2014年、グリーンピース・ジャパンは、原発、秘密保護法、遺伝子組み換え作物などに象徴される「一極集中型」の古い社会システムに歯止めをかけて、自然エネルギー、有機農業、持続可能な漁業などの「多極分散型」の新しい社会システムを応援する活動を行っていきます。
政府は古い社会システムに戻ろうと必至ですが、明るい未来は、地域ごとのより小さい単位で、一人ひとりの情熱や行動力から次々と生まれてきているからです。
情熱と行動力は、人に伝わる
2012年、一本の電話がありました。
「佐藤さん、ぜひお知恵を貸してください。」
四国でもっとも小さい町、徳島県上勝町の東ひとみさんからでした。
人口2000人弱という上勝町で環境行政を担当されていた東さんとは、私がグリーンピースのゴミ問題を担当していた2003年からのご縁です。きっかけは、焼却も埋め立てもゼロを目指すと言う「ゼロ・ウェイスト宣言(ごみゼロ宣言)」を日本で初めて上勝町が採択することを提案させていただいたことでした。
しかし、一ヶ月ほど前、東さんのご家族から喪中のお葉書をいただき、彼女が2013年1月に他界されたことを知りました。
東さんは、私がこれまでの人生の中で強く影響を受けた方の一人です。
町民にゴミの34分別を提案し、いろいろな課題を乗り越えながら、実際に燃やしたり埋め立てたりするゴミをほとんどなくすことに成功したアイデア力と実行力には脱帽でした。
現在、上勝町は高齢者が参加する葉っぱビジネスの「いろどり事業」や、「ゼロ・ウェイスト」への取り組みが注目され、国内だけではなく海外からも視察が訪れたり、若者のインターンが多く集まったりするなど、高齢者にも、若者にも、地球にもやさしい活力のある町となっています。「いろどり事業」については、映画化もされました。
「一握りの思慮深く情熱的な市民が集まれば、世界を変えることができる。これまでも、世界はそうやってしか変わってこなかったのだから。」
このマーガレット・ミード(文化人類学者)の言葉を聞くと、東さんや上勝町の方々のことを思い出します。一人ひとりが想いを具体的な行動に移していけば、その情熱は人に伝播し、やがて具現化していくのだと気付かせていただきました。
「自らの情熱や行動力でたくさんの人の心を動かす」、これはグリーンピースが団体としても目指したいことです。
地域社会が創造する希望
最近、上勝町だけではなく、地域社会がそれぞれの特性を活かすことによって成功する事例がメディアでも注目されるようになりました。
このような小さい単位の成功例が数えきれなく増殖していくこと、それが環境保全と経済を両立させる「多極分散型」の新しい社会システムのビジョンです。
一方、国レベルでは、政府が世論を無視して特定秘密保護法を成立させたり、エネルギー基本計画に原発を復活させようとしたり、コンクリートに多額の税金を使う大型公共事業を再開させるなど、「一極集中型」の古い社会システムに戻ろうとしています。
2014年は農業問題にも取り組む
大規模な自然破壊や戦争は、アンフェアな「一極集中型」の社会システムが引き起こしてきたと言えます。
だからこそ、グリーンピースが目指すグリーン(生態系豊かで)でピース(平和)な社会を実現するためには自然にも、人にもフェアな社会を実現する必要があるのです。
例えば、原発や遺伝子組み換え作物などの「一極集中型」社会システムの産物を止めたり遅らせたりすることで、地域社会の分散型エネルギーや有機農業の普及を後方支援すること。これが、企業からも政府からも財政的な支援を受けずに、独立した立場で活動できるグリーンピースの役割であると認識しています。
グリーンピース・ジャパンは2014年、農薬や遺伝子組み換え作物に象徴される農業問題にも本格的に取り組みます。これは、TPPなどによって破壊されかねない国内の農業問題に取り組むことが環境保護のための喫緊の課題だと考えたからです。
2014年は、「希望」と「失望」が交差を繰り返す年になるかもしれません。
しかし、この「でこぼこ道」は、新しい社会を実現するために必ず通る道だと思います。この「でこぼこ道」で多くの「希望」と出会い、目的地まで行くためには、一人ひとりの行動が必要です。
グリーンピース・ジャパンのウェブサイト、Facebook、Twitter、メルマガ、会員向けのニュースレターなどで、大手メディアでは伝えられない情報だけではなく、わかりやすく参加しやすい具体的な行動方法をタイムリーに提案していきます。ぜひフォローしていただき、できることに参加してください。
一緒に一歩を踏み出していきましょう。
今年もどうぞよろしくお願いします。
Positive Change Through Action, Together!
2014年1月6日
グリーンピース・ジャパン 事務局長 佐藤潤一