こんにちは、エネルギー担当の関根です。

今、5つの電力会社が7原発で計14基の原子炉について再稼働審査の申請を出しています。

再稼働を急ぐ政府と電力会社。

安倍首相は再稼働の理由について、「私たちには低廉で安定的なエネルギーを供給していく責任がある」といっています(7月9日夜のTBSニュース)。

安倍政権や電力会社が再稼動を主張する理由は「安定」と「安さ」?



「安定??」

でも、酷暑だった今年の夏も、動いていたのは大飯原発2基だけで、その2基も9月に運転を停止。今、原発ゼロの日々を更新中です。そしてなにより、地震の活動期に入ったといわれる日本で原発に依存することこそ、安定供給の大きな不安要因となることが、東日本大震災とそれに続く東電の福島第一原発事故で証明されたといえるのではないでしょうか。「安定供給」のために原発の再稼働が必要、というのはもう説得力がありません。

今後の安定供給は、電化製品の省エネ性能がよくなり、節電の工夫がうまくなり、自然エネルギーの設備容量や、病院や公共施設、企業の自家発電容量が増えていくことに期待したいですね。


「安い??」

さて、残る理由は「低廉」つまり「安い」です。
これは、本当でしょうか? 誰にとって「安い」のでしょうか?

まず、原発事故でどれくらいのお金がかかっているのか、誰が負担するのか、という観点から少し整理してみましょう。

◇    賠償金 5兆円~
原発事故の賠償金はこれまでだけで3兆円を超えています。
これは9月24日までに東電が国(原子力損害賠償支援機構、以下機構)から受け取った額で、合計3兆1683億円です。賠償金のまだ総額はわかっておらず、当初見積もられていた5兆円を大きく超えることが予想されています。

...事実上、国民が負担
東電は自腹ではなく、機構から交付された(もらった)お金で賠償をはらっています。そして、この東電の手にわたったお金が国に戻るかどうかはきわめて疑わしいのです。なぜなら、借金のように、いつまでにいくら返済する、というように厳しいルールではなく、東電に利益がでたら、払う(返す)、とされている*からです。(*原子力損害賠償支援機構法)

◇    除染 5兆円~
除染の費用もまだ総額がわかりません。いくつかの試算が出ており、最大5兆円を超すとした産業技術総合研究所の研究グループの試算や、約28兆円にものぼるとした原子力資料情報室の試算もあります。

...ほとんど、国民が負担
除染の費用はすべて、事故を起こした東電が最終的に負担することになっています*。つまり、国や自治体が除染に要した費用は東電に請求できます。でも実際には、たとえば、国が2011年度から13年度までに税金から出した1兆3000億円のうち、今日までに国が東電に請求したのは211億円、償還して(返して)もらえたのが44億円にとどまっています(2013年10月4日 環境省問い合わせ)。最終的にどの程度、償還されるかは、とても不透明です。(*放射性物質汚染対処特措法)

◇    汚染水 対策費用は未知数
汚染水の海洋流出に対応するために政府は、手始めで470億円の国費を投入すると発表しました。政府は、汚染水処理を今後、国の直轄事業にするという方針のもとに法律をつくろうとしているので、今後、さらなる国費が投じられる可能性があります。

国民にとっては安くない

一度の事故は、被害を受けた人々の人生を一変させてしまったことに加え、国民にとってとても高い代償となってしまいました。原発が「安く」みえていたのは、3.11以前にはこうしたコストがいっさい「かからないこと」になっていたから。
再稼働の理由、「安い」は、リスクやコストが国民に押し付けられているということを無視してるにすぎません。

賠償・除染・汚染水だけをとっても国民にとっては、安いどころかとても高ついている原発。

原発が「安い」から稼働するなどという話は全く現実とかけ離れています。

 

次回は、10/1から電気料金に上乗せできることが決まった廃炉費用についてです。


※    なお、お金がかかっても賠償も、除染も、汚染水を止める対策も、必要なことはやるべきです。そして、そのときに重要なのは誰に責任があるか、を見失わないことです。