こんにちは。エネルギー担当の柏木です。

(7/1追記:グリーンピースの提出したパブリックコメントを末尾に追加しました)

いま、経済産業省が「小売電気事業の登録の申請等に関する省令案」に対するパブリックコメント(パブコメ)を実施しています。この省令案、一見、難しいタイトルで私たちには関係なさそうですが、ところがどっこい、大アリ。この省令案の中に、電力会社が消費者に説明しなければならないルールが書かれているのですが、「電気の”原材料”」の義務化にはまったく触れられていないのです。

今の省令案のままでは、「電気の”原材料”表示の義務化」は実現しません。資源エネルギー庁の方に、「パブコメで多くの人が求めれば、義務化は実現するのか?」とお聞きしたところ、「その可能性はある」とのことでした。

私たち消費者の声を、直接政府に届ける、またとない機会です。難しいタイトルに惑わされずに、一言でも送ってみませんか?
 

さて、「省令案」ってどんな内容?

公表されている「省令」は全部で9条。申請の様式(フォーム)4つも含めて全部で38ページ。

電力会社に、供給する電力を確保すること、電力の供給計画の提出などが義務付けられるほか、電気の購入者保護の観点から、苦情や問い合わせへの迅速な対応についても、定める内容です。

 

パブコメのポイント 

「電気の”原材料”が知りたい」というあなたにとって、ポイントになる2点をご紹介します。

ポイント1:電気の”原材料”(電源構成)の表示が義務化されていない

第3条:第三条法第二条の十三第一項に規定する小売供給に係る料金その他の供給条件についての説明は、次に掲げる事項について行わなければならない。ただし、第四号に掲げる事項のうち苦情及び問合せに応じることができる時間帯については、小売電気事業者が小売介等」という。)を業として行う者(以下「契約媒介業者等」という。)の業務の方法についての苦情及び問合せを処理することとしている場合は、この限りでない。

→ (意見の例)すべての電力会社が、すべての電源構成を統一のルールのもとでわかりやすく表示するよう義務化を求めます。

3条は、電力会社が電気を買う人に対して「説明しなければならないこと」を定めています。例えば、電力会社の名前や連絡先、料金、契約期間についてなど・・しかし、この中に、電気をどのように発電されているかを示す”原材料”表示の義務化については、触れられていません

「原発フリーの電気が欲しい」、「CO2フリーの電気が欲しい」、そんなあなたが電力会社を選ぶためには、すべての電力会社が、すべての電源構成について、統一のルールのもとでわかりやすく表示する必要があります。

ポイント2:固定価格買取制度(FIT)によって買い取られた自然エネルギーかどうか、消費者の知る権利が制限されてしまう

固定価格買取制度(FIT)とは、自然エネルギーを普及促進するための政策で、電力会社に、ある一定期間、固定された価格で自然エネルギーを買い取ることを義務づけています。

2012年7月に導入されて以降、FITは日本で自然エネルギーを増やした立役者です。たとえば、家庭用の太陽光発電は、10年間・33円での買取となります。この買い取り価格を実現しているのは、わたしたちが負担する賦課金。電気料金の請求書には、必ず「再エネ賦課金」という項目があります。

第4条:小売電気事業者(特定契約・・・・に基づき再生可能エネルギー電気・・・を調達し、当該調達した再生可能エネルギー電気について交付金・・・の交付を受けている小売電気事業者に限る)及び当該小売電気事業者が行う小売供給に関する契約の締結の媒介等を業として行う者は、小売供給を受けようとする者と小売供給契約の締結又はその媒介等をしようとするときは、その者に対して、当該調達した再生可能エネルギー電気が環境への負荷の低減に資するものである旨を説明してはならない。

→(意見の例)「環境への負荷の低減に資するものである旨を説明」とは、具体的にどのような説明を指すのかが不明瞭です。また、消費者には、FITの電気についても知る権利がありますが、第4条はその妨げになる可能性があります。

4条は、FITの補助を受けている自然エネルギーを売る場合に、「環境への負荷の低減に資するものである」ことを説明してはいけない、と言っています。FITの電気は、わたしたちの負担で成立しています。電気会社がそのことを隠して、普通の電気より高い値段で自然エネルギーを販売し、儲けるのはけしからん!という考えが背景にあります。(FITの補助を受けた自然エネルギーをどのように扱うか多くの議論がありますが、理解して頂きやすいようとてもシンプルにご説明しています)

4条の結文は、「◯◯してはならない」という禁止の文章で、また「環境への負荷の低減に資する」のがどういうことなのか、具体的には不明瞭です。これを受けて、電力会社はFITの補助を受けた電気については触れることなく、説明しないかもしれません。これでは、わたしたちが、自分たちの負担で成り立っているFITの電気がどれだけ含まれているのか、知る権利も制限されてしまいます。

 


 

パブコメの出し方 3通り

 

 ネットから

電子政府の総合窓口のサイトの下のほうにある「意見提出フォームへ」のボタンを押して、フォームから

2000文字まで、となっていますが何通でも出せますので、2000文字を超える場合は、何回かに分けて提出してください。

 FAXで

意見提出用紙に連絡先及びご意見をご記入の上、(03)3580-0879へFAX 

 郵送

意見提出用紙に氏名、連絡先及びご意見をご記入の上、下記の住所に郵送。 

住所:〒100-8931
東京都千代田区霞が関1-3-1
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力・ガス改革推進室 パブリックコメント担当 

 eメール

意見提出用紙に氏名、連絡先及び本件へのご意見をご記入の上、下記のメール アドレス宛てに添付にて送付

メールアドレス: (件名は「小売電気事業の登録の申請等に関する省令案」として、意見提出用紙を添付して送付)

【締切】 2015年7月1日(水)

小売電気事業の登録の申請等に関する省令案」はこちらからダウンロードできます。

 


 

「”原材料”表示」以外のポイント 

この省令、他にもポイントがあります。例えば、電気料金の内訳を知りたい、というあなた、残念ながら、その義務についてはこの省令案には書かれていません。

コンシューマネットジャパンのウェブサイトに、他のポイントも含めた「意見書案」の資料が掲載されており、参考になります。こちらから

 


【グリーンピースが提出したパブコメ】

意見:電源構成の表示義務化について(第3条第1項23号および第7条第1項22号)

供給先に、前年度の電源構成(割合)ならびに二酸化炭素排出量(g/kWh)、放射性廃棄物量(bq/kWh)を、全国平均と並べて、電力料金の請求書や広告等に分かりやすく表示することを求めます。

グリーンピース・ジャパンが第三者機関に委託して行った意識調査では、「毎月家庭に届く請求書に電源構成や二酸化炭素排出量、放射性廃棄物排出量などが示されていた方がよいと思いますか? 」という質問に「はい」と答えた人は半数以上にのぼり、「いいえ」と答えたのはわずか1割弱でした。消費者は、価格以外の選択の根拠も求めています。

(ご参照 2014年12月18日発表、意識調査に関するプレスリリース

また、グリーンピース・ジャパンが、本年5月21日から6月16日まで実施した電源構成の表示を求める、「わかりやすい電気の“原材料”表示を求める」オンライン署名では、わずか3週間で11,556筆の署名が集まっています。

(ご参照 2015年6月17日発表、署名に関するプレスリリース

日本に先んじて自由化した欧州では、電力に関する情報を消費者が知る権利が重要視されており、EU加盟国28カ国中、26カ国において法制化されています。実際に、ドイツでは、エネルギー事業法42条により、電力料金の請求書や広告において、発電源の構成をグラフ等で明示すること、発電にともなう二酸化炭素排出量と放射性廃棄物量などを表記することが義務付けられています。

なお、現在、電力会社は法律に基づいて、発受電を毎月報告しており、電源構成の表示義務化にあたって負担増につながるという制度設計ワーキンググループでもあげられた指摘は、情報の透明性に後ろ向きな姿勢を示しただけに思われます。

意見:固定価格買取制度の交付金の交付を受けている電力の表示について(第4条及び第8条)

省令案第4条及び省令案第8条の削除を求めます。固定価格買取制度の交付金を受けている自然エネルギーの電気について、交付金を受けている由、消費者に誤解のない説明を義務付けるべきです。

以上