2014/08/27 大手スーパーマーケット「太平洋クロマグロ」薄利多売の実態 ―WCPFC北小委員会を前に、マグロの調達方針アンケート結果を発表―

プレスリリース - 2014-08-27
国際環境NGOグリーンピースは、9月1日より福岡県福岡市で開催されるWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北小委員会を前に、今回の会議で争点となる太平洋クロマグロの取り扱いについて8月1日から26日にかけて国内大手スーパーマーケット15社(注1)にアンケート調査を実施し、結果を8月27日に発表しました。(注2)本調査により、既に初期資源の約4%にまで激減した(注3)同種の資源に、スーパーマーケットの薄利多売が深刻な影響を与えている実態が明らかになりました。

本調査では、15社中回答のあった13社(注4)全社が「未成魚の取り扱い有り」と回答しました。また、産卵親魚についてはダイエー、西友、マルエツ、オークワの4社を除く9社が「取り扱い有り」と回答しています。産卵経験のない未成魚(30㎏以下の個体)や、卵を宿している産卵親魚の大量漁獲は、再生産サイクルに与える影響が大きく、太平洋クロマグロの激減に直結しています。しかし、多くのスーパーマーケットは「天然」「国産」の本マグロ(クロマグロの通称)を安価に多く販売するために、持続性を無視して未成魚や産卵親魚を調達していることが明らかになりました。

一方、他社の先を行く取り組みが示されたのは株式会社ダイエー(本社:東京都)でした。当社は30kg以下の太平洋クロマグロについて「10kg以下の取り扱いを中止している」「10~30㎏の取り扱いは縮小」、産卵親魚の取り扱いについては資源への影響を理由に「取り扱いを自粛」していると回答しています。取り組みとしてまだ十分とはいえませんが、同グループのイオンよりも太平洋クロマグロに関して持続可能性に配慮し、全13社中最も自主的な取り組みが進んでいると評価できます。

グリーンピース・ジャパン海洋生態系担当の花岡和佳男は、「魚が海で産卵し、繁殖をする自然のサイクルを超えない範囲で漁獲を続ける限り、漁業は持続可能な産業だといえます。しかし、薄利多売ビジネスを展開するスーパーマーケットの需要にこたえる形で、大量の未成魚と産卵親魚の漁獲が続き、同種はいつ絶滅危惧種に指定されてもおかしくない状態にあります。豊かな海があってはじめて成り立つ『和食』を子供たちの食卓に提供する責任があるスーパーマーケットは、絶滅危惧種や資源の激減が深刻な魚類の調達について、その方針を一刻も早く改めるべきです。」と訴えました。

今回のWCPFC北小委員会では「太平洋クロマグロ未成魚の漁獲量50%削減(2002-2004平均比)」が水産庁により提案される一方で、産卵親魚の具体的な対策については先延ばしになっています。多くのスーパーマーケットが「行政の指針に従う」と明言する中、グリーンピースは、日本政府及び関係国・地域と交渉を続けるとともに、薄利多売によって同種の資源減少に深刻な影響を与えてきたスーパーマーケットに対し、自主的な取り組み強化を求めています。

(注1) イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友、ライフ、イズミ、ラルズ(アークスグループ)、ヨークベニマル、平和堂、マルエツ、オークワ、バロー、イズミヤ、フジ
(注2) レポート「スーパーマーケットが薄利多売する太平洋クロマグロの未来」2014年8月27日
(注3) International Scientific Committee(ISC), ‘PACIFIC BLUEFIN TUNA STOCK ASSESSMENT’, December 2012
(注4) 上記大手スーパーマーケット15社中、イズミヤとフジを除く13社

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国際環境NGOグリーンピース

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