こんにちは。海洋生態系担当の花岡和佳男です。

本マグロと呼ばれ寿司の主役である太平洋クロマグロ、いま海に残っているのは初期資源のわずか4%で、いつ絶滅危惧種に指定されてもおかしくない状態。

残り4%ってどういうこと?96%は一体どこに行ったの?

ウナギもそうだけど、なんで和食の代表格がこんなに次々と危機に?

 

未成魚や産卵親群の獲りすぎで海に魚が残らない

マグロと聞くと大きな魚をイメージしますよね。

でもなんと、漁獲量の実に98%もが、未成魚(子供や赤ちゃんのマグロ)です。海で卵を産む前に獲られてしまうので、海で魚が増えるわけがありません。

 

それに、せっかく成熟してお腹に卵を宿した産卵親魚(妊婦さんマグロ)も、産卵のために群れてゆっくりと泳ぐところを、大きな網で一網打尽にされてしまいます。卵は港で魚から外されて、身が各地に出回ります。その卵、海に残せていたらなあ…

こんな漁業が続いているのですから、太平洋クロマグロにとっては資源回復のチャンスすらありません。

 

スーパーマーケットで売られている「本マグロ」って?

そもそも、マグロは基本的には、やっぱり大きいほうが美味しい。

特に産卵親群なんて、栄養が卵にいっているから、食材としての質は決してよくない。

それなのにどうしてこんなに大量に漁獲されているの?

 

その答えはこの写真。 

 写真のラベルに記載されている「めじまぐろ」というのは、クロマグロの未成魚という意味です。スーパーマーケットでよく見かけますよね。切り身になっているので魚の実際のサイズはわからないし、そもそも「めじ」が未成魚を意味するなんてことも、普通はわかりませんよね。

 

それに、これも。

卵を宿した親魚は産卵のため、初夏に日本海で群れを作ります。ちなみに日本海や西南諸島周辺の海域は、北太平洋を広く回遊する太平洋クロマグロの、現在確認されている唯一の産卵海域。ソナーや魚群探知機などを持った漁船はこの産卵海域に出向き、産卵のためにゆっくり泳ぐこの群れを、次々と一網打尽にして、主に鳥取県の境港で水揚げします。初夏に「鳥取県」を産地とする「本マグロ」がスーパーなどで売られているのを見かけたら、それは多くの場合、産卵親群です。スーパー最大手のイオンなどで、売られていますよね。

 

安く大量調達可能な「国産」「天然」「本マグロ」

未成魚や産卵親群は、大きなサイズが身質を重視してきちんと獲られたものに比べて、圧倒的に価格が安く、更にある程度まとまった量が手に入りやすいもの。

そうです、未成魚や産卵親群は、スーパーマーケットや回転寿司店など薄利多売ビジネスを展開するところにとって、安くて大量に調達することができる、「国産」「天然」「本マグロ」のブランドを持つ商品。

売れそうなブランドを安価で大量調達するスーパーマーケット等が作り出す需要が、持続性を無視した乱獲の背景にあるのです。

そこでグリーンピースは国内大手スーパーマーケット15社を対象に、クロマグロの調達についてアンケート調査を行い、その結果をまとめました。

問題意識の高いスーパーはどこ?

あの大手スーパー、あまりにもひどくない?

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行政主導に頼るだけでは間に合わない! 

この太平洋クロマグロの国際的漁業規制について話し合われる国際会議(WCPFC北小委員会)が、9月1日から福岡で開催されます。

私は何年もこの会議に参加し、今年も行きますが、行政主導の資源管理に頼るだけでは、残念ながらクロマグロがいなくなるペースには追いつけないことを、毎回実感します。

この魚を撮り続け食べ続け子供たちに残していくために、マーケット側からの取り組み強化が不可欠なのです。

食卓に並ぶ魚の70%を販売するスーパーマーケットを動かすには?

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