こんにちは。海洋生態系担当の花岡和佳男です。

これまでのブログやレポートなどでお伝えしてきたように、世界のウナギ生産量の約70%が日本で消費され、そのうち約99%が絶滅危惧種に指定されており、その主な商品はパック詰めされた蒲焼などの加工商品です。

昨日8月3日は、暑い時期を乗り切る栄養をつける為としてウナギを食べる習慣のある、「夏の土用の丑」の「二の丑」の日。スーパーマーケットなどにとって「夏の土用の丑の日」はウナギ蒲焼商品の年最大の商機で、この「二の丑」の日はその販売プロモーション期間の最終日という位置づけです。

この日の夜の閉店間際、大手スーパーマーケットの店舗を覗いてみると、商品棚には売れ残っていた大量のウナギ蒲焼商品が並んでいました。賞味期限が切れたら破棄されてしまうのでしょう。持続可能性を無視し短期利益を優先した薄利多売型ビジネスが、次世代の海と食卓から生態系と魚介類を奪っている、まさにその現場です。

 

短期利益を優先する薄利多売型ビジネス

子どもたちの海と食卓に豊かな生態系と魚料理を確実に残すため、グリーンピースはこれまで、絶滅危惧種を薄利多売する大手スーパーマーケット5社に対して、持続可能な魚介類の調達方針を策定する第一歩として、絶滅危惧種の取扱いの中止を求めてきました。これまで面会、電話、メール、手紙などを通じて各社と対話を続けており、今回のウナギについても、資源状態や薄利多売モデルの問題点を指摘したレポートを発表と同時に各社に送っています。

また、私たちは対象5社の本社だけでなく、各店舗にも直接、ウナギのレポートと共に、「二の丑」の日を回答期限とする質問状を送りました。消費者に直接商品を提供し「消費者の声」に対応する各店舗の店長が、自らが販売する商品について正しい情報と問題意識を持ち、その問題性について本社に問い合わせてもらうためです。

各社の返答と、それに対するグリーンピースの評価は、以下の表の通り。

  質問事項と各社からの回答 回答状況
質問事項 貴店には本社から、ニホンウナギの資源状態に関する説明はありますか?もしある場合、それはどのようなものですか? 絶滅危惧種に指定されているニホンウナギを取り扱うにあたり、貴店独自の取り組みはありますが?もしある場合、それはどのようなものですか? ――
イオン ある。本年のうなぎ販売に関して、資源が減少している中、既に契約養殖している商品を「土用の丑」期間に大切に販売すると共に代替商品(さんま蒲焼,お肉の蒲焼等)を積極的に販売する様、説明がありました。 ある。以下の内容をグループ方針として公表しています。小売業として日本の伝統的な魚食文化の継承に努め、今後資源枯渇が懸念される魚種の回復に向けた取り組みに参画してまいります。1.うなぎに代わる新たなメニュー提案2.資源回復に向けた活動への参画3.トレーサビリティの取り組み4.更なる環境に配慮した取り組みの実践 【回答状況】多くの店舗から返答があり、回答内容は全て同じ。ウナギの問題について各店舗と本部とのコミュニケーションがとれている。【グリーンピース評価】日本の伝統的な食文化の継承に努めるため、小売業の本業の部分での取り組み強化が不可欠。①絶滅危惧種を取り扱わない、②乱獲された魚を取り扱わない、③持続可能性が佳確保された魚を積極的に取扱う、という要素を含む、持続可能な魚介類の調達方針を策定することが求められる。
ダイエー ある。本年のうなぎ販売に関して、資源が減少している中、既に契約養殖している商品を大切に販売すると共に代替商品(さんま蒲焼,いわし蒲焼等)を積極的に販売するよう説明。  ない。店独自の取り組みは特にありませんが、小売業として日本の伝統的な食文化の継承に努め、今後資源枯渇が懸念される魚種の回復に向けた取り組みに参画してまいります。①うなぎに代わる新たなメニュー提案②資源回復に向けた活動への参画③トレーサビリティの取り組み 【回答状況】各店舗からでなく本社が一括回答すると、本社から返答。基本的に親会社イオンからの返答と同内容。ウナギの問題について各店舗と本部、ダイエーとイオンとのコミュニケーションがとれている。【グリーンピース評価】日本の伝統的な食文化の継承に努めるため、小売業の本業の部分での取り組み強化が不可欠。①絶滅危惧種を取り扱わない、②乱獲された魚を取り扱わない、③持続可能性が佳確保された魚を積極的に取扱う、という要素を含む、持続可能な魚介類の調達方針を策定することが求められる。
西友 ない ない 【回答状況】各店舗ではなく本社が回答すると本社から連絡があったが、一店舗から直接左記の返答があった。ウナギの問題について各店舗と本部との間に意識の開きが大きい可能性がある。【グリーンピース評価】本社の考え方については下の面会報告を読んでください。
ユニー ある。「しらすの漁獲量が減って、価格が高騰している。」という説明がありました。 ある。店内加工をしている蒲焼に貼るシールに、「ニホンウナギ」であることを表示しております。 【回答状況】数店舗から返答があり、全て同じ内容。ウナギの問題について各店舗と本部とのコミュニケーションがとれている。【グリーンピース評価】商品ラベルに「ニホンウナギ」の表示があるのは全体のごく一部。ユニーが販売するウナギの多くは依然としてウナギの種を示しているとは言えない。
イトーヨーカドー ある。全店会議室等において、年々ウナギの稚魚(しらす)の水揚げが減少している状況の情報共有を実施。 ある。代替品としての「さんまの蒲焼」「豚の蒲焼」等による、お客様へのメニュー提案を実施 【回答状況】各店舗からでなく本社が一括回答すると本社から返答があった。ウナギの問題について各店舗と本部とのコミュニケーションがとれている。【グリーンピース評価】小売業の本業の部分での貢献が不可欠。持続可能な魚介類の調達方針を策定する必要がある。

 

西友、イオンを超えてリーディングカンパニーになれるか

西友は対象5社中で唯一ワシントン条約対象種を取り扱わないという調達方針を持ち、ヨーロッパウナギの取扱いをしないとしています。一定の評価ができる方針ですが、残念ながら一方では相変わらず絶滅危惧種の薄利多売を続けています。先日私たちは、西友の執行役員シニア・バイス・プレジデントの方と、今後のウナギ調達や、持続可能な魚介類の調達方針の策定について、話し合いをしてきました。

ウナギ調達の今後について「資源状態の悪化は既に把握している。このままではいけないと思っている」と問題意識を口にするようになり、持続可能な魚介類の調達方針については、「ウナギだけではない。魚介類全体の調達方針を作らなくてはいけないと思っている」という前向きな発言がありました。問題意識と方向性が明確となった今、西友が次に取り組むべきことは、①絶滅危惧種を取り扱わない、②乱獲された魚を取り扱わない、③持続可能性が佳確保された魚を積極的に取扱う、という要素を含む、持続可能な魚介類の調達方針の策定に向け、「いついつまでに何をする」というロードマップを描くこと。

 

「消費者の声」が、流通を変える

世界有数の魚介類消費国である日本で、スーパーマーケットは家庭で消費される魚介類のおよそ70%を販売する、漁業や消費の持続可能性の確保に大きな影響力を持つチャネルです。

 政府や国際機関による資源管理が十分に機能していない中、グリーンピースは消費者に魚介類商品を直接提供するスーパーマーケットに対して、豊かな生態系と恵みを次の世代の海と食卓に確実に残すため、絶滅危惧種や乱獲されている種の取扱いを中止し、持続可能性が確保されている魚介類を積極的に取扱う、魚介類の調達方針の策定・実施を求めています。

みなさん、ぜひオンライン署名「一週間、魚食べずに過ごせる?」に参加して、スーパーマーケットに「絶滅危惧種や乱獲された魚の薄利多売は止めてほしい。持続可能に獲られた魚を買いたい」という消費者の声を届けてください。