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沖縄北部の森「やんばる」の森が、世界自然遺産の候補になっています。もし登録されれば、知床、白神山地、屋久島、小笠原諸島につづく国内の世界自然遺産になります。でも、素直に喜べない事情があります。(文:沖縄プロジェクトアシスタント山本) 

1.やんばるの自然

やんばるの森

高江という集落は、「やんばる」と呼ばれる豊かな自然に囲まれた地域です。世界で唯一の湿潤な熱帯照葉樹林を棲み処として生息している動植物が数多くいます。そこには、教科書等でも知られている飛べない鳥のヤンバルクイナやキツツキの一種で(オスと幼鳥のみ)頭の赤いノグチゲラ、日本最大の甲虫のヤンバルテナガコガネなど貴重な生物が生きる、「生物多様性の宝庫」といえます。

ヤンバルクイナ

 

ノグチゲラ

やんばるの森は、世界自然遺産に登録に値する価値が十分に認められる環境です。しかしながら、日本政府がこの森林地域のなかで推薦対象としている範囲からは、高江を取り囲むように6つの新型輸送機オスプレイ用のヘリパッドが建設された米軍北部訓練場が除外されています。つまり、米軍機は低空飛行を繰り返し、推薦地内外に生息する生物が騒音、低周波音、高熱排気ガスの影響を受けることが懸念されるにもかかわらず、世界自然遺産として登録されようとしているのです。このような軍事基地が隣接する状況で、果たして生態系を保護することができるのでしょうか。 

2. 東村高江 「米軍ヘリ墜落炎上」

さて、ご存知の方も多いと思いますが、1011日に東村高江の牧草地にCH53E大型輸送ヘリコプターが墜落し炎上しました。今回炎上したCH-53ヘリコプターは、2004年に沖縄国際大学(宜野湾市)で「墜落事件」を起こしたほか、1999年にも北部訓練場で墜落し乗員4人が死亡する事故を起こしています。

 

沖縄タイムス【号外】「米軍ヘリ、沖縄で墜落・炎上」(20171011日)

3. 事故による住民への被害

2007年に人口約140人が暮らしている高江集落の周辺で新しい米軍ヘリパッド建設工事が着工してから、住民は事件・事故の危険にさらされつづけてきました。今回の炎上事故は、最も近い民家から約300メートルの地点で起きました。報道によると(*1)、事故現場となった土地の所有者である西銘晃さんは、30年かけて牧草地を改良してきました。その牧草地を「元通り回復するのはかなり不可能に近いだろう」と語っています。「質がいい」と評判の牧草でしたが、一度の事故によってこれまで通りつくることができなくなってしまったかもしれないのです。

また、今回の事故後、住民の間には事故機の部品に含まれる放射性物質の飛散への不安が広がりました。「3.11」後、県外から沖縄へ避難した人たちが少なくありません。高江で生活する人たちのなかにも、3.11後に移住した人たちがいます。その一人の清水亜生さんにお話を聞いてきました。それまで生活してきた大阪で「災害廃棄物(がれき)」の受け入れが始まることがわかり、2012年に沖縄に移住されたそうです。現在、子どもは18ヶ月。炎上事故後は外に出ないようにしたり、洗濯物を外に干さないようにしたりしたと被ばくしないように配慮したと言いますが、「どこまで気を付けたらいいんだろう」と見えない放射線に対する不安を口にしていました。

このような不安を抱えつづけてきた住民の方々にとって(*2)、今回の事故は「起こるべくして起こった事故」でした。高江の住民の方たちは、北部訓練場が存在し軍隊が訓練を実施し続けるかぎり、事故だけでなく、騒音被害や環境破壊をはじめとした様々な不安やリスクから逃れることはできません。そして、やんばるにしか生息していない希少な動植物たちも例外ではないのです。

西銘晃さんの牧草地で放射線を測定している様子(右:矢ヶ﨑克馬琉球大学名誉教授) 

「命の楽園をまもって」オンライン署名にご協力ください!

豊かなやんばるの森をまもるための意思表示の方法の一つに、署名があります。グリーンピースでは、高江のやんばるの森と、辺野古の大浦湾の保全と周辺住民の安全な生活を求めるオンライン署名を実施しています。みなさんのご署名は、これまでも定期的に防衛省宛に提出を続けており、次なるタイミングに向けて継続中です。

あなたも高江のかけがえのない森とともに生きているあらゆる「いのち」のために、数十秒のアクションから始めませんか。ご協力よろしくお願いいたします。

「命の楽園をまもって」いますぐ署名で伝える >

山本真知子 - 東京都内の大学院に通いながらグリーンピース・ジャパンの沖縄プロジェクトのアシスタントをつとめる。

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*1 琉球新報(2017)「『牧草、もう戻らない』 改良30年 地主肩落とす 高江ヘリ炎上、米軍土壌搬出」(10月21日) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-597389.html (アクセス:2017年10月26日)

*2  ヘリパッドいらない住民の会(2017)「海兵隊Ch53E大型輸送ヘリ墜落に対する抗議声明」http://takae.ti-da.net/ (アクセス:2017年10月26日)


 

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