こんにちは、海洋生態系担当の田中です。

先々週は東京・三田で開催されたWCPFCの熱帯マグロ(メバチマグロ、キハダマグロ等)のワーキング・グループ、先週は福岡で開催されたWCPFC北小委員会(クロマグロ等)に相次いで参加し、週末から今週にかけてはフィリピンに来ています。

WCPFCの海域ではFADsと呼ばれる人口集魚装置を使って魚を集めてまき網で囲み獲る漁法が、サメやウミガメなどを混獲してしまうことや幼魚まで一網打尽にしてしまうことから、大きな問題となっていました。

日本のまき網漁船はFADsに比較的頼らない手法で漁業をする一方で、FADsなしでは漁業が成り立たないほどFADsに頼っているのが、カツオ、キハダマグロ、メバチマグロなどを漁獲するフィリピン。WCPFCが定めるFADs規制(甘い規制ですが…)に留保の立場を取り規制を免れている唯一の加盟国です。グリーンピースはフィリピン政府に対しこの留保を取り下げ他国同様規制に従うよう求めており、そのために政府に加え漁業関係者や流通業者等にも働きかけを行っています。

まず訪れたのはフィリピン屈指のマグロ都市ジェネラル・サントス。漁港を訪れると、まき網で獲られた手のひらほどしかない子カツオが大量に水揚げされていました。船から市場に次々と運ばれる子カツオが入った箱の中には、メバチマグロやキハダマグロの幼魚も大量に混入。

写真でお腹に横線が入っているのがカツオ、縦線が入っているのがマグロの幼魚、混ざってFADsに集まったところを一網打尽にされたのです。まだ海で産卵をしたことのない子供を毎日大量に獲り続ければ、カツオもマグロも海からも食卓からも姿を消してしまうのは時間の問題ですが、漁業を行う当事者たちにその問題意識はあまり浸透していません。

混獲や幼魚の漁獲を控え、成魚を持続的に獲ることで生計を立てるビジネスモデルの構築が急務であることを周知させるため、私たちはジェネラル・サントスで開催された第15回ツナ・コングレスというフィリピンと周辺国のマグロ業界関係者が集うイベントに参加。
日本の伊藤忠や台湾のFCFといった、太平洋マグロビジネスの超大手企業がスポンサーとしてずらっと名前を連ねていました。私たちはフィリピンやインドネシアの同僚と共に企業や政府代表を回り情報共有をして、短期利益よりも持続性の確保へと方向転換を促すと同時に、手釣り漁業の組合の代表と記者会見を開きメディアに対して問題性と解決策を提示すると、その様子が翌日のローカル誌の一面を飾りました。

このまま乱暴な漁業・流通・消費が続けば、すぐにマグロも海からも食卓からも姿を消してしまいます。マグロのない寿司は寂しいでしょうし、鰹節のない和食は考えられません。マグロ・カツオ類の世界三大市場に含まれるヨーロッパやアメリカでは、消費者が持続性を確保した商品を選択購入する土台が着々と成長し、FADsフリーなツナ缶が次々と売れています。世界最大のマグロ市場国日本も、トレーサビリティーが確立し持続性が確保された漁業・流通によるマグロが消費者に選ばれる市場へと成長していく必要があります。

記者会見では海洋生態系担当の花岡が、世界最大のシーフード・マーケットである日本でもその成長が徐々に進んできており、グリーンピースが持続可能な魚介類の調達方針の策定を求めている国内大手スーパーマーケットが少しずつ商品ラインアップを見直し始めていることや、日本でサステナブル・シーフード・ビジネスにいち早く参入し土台を作るのはどの企業・国なのか、ビジネスにおいてそれは競争を意味しスピードが勝負であること等を、話しました。

次回も引き続きフィリピンからレポートします。

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