【佐藤潤一の事務局長ブログ:最終】

グリーンピース・ジャパン事務局長退任と事務局長代理について

本日(2016年3月31日)をもちまして、私はグリーンピース・ジャパンの事務局長を退任いたします。

グリーンピースでは事務局長の任期を4年程度と推奨していますが、2010年に事務局長となり5年4ヶ月が経過し、就任時と比較しグリーンピース・ジャパンの活動基盤が整ってきたこと、またグリーンピースの職員として働きはじめ14年半が経過することなどから、決して容易な決断ではありませんでしたが、これまで得られた経験を活かし、新たな場で地球環境をまもる取り組みに挑戦してみたいと考えたことが理由です

グリーンピースの活動を支えてくださるサポーターをはじめ多くの方々からのご支援とご指導により今日まで事務局長を務めることが出来ました。心よりお礼申し上げます。

グリーンピース・ジャパンの理事会決定にもとづき、4月1日付で、現プログラム部長のタマラ・スタークが3カ月間の暫定的な事務局長(事務局長代理)を務めることになります。この間に、昨年11月より行われている新事務局長の選考プロセスが終了する予定です。新事務局長就任については、決定次第発表させていただきます。

 

事務局長時代を振り返って

 

2010年12月にグリーンピース・ジャパン事務局長に就任し、その数カ月後には、東日本大震災、そして東電福島第一原発事故が起きました。事務局長として、オランダの本部と連携をしながら福島県に国際放射能調査チーム、海洋調査のために「虹の戦士号」を福島沖へと派遣しました。この際、原発事故の悲惨さとともに、グリーンピースの専門性、機敏性、そしてその役割と必要性を改めて感じたことを覚えています。

あれから5年が経過したこの3月、改めて「虹の戦士号」を福島沖に派遣し、チャーター船とともに現地視察や海洋調査を行いました。この活動を通じて、東電福島第一原発事故が収束とは程遠い状態であること、そこで苦しみ続けている方々がいること、そして太陽光を中心とした自然エネルギーが拡大し続けていることを国内外に発信する活動が、私の事務局長としての最後の活動だったことも生涯忘れることはありません。

2011年以降は、ユニクロ、花王、大手スーパーなどの企業とサプライチェーンをめぐる環境問題の改善、そして有害なネオニコチノイド農薬規制への世論喚起など、グリーンピースのグローバルな強みを活かした企業への働きかけも強化してきました。

その中で、企業の経営者、幹部、CSR担当の方々と様々な機会でお話をさせていただきました。「佐藤さんと会って、グリーンピースのイメージが変わりました」と言ってくださることも多く、グリーンピースのミッションである「創造的対立」の意義や活動方法などの理解にも貢献できたのではないかと思っています。

環境問題に国境がないのと同様、私たちの活動に「境」はありません。国境、文化、言葉、立場の違いを超えて人類共通の課題に取り組むことができるのが国際環境NGOグリーンピースだと思います。

 

14年半のグリーンピースでの活動

事務局長だった5年4カ月を含めて、計14年間半グリーンピースのスタッフとして活動してきました。事務局長になる前には、有害プラスチック塩化ビニルの使用規制、ごみの焼却や埋め立てをやめる「ゼロ・ウェイスト宣言」自治体の拡大、リサイクルが難しいペットボトル入りビールの発売禁止、日本を世界一の海洋投棄国としていた「赤泥」と呼ばれる産業廃棄物の海洋投棄全廃、カナダやオーストラリアの貴重な森林からの製品を日本企業が購入停止するなどの具体的な成果もあげることができました。

2008年には、調査捕鯨船の船員からの内部告発を受けて、多額の税金が投入されている調査捕鯨事業における不正を追求しました。その後、証拠の入手方法を問われ逆に有罪判決を受けます。しかし、国連の作業部会が、日本政府が私たちを逮捕することは世界人権宣言に違反していると勧告してくれたり、後に、水産庁が鯨肉の取り扱いに不正があったことを認め謝罪をしたりするなど、私たちの行為の意義、そして調査捕鯨における鯨肉不正が一部認められました。

2008年から2011年に裁判が終了するまで、私たちは、ワイドショーメディアやネット上からの激しいバッシングを受けながらも「不正をする人と、不正を指摘する人、どちらを厳しく罰することが民主主義社会としてふさわしいのか」と一貫して報道機関、市民、そしてNGOが、公人の不正を指摘する権利は拡大されるべきと主張してきました。

現在、報道機関が政府の圧力に萎縮し、政府に対する監視力が弱まりつつある時代だからこそ、NGOなどの市民団体の役割がより重要になると感じます。

有罪判決を受ける可能性のある公判中だった私を事務局長とすることで、市民やNGOが公人の不正を指摘する権利を主張し続けることを選んだグリーンピースの方針は、今の時代において再評価されるべきものではないかと思います。

このような骨太の活動はグリーンピース以外の日本の市民団体では到底難しかったのではないでしょうか?


引き続きグリーンピース・ジャパンを支えてください

これらの活動は、企業や政府からの補助金ではなく、サポーターみなさまの個人からのご寄付で支えられていたからこそ可能となったものです。

私も、多くのサポーターに支えられてグリーンピースでの活動を続けられてきたことへの感謝を忘れず、私が得た経験や知識を市民社会に還元できるように努めて参ります。

地球環境、そして国内の社会環境の悪化を止めるためにも、引き続きグリーンピース・ジャパンへのご支援とご協力をよろしくお願い致します。

2016年3月31日
佐藤潤一