原子力は必要ない(グリーンピース・インターナショナル事務局長 クミ・ナイドゥ) | 国際環境NGOグリーンピース

原子力は必要ない

記事 - 2011-05-17
New York Times/International Herald Tribune(2011年3月22日)に掲載された、グリーンピース・インターナショナル事務局長 クミ・ナイドゥのコラムより


© Gordon Welters / Greenpeace

3月11日から日本を襲っている大災害の深刻さを理解するには、12日という期間では短すぎる。
地震で親を失った子どもたち、津波で家族や友人が依然として行方不明となっている方々、自らの健康を危険にさらしながら福島の原発事故を収束させようと闘っている作業員の方々。
痛ましい話は尽きない。

深い悲しみと、日本のみなさんと共にありたいという思いと同時に、別の感情が湧き始めている。
それは、怒りだ。
放射能の放出が止まり、さらなる大災害のリスクが回避されて、日本の方々が直面しなければならないような悪夢がもう起きないことを祈りつつ、福島に関するニュースの一本一本を心配ながら待つ一方で、世界中の政府は、原子力への投資を推し進めている。
たとえば、つい先週、私の母国である南アフリカ共和国政府は、自国のエネルギー計画に960万キロワットの原子力発電を加えると発表した。

核クライシスが進行する只中で、事実かのようにまかり通っている危険な想定が二つある。
一つは、原子力は安全だということ。もう一つは、原子力は低炭素の未来にとって必須であり、破壊的な気候変動を防ぐために必要ということ。どちらも間違いだ。

原子力技術は、人的ミス、自然災害、設計故障、テロ攻撃に絶えず脆弱だ。今、福島で目にしていることはシステムの欠陥だ。
原子炉自体は地震と津波に耐えたが、欠かせない冷却装置が機能しなくなった。
予備電源も喪失し、原子炉は過熱し、放射能の拡散を招いている。
これは、物事が誤った方向に進んだ場合の一例にすぎない。

原子力は本質的に安全なものではなく、遺伝子変異、先天性欠損、癌、白血病、生殖・免疫・心血管・内分泌系の疾患など、付随する放射能への曝露によって生じる可能性のある病気を挙げると恐ろしい。

チェルノブイリやスリーマイル島についていろいろと耳にするが、原子力産業は、これらが汚点のない歴史上の単発の出来事だと私たちに信じさせようとする。
しかしそれは違う。
マヤーク、東海村、ボフニチェ、フォルスマルクをはじめとして、800を超える重大な事故・事象が国際原子力機関に正式に報告されている。

原子力が低炭素社会の未来にとって必要だという主張も間違いだ。

グリーンピースと欧州再生可能エネルギー評議会がまとめた研究「エネルギー・レボリューション」はクリーンエネルギーのほうが安価で、健康への被害もなく、他の選択肢より気候に対して即効性があると明らかにしている。
世界中の既存の原子炉の段階的廃止と新たな商業用原子炉の建設の停止を呼びかけている。

さらに、保守的なIEA(国際エネルギー機関)が最近作成したエネルギーシナリオでは、原子力が温室効果ガスの排出を削減するために必要ではないということが強調されている。
たとえ既存の原子力発電容量を2050年までに4倍にすることができたとしても、提供されるエネルギーの割合は世界的にみて依然として10パーセントを下回るということを示している。
これによって削減される二酸化炭素の排出は4パーセント未満である。同じ額を風や太陽といった再生可能なエネルギー源に投資すると、地球温暖化の低減により大きな影響を与えることができる。

原子力は高価で、真の解決を究極的に妨げる。
「燃料不要な」エネルギー源は、国際的な紛争を生み出さず(これを執筆している今も、リビアのことを考えずにはいられない)、「枯渇」もせず、流出することもない。初期投資を行う必要があるが、やがて技術の進化や市場競争によるコスト削減によって再生可能エネルギーの価格は低下する。
さらに、賢くやれば、グリーンで、核や化石燃料不要の未来は、多くの安全で新しい職を生む。

食品・水汚染がアジアで大きくなり続け、ヨウ素錠が世界中で売り切れ、ロサンゼルスといった日本から遠く離れた場所に住む人々が放射能汚染物質に警戒している。
その中で、30キロの立入禁止区域内に今も住んでいる人々に対する避難計画やその他の保護対策改善に向けて日本政府に働きかけている日本の原子力資料情報室にグリーンピースのような国際組織が参加すること、世界人として原子力へのさらなる投資に反対の声を上げ続けることが絶対に必要だ。
私たちには真のクリーンエネルギー革命が今すぐ必要だ。