2013/9/5 太平洋クロマグロ、乱獲続く

プレスリリース - 2013-09-05
中西部太平洋まぐろ類委員会第9回北小委員会(WCPFC-NC9)閉幕

2013年9月1日から5日まで福岡で開催されていた中西部太平洋まぐろ類委員会第9回北小委員会(WCPFC-NC9)は、太平洋クロマグロの資源量が歴史的低水準にあり今後も悪化する可能性が高いにもかかわらず、予防原則や科学に基づき持続可能性を追求した効果的な資源保護・管理措置の合意に失敗し閉幕しました。
これを受けて、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの海洋生態系担当 / キャンペーン・マネージャーの花岡和佳男は以下のようにコメントしました。

「北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が示すように、太平洋クロマグロの資源量は乱獲により過去最低レベルにまで落ち、未開発時の約4%にまで減少しています。
更に同種の資源は親魚量も加入量も双方が減少している恐れがあると報告されており、今後も資源量が一層落ち込む可能性が高い状態にあります。
ISCの報告後に行われた今回のWCPFC-NC9はしかし、明確で具体的な資源回復計画策定のロードマップを描けぬまま、資源回復計画が策定されるまでの暫定的な措置にすら加盟国政府のコンセンサスが得られず閉幕するという、生物多様性、水産業、消費のあらゆる面にとって、残念な結果に終わりました」。

管理基準値を含む具体的な資源回復計画がないまま、未成魚の漁獲量を一部例外的に認めた上で15%削減するとするWCPFC-NC9が出した暫定措置は、持続性の確保からは依然として遠いと言わざるを得ず、今後も太平洋クロマグロの乱獲が続けられることを意味します。
WCPFC-NCが予防原則や科学に基づき持続可能性を追求した漁業資源管理をしきれない現状下では、太平洋クロマグロの漁業や消費、そして海の生物多様性を次世代に残すためには、長期的な資源回復計画が策定・実施され明確な資源回復の兆しが見られるまで、太平洋クロマグロを一時的に全面禁漁にすべき状態にあります。

花岡は、「残された時間は限られています。意思決定者であり太平洋クロマグロの漁業や消費および海の背物多様性の未来を左右するWCPFC-NC加盟国は、管理基準値を含む効果的な資源回復計画の策定に関し、来年のWCPFC-NCでこそ建設的な議論の上でコンセンサスを得て速やかに実施に移せるよう、その準備を本日より直ちに行うことが責務です。特に世界最大の漁業国および消費国でありWCPFC-NC議長国でもある日本政府には、太平洋クロマグロ漁業の持続性確保への動きを、引き続き牽引することが求められます」と続けました。

進行が遅い漁業資源管理機関に頼るだけでは、次の世代の海や食卓に太平洋クロマグロを残すことはとても難しい現状です。
しかし、世界の太平洋クロマグロ総漁獲量の約80%を消費する日本国内のマーケットや消費者からの働きかけも、大きく欠けています。太平洋クロマグロに限らず、他のマグロ類やウナギを始め、多くの魚が乱獲されている背景には莫大な需要があり、その需要は、日本の食卓に並ぶ魚介類の約70%を提供するスーパーマーケットや、全国展開する飲食店等によって作り出されています。影響力のある大手はどこも、資源状態や環境負荷を十分に考慮せず短期的利益を追求して薄利多売を続けています。生物多様性、漁業、そして魚が欠かせない日本の食卓を次の世代に残すため、グリーンピースは消費者と共に国内の大手スーパーマーケット5社(イオン、イトーヨーカドー、ダイエー、ユニー、西友)に対して、持続可能な魚介類の調達方針の策定を求め、働きかけを行っています。

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