こんにちは。海洋生態系を担当しています花岡和佳男です。

12月9日、国内スーパーマーケット大手5社(イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友)の魚介類商品の調達や、情報公開等に対する取り組みを調査・評価して「お魚スーパーマーケットランキング3」を発表しました。持続可能性や安全性の観点から継続的に調査・評価をしてきたこのランキングは今回で3回目となりますが、前回最下位だったイトーヨーカドーが大躍進を見せ、今回は第1位となりました!

グリーンピースはこの調査に先駆け10月に、皆様からお預かりした「未来に魚を残すため、放射能汚染、乱獲、違法漁業の魚を売らないで」とする約8000通のオンライン署名を、イトーヨーカドー含む大手5社及び業界団体に届けました。多くの「消費者の声」が、今回のイトーヨーカドーの大躍進を後押しし、日本のスーパーマーケット業界に持続可能性や安全性を確保する取り組みを更に強化させる力となりました。署名にご参加いただいた皆様、有難うございました!

 

イトーヨーカドーが第1位。その評価点は?

今回の調査項目は魚介類商品における「調達方針」「取扱商品」「トレーサビリティ」「情報公開」「放射能汚染問題」の5つ。その中でイトーヨーカドーは、「調達方針」で同率1位、「トレーサビリティ」と「情報公開」で1位となり、総合評価で1位を獲得しました。

  • 調達方針 (同率1位): イトーヨーカドーは、商品の仕入をするにあたっての方針/基準である「調達方針」の大枠に環境への配慮を掲げています。今後は全ての魚介類を対象としたより具体的で持続可能性を確保する調達方針の作成と公開が必要ですが、その第一ステップは踏み出しているとして、評価されました。
  • トレーサビリティ (1位): 「トレーサビリティ」は生産から消費まで商品の流通経路が追跡可能な状態のことであり、商品の仕入れが「調達方針」通りに行われているかを確認する手段。イトーヨーカドーは他社と比較してより多くの商品において、情報収集の上で商品採用していることが分かりました。しかしその取り組みはまだまだ不十分で、特に生産過程や流通経路の確認が難しく、鮮魚製品と比べて商品表示義務が甘い「加工品(缶詰や練り製品等)」において、不正や誤認を防ぐことができるトレーサビリティ体制を作る必要があります。
  • 情報公開 (1位): 今回の調査により、イトーヨーカドーは他社より比較的多くの商品において商品情報を消費者に提供していることが分かりました。その姿勢は一定の評価に値するものの、一方で把握している商品情報よりも公開している商品情報の方が少ないことも浮き彫りとなりました。残念ながら店舗での現状ではまだまだ、売られている魚介類商品が、生態系を著しく破壊する漁法で獲られた可能性があるかどうか、違法に獲られた可能性が高いものかどうかを、消費者は判断することができず、選択購入することができません。
  • 総合評価(1位): 総合で1位となったイトーヨーカドーですが、獲得ポイントは100ポイント中67ポイントと、まだまだステップアップの余地が大いにあるものです。トップ企業が67ポイントしか獲得できないということは、それだけスーパーマーケット業界全体の持続可能性や安全性に対する意識や取組みのレベルが低いことを意味します。実際に店舗を見渡せば、乱獲されている魚や絶滅危惧種も、当たり前のように商品棚に陳列されています。子どもたちの海と食卓に魚を残すために、これらの種の取扱いを今は控え、代わりに資源管理がされている種を積極的に探しだして調達していくことが求められます。また、資源管理がしっかりとなされるように行政に働きかけることも、消費者の食卓に魚介類商品を提供するスーパーに求められています。

 交渉にあたって

企業交渉を担当する私はイトーヨーカドーの担当者とメール、電話、面談などで交渉を重ねてきました。前回のランキングの際は調査への協力を拒否し最下位となったイトーヨーカドー、今回はお客様相談室マネージャーが「最後までしっかり対応します」とし、シニアマーチャンダイザーが具体的回答や追加情報を準備し、その内容が評価され、大逆転の1位となりました。

イトーヨーカドーが「最下位はまずい。1位を目指す」としたプレッシャーを作りだしたのは、たくさんの消費者の声であり目です。スーパーマーケット業界は、店舗に寄せられる一通の「お客様の声」の後ろに10~100の需要があると考えるそうです。今回寄せられた8,000名の署名がもたらす効果がとても大きいことが、今回も目に見える形となりました。またグリーンピースが継続するランキングで最下位となることによるブランドイメージの低下にも、頭を悩ませていたようでした。私たちはこれまで、最下位だったイトーヨーカドーに取り組み強化を求めるオンラインプロジェクトを展開していましたが、イトーヨーカドーの担当者は「そのページを拝見させていただいております。なんとか来年は継続しないでいただけるよう、取り組みを強化していきます」旨のコメントをしていました。

実際にお金を落とす消費者の力で、スーパーは変わります。食卓に並ぶお魚の約70%はスーパーを経由しています。これからも多くの「消費者の声」でスーパーの前向きな取り組みを応援し、子どもたちの海と食卓に豊富で美味しいお魚を残していきましょう。

スーパーを変えるオンライン署名、まだやっています。一人でも多くの「消費者の声」をお寄せください!

次のブログでは、今回のランキングで2位となったイオンの取り組みやその評価についてお知らせします。