こんにちは、食と農業担当の石原です。
今回のブログ、「“農薬ありき”の農水省が、オーガニックの足を引っ張っている」と、少々強気に始めています。
というのも、6月3日(金)、農林水産省に、みなさんから集まった「子ども・ミツバチ保護法を求める署名」23,655筆を届け、農薬対策室の室長と話をしてきました。
農水省との対話では、普段冷静なわたしでも(?)ぐっと堪えなければならないほど、ネオニコチノイド系農薬(以下ネオニコ系農薬)のミツバチ被害について、農水省の無責任さが目立ちました。
署名を提出したのは、農薬対策室の古畑室長。うしろには、「ミツバチを守って!」というみなさんからの寄せ書きが。署名の重みとみなさんからのメッセージが、農水省との対話を勇気付けてくれました!
世界中で規制、日本は緩和。
殺虫剤としてさまざまな野菜に使われている「ネオニコチノイド系農薬」はいま、世界中で規制が進んでいます。
ブンブン飛び回って作物の受粉を助けてくれているミツバチを、このネオニコ系農薬が危機に追いやっている、という研究が、続々発表されているからです。ヨーロッパでは、その真意がはっきりとわかるまで、一時的に使用を禁止する措置をとっています。
もし受粉を助けるミツバチがいなくなってしまえば、食料の生産が難しくなってしまうので、私たちの食を守るためにも政府が対応するのは当然のことです。
それなのに日本では、その流れに逆行するように規制緩和が進んでいます。実際、去年5月にも、ネオニコ系農薬2種の残留基準値(野菜の中に残っていい農薬の量のこと)が引き上げられたばかり。
さらに追い打ちをかけるように、今月の7日、さらに1種の緩和が決まってしまいました。
農水省が、わたしたちの食の安全と、生態系を守るために、ネオニコチノイド系農薬の規制についてどう考えているのか、聞いてきました。
養蜂家がミツバチの箱を移動すればいい
ネオニコ系農薬がミツバチにダメージを与えていると報告があってから、農水省がどのようにミツバチを保護しているのかを聞いたところ、いきなり、人任せな回答。
つまり、ネオニコチノイド系農薬を使う前には養蜂家に農薬を使う計画を通知して、巣箱を移動するように伝える必要がある、と農家に指導している、ということです。
農水省には、”農薬の使用を規制する”という考えが全然見られません。ネオニコ系農薬の被害者であるミツバチや養蜂家さんの負担が増えるような保護しかしていないのです。
養蜂家さんは巣箱を100箱も持っていたりもするので、通知されても簡単には移動できません。避難したほかの場所で農薬使われるかもしれないし、山では熊の被害もあります。
EUはもちろん、韓国や、まだ規制をしてないアメリカでも、ミツバチをまもるためにネオニコ系農薬の新規登録は止める方針をとっているというのに…。
野生の生き物への影響を検証するのは農水省じゃない
野生のミツバチやトンボなど、ネオニコ系農薬の被害を受けている生き物たちの保護について聞いたところ、農水省、こちらもまた責任放棄です。
野生のミツバチなどの、飼育されていない生き物たちも、農作物の受粉の70%も助けてくれています。ですが、農水省は、「家畜」ではない野生の生き物は環境省の管轄だから、農水省は責任をもたない、というスタンス。ミツバチが減少しているというリスクを前に、官僚のたてわり行政、まだまだ続いてるんです!
ミツバチは農業を支えてくれる立役者なのに、あまりに無責任ではないでしょうか。
有機を増やすのは別の部署の仕事です
農水省には、再来年までに有機の耕地を0.4%から1%まで増やそう、という方針があります。それに、2020年の東京オリンピックでは、ロンドンオリンピックからスタンダードとなっている「倫理的消費」をテーマに、選手村で有機農産物を提供するのことも求められるでしょう。
© Kayo Sawaguchi / Greenpeace
農薬対策室はどう貢献するんですか?と聞いたところ…
「農薬の選択肢を増やすのが仕事。有機とかの部署とは別」とのご回答。
オーガニックを増やすどころか、足引っ張ってるのが、農水省なんじゃないか…。そうもいいたくなる無責任さです。
無責任な政府に、食の安全は任せられない
政府がこの無責任さを貫くなら、消費者は、消費者の力を使って、自分たちの食の安全を守るしかありません。
消費者が一番力を発揮できる相手、それはスーパーマーケットや生協などの農産物を販売するお店です。
大量に農産物を仕入れるスーパーや生協が有機の農産物を増やせば、”農薬ありき”の日本の農業の現実を変えていくことができます。
スーパーや生協に、「有機の野菜やくだもの、お米の取り扱いを増やして!」と伝えませんか?力を合わせれば、スーパーや生協と一緒に、農業を変えられます。
「有機を増やして!」 いますぐ署名 >
6月7日に、ピーマンやトウモロコシなどに使われるネオニコ系農薬「チアメトキサム」の残留基準が、新たに引き上げられてしまいました。例えばトウモロコシでは、残留基準がこれまでの10倍に引き上げられています。
この農薬も、EUでは2013年から一時的に使用禁止になっている農薬です。
わたしたちは、厚生労働大臣宛に今月中にも、「子ども・ミツバチ保護法を求める署名」に集まった23,655の市民の声を提出し、ネオニコチノイド系農薬の規制緩和に対し抗議を行う予定です。
厚労省への提出のご報告をぜひ待っていてください。
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