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 「不可能と思える変化も人々が立ち上がれば達成できる。世界はきっと良い方向に向かっていく」

1989年の東欧で起きた市民の力によって、共産圏の独裁政権が倒れていくニュースを、中学校の宿題で新聞の切り抜きをしながら追っていた私は興奮を覚えました。1989年から1990年の冷戦終結の流れは、私の中に深い印象を残し、将来の方向性を決める大きな転換点にもなりました。

 

弾圧に屈することなく通りに溢れる人の波。頑強に見えた共産圏の独裁政権が次々と倒れ、勝利にわく一般市民。この歴史の流れはもはや押し止められないーそんな確信が広がって、ドミノ倒しのように東欧の民主化が達成されました。資本主義体制の勝利とする論調もありましたが、何よりも自由と民主主義を求める市民社会の勝利だったと思います。

2017年4月9日、東欧。

およそ30年前と同じ舞台の東欧で、大きなデモがありました。ハンガリー政府が提出したNGOへの規制を強化する法案に反対し、ブダペストの通りに出た人たちは総勢7万人。参加したのは、特別な人たちではありません。いろんな人が、それぞれ、父として、母として、あるいは息子や娘として、普通の市民生活を不安なく過ごしていきたいという願いを持って集まりました。

「これこそ私の愛するハンガリー」

デモに参加しステージ上でスピーチをしたグリーンピース・東欧のカタリン・ロデイックは、抗議活動に参加することでより自分たちの権利を守っていこうという決心を固くしたと言います。

このように、市民団体による言論の自由を制限し、政府に対する批判を封じ込める動きは、私たちの日本にもあります。過去何度も廃案になった共謀罪が、テロ等準備罪と名前を変えて、今国会で審議されます。 組織犯罪を未然に防ぐという名目で、国家権力が市民活動を監視したり取り締まったり、濫用されることが懸念されています。政府に批判的な意見を持っているというだけで、尾行されたり盗聴されたり、私たちが普通の生活を送る妨げともなりかねません。

自分が大切だと思うことについて、感じたこと、考えたことを自由に表現することは、犯罪でしょうか。周りに怯えることなく、率直に意見を話すことは民主主義の当然の権利ではないのでしょうか。私たちは、「表現の自由」や「知る権利」を侵害し、市民の行動を大きく萎縮させるこの法案の廃止を求めていきます。

ほぼ30年前、共産主義の計画経済が破綻して、東欧の民主化に至りました。今日、資本主義とグローバリゼーションも行き詰まり、世界は再び大きな節目を迎えているように思います。今の経済の仕組みは、勝者と敗者を生み出し、貧富の差を広げ、将来に希望を抱けない人々を極端な思想や行動に追い立てます。その格差の両極端にある人々は、テロリズム、極右思想や排他主義など極端な思想や言動に走っています。

自分たちと意見を異にする勢力を力で押さえ付けようとするのは、全く異なる世界観を持ち、立場の隔たりが大きすぎるからでしょうか。社会全体がバランス感覚を失いっているのではないかとも感じます。

 

皮肉にも、市民社会に対する脅威は、市民社会の結束を高め、より強くします。 ハンガリーでは7万にもの人々が言論の自由を守り、健全な市民活動を守っていくために立ち上がりました。

それ自体が、強権に屈せず、意思表示する強い市民社会の象徴に見えます。 今国会でテロ等準備罪の審議に入る日本。今こそ私たち日本人も、民主主義の基盤を守っていく試練の時です。

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