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こちらのジェンツーペンギン。どう見てもアザラシに何かを訴えているように見えます。寝床を捉えて怒っているのかもしれませんが、もしかしたらこう言っているかもしれません。「ちょっと起きて!俺たちのエサが奪われるよー」

小さなエビのような甲殻類・オキアミは、南極のほとんどの動物たちにとって、なくてはならない存在です。ペンギンから巨大なクジラまで、たくさんの生きものがオキアミを主要なエサにしているからです。

オキアミが大好物の、お腹の空いたシロナガスクジラの気持ちになってみましょう。南極のオキアミは、人間の指先くらいの大きさなので、1匹ずつ捕まえて食べているわけはありません。大きく口を開けて一気に捕まえます。オキアミは数百万匹もの巨大な群れになっているので、狙いやすいのです。 

次に、オキアミを逃さないように注意しながら、海水をろ過する必要があります。クジラの口の「ヒゲ」と呼ばれる器官大きな舌はこのためにぴったりにできていて、海水をろ過しつつ食べものを残してくれます。 

人間も南極のオキアミを捕まえますが、ハイテク機器や巨大な漁船・漁網を使うこと以外は、原則はクジラと同じ。小さなオキアミが逃げないようにとても細かく編まれた漁網を使って、母船にオキアミを海から引き上げたり吸い上げたりします。

獲られたオキアミは、海上で処理されます。海水を取り除き、乾燥したオキアミだけを残します。ここから、サプリメントのオメガ3に使われるオイルを抽出し、残りは養殖魚用のエサになります。南極で獲られたオキアミのほとんどは、私たちの直接の消費にまわることはありません。ほとんどの場合、最終的には養殖のサケの餌料やペットフードとなります。

これが、南極の食物連鎖を支える最も重要な生きものの悲惨な最期。より大規模に、より広域に、より貪欲になっている工業型の漁業の姿の一つです。

南極ではほとんどの動物たちがオキアミを食べて生きているので、大規模なオキアミ漁が拡大することは、すでに温暖化の影響に苦しんでいる動物たちにとっては悪夢と言えるでしょう。

南極に迫る危機

オキアミ漁業は、サステナブルで環境への負荷が少ないというブランドイメージで売っていますが、現実は、将来的にオキアミ漁がどのような影響を及ぼすのか見通しが立っていません。オキアミには氷が必要なので、気候変動の影響で南極の海が温暖になるとオキアミに深刻な影響が出る可能性が高いと考えられています。長期的に見て、オキアミ漁がサステナブルなのか推測することは難しいのです。

オキアミ漁の局所的な影響は、ペンギンやクジラ、アザラシなどの決まったエリアでオキアミを食べて生きている動物たちにとって、壊滅的なものとなる可能性があります。私達にとって、地元のすべてのスーパーマーケットに何も商品が並ばなくなったような状態なのですから。

 

子育てのために特定のエリアから動けない動物にとっては、影響はより深刻です。グリーンピースが新しく発表したレポートでは、とても気がかりなことが明らかになりました。大規模なオキアミ漁が行われているエリアが、ペンギンが繁殖する海岸や、オキアミを求めて何千キロもの旅をするクジラの餌場と重なっていることがわかったからです。効果的な方法で容赦なくオキアミを獲る大型漁船を相手に、南極の動物たちはエサを巡ってたたかわなければならないのです。

さらに、オキアミを積み換える大型冷蔵船を使って、漁船がより長い期間、より多くのオキアミを獲り続けることが可能になっていることも明らかになりました。 

オキアミと南極の動物たちをまもるには?

今年、南極に動物たちのサンクチュアリ・南極海保護区をつくる大きなチャンスがやってきます。10月に世界のリーダーが一同に介して、科学者が提唱している南極海保護区を実現するかどうか話し合うのです。

世界のリーダーに求めることはとてもシンプルです。

オキアミ漁を拡大させず、ペンギンやクジラのような野生生物が生きてくために必要なエリアに、オキアミ漁の手が伸びないようにすることです。南極の生きものに欠かせないオキアミが、繁殖のために重要なエリアで獲られ続けるのであれば、南極海保護区の設置は、形だけのものになってしまいます。

私たちができることは、一歩踏み出して、お腹の空いたクジラやペンギンを、大規模漁業からまもることです。世界のリーダーたちにあなたも一緒に伝えてください。南極にサンクチュアリを!

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