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こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。

 

9月9日に、原子力規制委員会に質疑応答する会が開催され、グリーンピースも参加してきました。何についての質疑応答かというと、あの件です。

 

原発での最大の揺れの過小評価問題

元原子力規制委員会委員長代理の島崎さんが、いま原子力規制委員会が採用している「入倉三宅式」という算出方法で計算すると過小評価になる、と警告し、他の方法である「武村式」で再計算するように、原子力規制委員会に要請した件。

なかなか込み入って難しい問題なので、くわしくはこちらのブログも見ていただきたいのですが、要はこのような問題です。

・規制庁は、関電が使っている「入倉三宅式」で計算。関電が算出した数字よりも小さい値が出た

・「武村式」で計算したら、関電の想定の「最大の揺れ」には届かないから問題ないとした

・島崎さんは、規制庁が「武村式」をつかって算出した数字は、「入倉三宅式」の1.8倍であり、もともと関電の「入倉三宅式」で出した数字が同じように1.8倍になるとすると、関電が想定する「最大の揺れ」を超えてしまうと指摘 

・規制庁は、「再計算は科学的でなかった」として撤回してしまう

 

関電の計算を再現できなかった規制庁

再計算が誤っていたなら、やり直せばいいのに、それをせずに、ただ撤回したのも問題ですが、関電の計算を再現できなかった(関電と同じ「入倉三宅式」を使って計算したのに、関電の数字よりも小さい数字が出てしまった)ことも問題です。

だって、関電のやり方を把握していなかったーーなのに、了承した、ということになりますから。

 

9月9日、原子力規制庁に聞きました。

 (「原子力規制を監視する会」「美浜の会」などが中心となって開催した、地震・避難などについて国と質疑応答する会にグリーンピースとして参加しました)

 

質問:なぜ関電の計算が再現できなかったのか?

 

原子力規制庁(地震・津波担当:岩田さん):地震動の評価についてはレシピ(計算の方法)が示されているが、詳細にわたる計算のやり方が全て示されているわけではない。規制庁の試算では、主要パラメーターを決めた上に地震動を計算するが、断層モデルを計算する際の詳細なやり方が関電と違っていた。

 

質問:関電のやり方の詳細をわからないままでいいのか?

 

原子力規制庁(地震・津波担当:岩田さん):審査では、主要なパラメーターを確認して全体像を確認する。関電の計算方法は国で検証されたものであり、詳細な部分については規制庁が確認する必要はない。関電の計算を再現する必要性は感じていない。 

……

こんな規制でいいのでしょうか。

最大の揺れの想定というのは、原発が、その揺れまでなら耐えられるようにします、というもの。想定が間違っていたら、原発の耐震性には大きな疑問符がつきます。

それほど重要な想定の数字の計算を再現できなかった規制庁。

ということは、計算があっているかどうか確認できていないということではないでしょうか。

今回の再計算については、田中 原子力規制委員長は7月20日の記者会見で「5人だけの委員ですから、それで全ての分野を全部、そういう細かいところまでカバーするというのは、はっきり申し上げて、ああいう細かい話になると、十分に理解するというわけにはいかないというところはありますので、そういうことを申されるのであれば、能力不足だったということです」と言っています。

であれば、能力のある外部の専門家に議論してもらうべきではないでしょうか。

けれども、原子力規制委員会は7月27日に大飯原発の地盤は相当固いとか、活断層の長さを相当長く見込んでいるからなどの理由で「現時点で大飯発電所の基準地震動を見直す必要はないという 判断を改めてしたい」と結論づけてしまいました。

「最大の揺れを過小評価しているのでは?」という疑問には今も応えていません。

 

関電の計算はブラックボックス 再現する必要ない (規制庁)

 「美浜の会」の小山さんが指摘するように、原子力規制庁は、この小さい値を元に、問題ない、と判断したのですから、これが正しいのかどうかは重大な問題です。

「原子力規制を監視する会」の阪上さんが、関電の計算を再現できなかった件について、関電にも確認することを求めましたが、岩田氏は「計算自体はブラックボックスになっているところもある。全てを開示して、再現しなければいけないと思っていはいない」と言いました。

ブラックボックスに命を預けることなどできません。

 

専門家も「規制委の判断は誤り」と

専門家もこの件で、原子力規制委員会を批判しています。

「規制委の判断は誤りだ」—(毎日新聞2016年8月30日)—

政府の地震調査委員会「強震動評価部会」の纐纈(こうけつ)一起部会長(東京大地震研究所教授)は「活断層が起こす揺れの予測計算に、地震調査委は09年の方式を使う。規制委が採用する方式の計算に必要な『断層の幅』は詳細調査でも分からないからだ。これはどの学者に聞いても同じで規制委の判断は誤りだ」と指摘する。

.........

この問題は、これで終わらせてはいけない問題だと思います。

ぜひ、このブログや以下の記事などを広めてください。

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関連リンク 

<政府交渉報告>原発地震動評価・耐震性/くり返しの揺れ考慮せず!基準地震動計算はブラックボックス! 原子力規制を監視する市民の会

<記事>揺れ想定の計算、規制委に異議 地震調査委側「過小評価」指摘 毎日新聞2016年8月30日 

<記事>大飯原発「基準地震動評価」が批判されるワケ 東洋経済on line 2016年08月17日

<記事>基準地震動の計算見直し要望も 運転延長で県専門委 /福井 毎日新聞2016年9月1日地方版

また、この日は、熊本地震で経験した繰り返される地震に原発は耐えられるのか、を質し、熊本地震では多くの建物が倒壊し、また、倒壊の恐れから屋内退避ができないケースが多くあったが、屋内退避が基本という原子力防災対策指針の見直しを求めました。質疑応答の中で、ヨウ素剤配布の基準がないことも明らかになりました。

くわしくは、以下の報告をご参照ください。

【9.9政府交渉報告:熊本地震で「屋内退避」は無理であることが明らかに!しかし規制庁は現場も見ず、従来通りの「屋内退避」方針堅持...「いろいろ検討」の中身は答えず 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止めるプルサーマルの会

<政府交渉報告>防災訓練 安定ヨウ素剤「服用の明確な基準はない」 美浜の会

 

また当日の模様は以下でご覧になれます。

20160909 UPLAN 原発の耐震性と避難計画 院内集会&政府交渉

・前半(院内集会、地震動についての国との質疑応答) 

・後半(避難計画についての国との質疑応答) 


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