ウィルマー社が「森林破壊ゼロ」方針を導入!

ウィルマー社、「森林破壊ゼロ」に一歩前進!

ウィルマー・インターナショナル(Wilmar International Ltd、以下ウィルマー社)はシンガポールに拠点を置く世界最大手のパーム油企業であり、世界で取引されるパーム油の3分の1以上を取扱っています。トラの生息地を含む森林の大規模な破壊や、労働者や地元住民の権利侵害などに関与し、以前からグリーンピースをはじめとするNGOや、地元住民、労働者、そして世界中の消費者から強い批判を受けてきた企業です。

そのウィルマー社が12月5日、「追跡可能(トレーサブル)で環境的・社会的に責任のある方法で生産されたパーム油への需要増加を受け、森林破壊ゼロ(注1)、泥炭地破壊ゼロ、開発ゼロの方針を導入する」と発表しました。

この方針は、今までグリーンピースが問題を指摘してきた「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil、以下RSPO)」認証システムのさらに先を行き、パーム油産業を「森林破壊ゼロ」へ変えられる可能性があります。


 ◆パーム油とは?アブラヤシの実

日本国内ではあまり知られていない、“パーム油”。
パーム油はアブラヤシの実を搾油して、精製し作られます。
じつはこの油、石鹸や洗剤などの日用品からマーガリンや菓子などの食用品にいたるまで、私たちが毎日使用する商品に幅広く使用されています。

しかし、現在日本でパーム油が使われている商品でも「植物油脂」とだけ表示されていることが多いため、この油のことはあまり知られていません。

このパーム油産業が近年、驚くべき速さで熱帯に広がる手つかずの大自然を破壊し、国際的な環境問題として大きな注目を集めています。


守ろう!トラの楽園

グリーンピースでは長年にわたり、インドネシアの森林を破壊から守るべく活動を続けてきました。ウィルマー社に対する取り組みは7年前から行っています。

今年の後半から、グリーンピースは400頭にまで減少し絶滅の危機にあるスマトラトラを、“私たちが守らなければ森林と共に失われてしまうものの象徴”として、「守ろう!トラの楽園」(Protect Paradise)というキャンペーンを展開してきました。

 スマトラトラの子供

グリーンピースの調査レポート:パーム油産業の問題点

◆ Certifying Destruction(森林破壊の認証)

クリックしてダウンロードページへ(英語)9月に発表したレポート“Certifying Destruction(森林破壊の認証)” では、環境に配慮した持続可能なパーム油の生産と利用を促進する組織として設立されたはずのRSPOの会員が、いかに違法かつ破壊的な方法でパーム油を生産し、そしてそのRSPO認証パーム油を“持続可能なパーム油”として、世界中のマーケットに流通させているかということを明らかにしました。

長年に渡り環境的・社会的な問題を引き起こしてきたウィルマー社も、
テッソ・ニロ国立公園を違法に破壊したウィルマー社のサプライヤーも、
泥炭地やオランウータンの生息地を破壊したウィルマー社のサプライヤー:ブミタマ社(Buminata Agro:注2)も、みなRSPO会員です。

License to Kill (絶滅許可証)クリックしてダウンロードページへ(英語)

そして、次なるレポート“License to Kill (絶滅許可証)”では、パーム油産業全体とウィルマー社が、広大なインドネシアの森林破壊に関与し、希少種であるスマトラトラを絶滅の淵に追いやっていることを訴えました。

 

ウィルマー社の新方針、トラの森を守れるか?

この新方針が、かけがえのないインドネシアの森林を守れるかは、ウィルマー社が今後この方針を実施していけるかにかかっています。

今回のウィルマー社の新方針では、森林破壊を止めるための大まかな枠組みが提案されましたが、まだ以下のような検討されるべき事項が上げられます(注4)。

  • 国内法・国際条約などを順守し、贈収賄を防ぐための枠組み作り
  • 他企業への新規投資の前に、その企業が新方針を順守していることを確認する
  • 独立した第三者機関が、サプライヤーのコンプライアンスを評価する
  • ビジネスの透明性を高めるため、サプライヤーの経営状況など必要な文書を一般公開する
  • パラコートなどの毒性の強い除草剤や、遺伝子組み換え作物の使用禁止を含める


私たちはウィルマー社が今後、森林伐採、違法な泥炭地破壊や社会問題を引き起こすガンダグループ(Ganda Group)などのサプライヤーに対し適切な働きかけを行っていくかどうかを監視していきます。

 テッソ・ニロ国立公園で姿を現したゾウ

消費者の声が企業を変える!タイガーチャレンジ

クリックして著名に参加 (英語)さらに企業間で取引を行うB to B企業よりも、消費者の声に敏感なB to C企業に働きかけるため、グリーンピース・インドネシアが中心となって世界250社以上の消費財メーカーに手紙を送り、企業交渉を行いました。

交渉後、ユニリーバ社とフェレロ社は2014年までに原料パーム油の調達をトレーサブルにし、2020年までに「森林破壊ゼロ」のパーム油のみを使用すると発表しました。(注3)

日本ではグリーンピース・ジャパンとの協議を経て、花王が「森林破壊ゼロ」方針の導入にはいたらずも、2020年までに原料パーム油をトレーサブルにすると約束してくれました。

しかしプロクターアンドギャンブル(P&G)や、ロレアル パリ( L'Oreal)などの企業は大手メーカーであるにもかかわらず、まだ「森林破壊ゼロ」方針を導入していません

これらの企業やブランドに「森林破壊から作られたパーム油は使いたくない」という消費者のみなさんの声を届けるため、「タイガーチャレンジ」というオンライン署名を、現在も引き続き行っています。


あなたの声を企業に届けよう!

あなたも「タイガーチャレンジ」に参加して、インドネシアの森林をまもりませんか?
右の画像をクリックし、名前、苗字、Eメールアドレス、国名を入力し、『COUNT ME IN』をクリックすると署名に参加できます!


世界中の人々がソーシャルメディアで「守ろう!トラの楽園」と声を上げています!

TwitterやFacebookで『#protectparadise』と検索してみてください。

クリックして著名に参加 (英語)


 注1) 「森林破壊ゼロ」とは?

グリーンピースの言う「森林破壊ゼロ」とは、保護価値の高い森林(HCV)、炭素固定量の多い森林(HCS)、泥炭地の破壊を伴わないという意味で、これらに該当すると判断された森林に関しては開発を行わず、これに該当しない荒廃した森や保護価値の高くない森を、社会問題を伴わないように利用することを企業に求めています。

<グリーンピース・インターナショナルのブログ(英語)>

注2) ブミタマ社に関するブログ
注3) ユニリーバ社やフェレロ社の新方針に関するブログ
注4) ウィルマー社の新方針に関するブログ

<参考資料>

ウィルマー・インターナショナル(外部サイト:英語)

インドネシアの森林問題について、さらに詳しい情報はこちら(英語)