記事 - 2011-04-20
史上最悪の原発事故だった“チェルノブイリ”から25年、わたしたちはいま、おそらくチェルノブイリよりも深刻な事故を経験しています。
ビデオ「チェルノブイリ原子力発電所事故から25年」
チェルノブイリ原発事故、福島第一原発事故、両方とも、IAEA INESのスケールで、レベル7と評価されました。
グリーンピースは、3月24日の時点でレベル7であると評価していましたが、日本政府はそれより3週間遅れで認めました。
レベル7を宣言した今でも、日本政府や原子力産業界は東京電力福島第一原子力発電所事故とチェルノブイリ原子力発電所の事故は違うと言い続けています。
しかし、同じ苦しみが繰り返されています。
命とくらしがこれから何年先もおびやかされ、放射性物質の大量放出、長期にわたる汚染や健康被害が心配されます。
チェルノブイリの場合、原子炉の炉心にある放射性物質の5~30%が事故のあいだに放出されたと推定されています。
この結果、放射性物質は高く舞い上がり、汚染は遠くまで広がりました。
福島第一原発事故の場合、チェルノブイリよりも周辺の人口密度が高く、原子炉が抱える放射性物質の量は遥かに多くあります。
またチェルノブイリと違い、海にも高いレベルの放射性物質を放出しました。
これは、食物連鎖を通した内部被ばくの経路です。
しかも、福島第一原発の事態はまだ安定していません。今後、より深刻な事態も起こりえます。
チェルノブイリの教訓は、原子力は電気をつくるには危険すぎる技術である、ということでした。
チェルノブイリ事故の影響で、世界の多くの国々で、原発計画の中止が相次ぎました。
それは、ソビエト連邦の終焉にも影響を与えました。
しかし、日本、欧州、米国など多くの政府は、チェルノブイリの教訓に耳を貸しませんでした。
そして2011年3月、福島第一原発事故が起き、「西側の原子炉は安全だ」という神話が崩壊したのです。
25年前にとるべき選択は明確でした。
25年たったいま、それはより説得力を持つものになっています。
エネルギー政策は、自然エネルギーとエネルギーの効率化を基本としたものでなければなりません。
©TEPCO
©Sabine Falkenberg/Greenpeace
2011年4月25日時点 |
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福島第一原発 |
チェルノブイリ原発 |
発電開始 |
1971年3月26日(1号基) |
1983年12月22日(4号基) |
事故の起こった日 |
2011年3月11日 |
1986年4月26日 |
どんな事故か |
マグニチュード9.0の地震と 14メートル以上の津波により 緊急炉心冷却装置(ECCS)の 非常電源が故障、冷却機能喪失。 続く1,2,3,4号機の水素爆発、放射性物質の大量放出。放出は現在も続く。 |
試験中に出力が上昇、原子炉容器が破損、爆発が連続して起き、10日間炎上、放射性物質の大量放出。初期のホウ酸投入が放射性物質の放出を大きくしたとの見方あり。 |
IAEA(国際原子力機関)/INES(国際原子力事象評価尺度)によるレベル |
7 |
7 |
出力 |
1号基 46万キロワット 2~5号基それぞれ78.4万キロワット 6号基110万キロワット (1~6号基合計 469.6万キロワット) |
100万キロワット(4号基) |
原子炉数 |
総数6基 うち、1,2,3号基で事故 使用済み核燃料が1,2,3,4号基 (当初は5、6号基も)で事故 共用使用済み核燃料プールあり |
総数4基 事故は4号基のみ |
原子炉 |
BWR(沸騰水型軽水炉) (米国GE、GE/東芝、東芝、日立製) |
RBMK黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉 |
燃料 |
ウラン燃料、3号基はウラン燃料とプルトニウムMOX燃料混合 |
ウラン燃料 |
核燃料の量 |
1から3号基に合計188トン 使用済み核燃料は1-4基に約500トン 共用プールに約1000トン 5,6基の使用済み核燃料プールとあわせ総計2400トンの使用済み燃料 |
194トン(推定) |
放出された放射能量 |
- 大気中への放出放射能量は37~63万テラベクレル、チェルノブイリの10%と推定(日本政府4月13日発表)
- 4月5日現在、1日あたりの放出量は154テラベクレル(日本政府4月23日発表による)
*この日本政府の発表には、海への放射能放出は含まれていない
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520万テラベクレル |
避難地域 |
- 20キロ圏内立ち入り禁止
- および以下を計画的避難地域に設定
- 飯舘村(全域)
- 川俣町の一部(山木屋地区)
- 葛尾村(20km圏内を除く全域)
- 浪江町(20km圏内を除く全域)
- 南相馬市の一部圏外
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30キロ圏内立ち入り禁止 ロシアとベラルーシの境まで放射能が流れ、150-200キロ圏内の人々も避難 |
死亡者数 |
なし |
2005年、IAEA/WHOが事故直後の64人含み4000から9000人が死亡に至ったと発表。3万から9万人という推定もある。 |
健康被害 |
人口の密集度(人口密度)が高いため、より多くの住民に中長期的な健康被害が非常に懸念される <人口密度の比較> 郡山市:447人/平方キロ 福島市:387人/平方キロ |
特に子どもの甲状腺ガン、白血病など <人口密度の比較> ウクライナ:80人/平方キロ、 ベラルーシ: 40人/平方キロ |
食品への影響 |
福島県、茨城県の原乳に出荷制限(のちに解除)、福島県、近県の葉物野菜などに出荷制限(のちに解除)。一部地域で原木しいたけ、イカナゴ稚魚に出荷制限。 |
現在も、牛乳、きのこなどから高濃度の放射能が検知されている。 ドイツでは、いまでも一部のきのこなどに摂取制限がある |
現状 |
- 作業員被ばく、住民、子どもに対し、被ばく限度の基準を引き上げた。
- 冷却機能が回復し放射能の放出が収まるまでにさらに6~9カ月かかる見通しが発表されたが、それ以上かかる恐れがある。
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原子炉を覆う石棺は崩壊の恐れがあり、原子炉内に残る大量の高レベル放射性物質が漏れ出す可能性あり。 「完全な廃炉にあと100年かかる」(ウクライナ政府担当機関幹部/毎日新聞4.25) |
チェルノブイリは大量の放射能が広い範囲に降ったが、東電福島第一原発の場合は、放射能が狭い範囲に集中して降ったため、 汚染濃度がチェルノブイリより高い
レポート(英語版)