こんにちは、核/エネルギー担当の鈴木かずえです。

東京電力の福島第一原発事故から3年と7カ月。
放射線の除染に改善が見られる一方、根本的な問題が改めて明らかになりました。

グリーンピースは10月24日~27日に、福島県で放射線調査を実施。福島市(原発からの距離60キロ)、飯舘村(同40キロ)、田村市都路(同20キロ)、川内村(同20キロ)の状況を調べた結果の概要をお知らせします。


除染作業:改善されているが、優先順位の変更が必須 

  • 2011年、12年に比べて改善している
  • 間違った優先順位:現在人々が実際に暮らし、日常的に被ばくリスクにさらされている場所(福島市など)を優先すべき。なぜ、帰還の可能性のより低い場所に最も多くの除染リソースを投入するのか? 一方で、人口が密集する汚染地はリソースが足りず、住民が日々危険にさらされている
  • 除染が効果的でない場合には、転居もできるように十分な支援を
  • 再汚染は続き、再度の除染が必要になる可能性あり

写真: 福島市渡利の児童公園の放射線測定 再汚染の可能性がある © Noriko Hayashi / Greenpeace 


福島市内: 放射線量は減少し、除染作業は改善されているが、ホットスポットが未だに残留

 
写真: 福島市内の病院の裏出入り口付近の路上に見つかったホットスポット © Noriko Hayashi / Greenpeace

写真: 福島市渡利の阿武隈川岸: 依然として放射線量は非常に高い © Noriko Hayashi / Greenpeace

写真: 福島市渡利のアパート前に置かれた放射性廃棄物 © Noriko Hayashi / Greenpeace

 

田村市都路:昨年調査時と放射線レベルは概ね同じだが、再汚染の心配も

(都路は、2014年4月に政府により避難指示が解除された地域(20キロ圏内))


写真:都路地区で放射線調査を行うグリーンピーススタッフ
  • 2013年10月調査時と比較し、放射線レベルは概ね同じ
  • 再汚染もあり得る
  • 放射能汚染はしつこい問題:いまだ主要道路上の計測地点の34%で0.23uSv/h以上のまま(0.23uSv/hは、年間1ミリシーベルト以内を目指す政府の除染目標に相当)

 

川内村:計測地点の59%で政府の除染目標まで低減せず

(川内村の計測地点は、2014年10月に政府により避難指示が解除された地域(20キロ圏内))

 
写真:川内村(20キロ圏内)にある放射性廃棄物の一時保管場所の前で放射線調査を行うグリーンピーススタッフ
  • 除染済みの道路は、都路の元の避難指示解除準備区域と比べ、約2倍高い放射線量
  • それにもかかわらず、避難指示は解除され、住民への補償は1年後に打ち切りになる可能性

 

飯舘村中心部:除染の効果不十分。再検討が必要


写真:飯舘村の小学校の校庭に置かれた放射性廃棄物
  • 政府による非常に大規模な除染作業が進行中:これまでのところ効果は不十分。除染の作業完了後、再検討が必要
  • 放射線量が依然として非常に高い。住民が安全に帰還する目途を立てるのは困難

 

除染は必要。でも、除染は移染にすぎず、環境も思い出も破壊する。

 

写真は福島県中通南部の方のお庭です。かつての面影さえもなくなったということです。

汚染地で暮らす以上、除染は必要です。

でも、除染した後は、除染廃棄物が残り、水を使えば、汚染された水が出て、最終的に河口や海の汚染につながります。

そして、個人宅の除染では、環境だけでなく、丹精込めた庭木や、四季折々に心を楽しませてくれていた花々も切られます。

原発事故が被災者から奪うものは取り戻せないものばかりではないでしょうか。

原発事故のリスクを高める再稼働を止めていきましょう。

 


※今回の放射線調査結果については、10月30日に記者会見を行い(
発表資料データシート)、川内原発の再稼働を判断しようとする鹿児島県庁にも翌31日に提出しました(プレスリリース)。なお、調査結果は後日、別ページに整理してまとめる予定です。