、短期的な“幸せ”を実現しようとし続けて良いわけがありません。

だからこそ将来世代、地球の利益を代弁し、ビジネス界、そして市場の方向性を変えることができる強い環境NGOが不可欠です。

しかし、日本にはそのような環境NGOがまだ存在していません。

グリーンピース・ジャパンは、古い環境破壊型の経済構造や企業活動と対峙し、創造的で持続可能な社会を提案できる強い環境NGOとなりたいと考えます。

その活動の起点として2013年、グリーンピース・ジャパンは、これまでほとんど批判されることのなかった原発メーカーに象徴される環境破壊型のビジネス構造とその不公正さに挑戦するとともに、長期的な地球の利益を考える企業や、地域型で持続可能な第一次産業(農業、水産業、林業、エネルギー業)を応援していきたいと思います。

 

「虹の戦士」の力を結集したい 

これまで以上に、地球の将来を真剣に考え行動する「虹の戦士」が必要です。

しかし、「虹の戦士」はどこからか飛んでくるヒーローではありません。それは、私たち一人ひとりの心の中に存在する「何かしなければ」という将来を想う真摯な気持ちの積み重ねです。

原発事故以降、日本にも多くの「虹の戦士」が生まれました。

子どもの健康を守りたいと脱原発署名に参加したお母さん、孫の将来のために意見交換会に参加したおじいさん、脱原発を求めて初めて投票に行った若者も「虹の戦士」だと思います。

グリーンピース・ジャパンは、その「虹の戦士」たちの行動力と想いをより大きな力へと結集できるように活動していきます。

 

「虹の戦士」を乗せた船のような存在に 

私たちは、大勢の「虹の戦士」を乗せ、より良い未来という目的地をまっすぐに目指し、大海原を航海する「船」のような存在を目指します。

スタッフはその「虹の戦士号」のプロのクルーとして専門性を活かし、問題の本質を見据え、高い倫理性を保持し、船を目的地にナビゲートできるように切磋琢磨していきます。

100万人、200万人という「虹の戦士」を乗せて、荒波にも笑顔の力を忘れずに挑戦する「虹の戦士号」を日本社会に進水できれば、人々の考え方の変化と、市場の変化を通じて、社会構造は変わると信じています。

これは企業からも政府からも財政的な支援を受けずに、一人ひとりの皆様からの会費に支えられ、国際的かつ独立性を維持して活動しているグリーンピースだからこその役割であると認識しています。

2013年も、グリーンピースへのご支援とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

You Can’t Sink A Rainbow.

Please Come On Board!

 

2013年1月7日

グリーンピース・ジャパン 事務局長 佐藤潤一