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みなさんこんにちは、食と農業担当の関根です。

北風が吹いて、虫たちの姿が見えなくなる今頃が、じつはミツバチたちがハウスのイチゴ栽培などで大活躍を始める時期なのだそうです。

 

 

11月9日、養蜂現場の声や最新の科学的情報を伝え、ミツバチや食を守る法規制をつくってもらうため、国会議員を対象とした院内学習会を開催しました。

今年、農林水産省は3年にわたる調査の結果、ミツバチの減少の原因がネオニコを含む農薬との関連をようやく認めましたが、ネオニコの規制など決め手となる対策はまったく打てていません。そのような中で、いまミツバチたちの現状はどうなっているのか、そして、食や生態系への影響は…? 2人の専門家のお話を2回にわたってお伝えします。

 

最初の講演は、養蜂歴40年以上、国内でもただ一人のミツバチ専門医でもある養蜂家の俵博(たわらひろし)さん。

イチゴハウスにミツバチを送り出す繁忙期にもかかわらず、現状を話しにかけつけてくださいました。

 

実りをささえるミツバチをもっと大事に

最初に俵さんが強調したのは、ハチたちが花粉を運ぶ役割。イチゴ栽培ではミツバチがいないと成り立たたず、はちみつを集める以上に重要です。また春になれば、野外のりんご、さくらんぼ、なし、かき、うめなどの畑でも活躍します。(日本の農業生産額の8.3%はハチたちが貢献しているんです![1])

ミツバチを、農業にとって重要な生き物である、としっかり位置づけることが必要で、ミツバチが農薬で死んだり弱ってしまったりしている現実は、虫の問題ではなく「農業の問題」としてもっと深刻にとらえる必要があるのです。

 

 

ネオニコのダメージを受けた群れは、回復しない

畑で活躍するミツバチだから、以前から農薬がかかって死んでしまうという事故もときどきありました。でも、個体数が減っても従来なら2週間くらいで群れはまた回復し、大きな問題はなかったそうです。

ところが、ネオニコが使われるようになってから明らかに様子が変わって来て、個体数の減った群が回復しなくなってしまった、といいます。

 

[夏に、無人ヘリコプターでネオニコ農薬をまくと、ハチが消えるようにいなくなり、そのまま回復しない…]

 

そんなミツバチを目の当たりにしてきた俵さんは農林水産省の調査結果や対応をどう見ているのでしょうか。

 

農林水産省の対応は「対策」ではなく「常識」

農林水産省は、「ミツバチのいるところで使わないよう農薬のラベルに表示する/農家は農薬をまく時は養蜂家に連絡をする/ハチが巣に帰る夕方に散布する/スプレーでなく粒剤を推奨する」、などの「対策」をとっています。でも、これは養蜂と農業の世界ではすでに「常識」であって、あらたな「対策」とはとてもいえない、とのこと。

こういう「常識」が共有されて、養蜂と農業の関係は良好に保つことができていました。

そこへ、「常識」の範囲では対応できない毒性の強いネオニコが出てきてから、あちこちで問題が多発しているのです。

だからこそ「対策」というからにはネオニコ農薬の使用規制など、ミツバチをまもる決め手が必要です。

また、農林水産省がカウントして把握できているミツバチの被害事例は、実際の被害とくらべると氷山の一角にすぎない、といいます。

 

早春には深刻なミツバチ不足が起きるかも!

今、俵さんが心配しているのは、次の春のはじめ頃には、これまでにないミツバチ不足が起きるかもしれない、ということ。最近、ミツバチにつくダニが、最近耐性をもってしまって駆除する薬剤が効かなくなってきたことや、さらに今年は、九州や北海道の水害でミツバチもダメージをうけたことも重なったそうです。 

ミツバチの生きる環境は過酷になってきている、と俵さんはいいます。

そんなときだからこそ、人間がコントロールできること、例えば蜜源をまもることや、ネオニコのような強い農薬で追い打ちをかけたりしないことが、ますます大切になっています。

 

ミツバチにやさしくない農薬の「売り方」「使い方」

俵さんは、“棚の菓子パンを買うように容易に農薬が買える”現状に警鐘をならしています。同時に、農薬は「本当に必要不可欠な用途に限って」、かつ濃度などの使用規定を守ってほしい、と訴えます。

ミツバチの被害との関係では、農水省も水田で斑点米(黒く変色した米つぶ)の原因となるカメムシを殺すために、大量の農薬が散布されることが大きな原因と認めています。

今回の院内学習会の呼びかけ議員の篠原孝衆議院議員も斑点米がお米1,000粒に2粒入るだけでお米の買い取り価格が大きく下がってしまう米穀検査制度の問題点を取り上げ、これがネオニコ農薬を使わせる大きな原因のひとつ、と指摘しました。

 

こんな制度がなければ、農家さんにもネオニコ農薬をわざわざ使わなくてもよいのです。 

問題は農薬の「使い方」だけでなく、使わなくてもいいところで「使わせる制度のあり方」にもあるといえそうです。

 

次回のブログは、もう一人のスピーカー、科学者のマイケル・ノートンさんの講演です。

 

☆ この学習会は、次の方々に呼びかけ議員になっていただきました。ありがとうございました。

小川勝也参議院議員、篠原孝衆議院議員、徳永エリ参議院議員、福島みずほ参議院議員

 

今すぐあなたにできること

ネオニコ農薬を使わなくてもおいしいお米は作れます[1]。もし斑点米が混じっても、今は機械でとりのぞけます。

あなたの使うスーパーでも、ネオニコを使わないお米を積極的においてもらうよう、意見を送りませんか?

 

「有機を増やして!」 いますぐ署名 >

 

[1]「農作物の花を訪れる昆虫がもたらす豊かな実り-日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価-」(2016年2月4日 国立研究開発法人農業環境技術研究所プレスリリース)

[2]グリーンピース・ブログ:農薬ではなく生きものの力を借りた農業を

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