ブレント・スパー
老朽化をむかえた巨大な石油採掘プラットフォーム
© Greenpeace / John Sauch
北海には石油を掘るための海上プラットフォームが400基もあるといわれています。
1995年、英国の石油スパーメジャー、シェル石油が管理する大型のプラットフォーム、ブレント・スパーは老朽化を迎え、その処分方法をめぐってヨーロッパを中心に大きな議論がおこりました。
海洋投棄が当たり前だった当時、「海をゴミ捨て場にしたくない!」という市民の声は、企業だけでなく国際ルールを変えるまでの大きな力に変わりました。
ちなみに、シェル石油のロゴである貝殻のマークは、創業者マーカス・サミュエルが来日した際、神奈川・三浦海岸で拾った美しい貝殻をモチーフしているそうです。
海洋投棄が引き起こす汚染
当初、シェル石油は環境にも最善で最も費用かからない廃棄の方法として海洋投棄を計画し、英国政府もこれを許可しました。
しかし、1万5000トンもの巨大なプラットフォームには、石油や有害物質がまだ残されています。
近いうちに役目を終えるプラットフォームは他にも多くあり、何の処理もせず、そのまま海に沈めるこの処理方法が海洋汚染を引き起こすことは明白でした。
ブレント・スパーも他のプラットフォームも海に捨てません!
© Greenpeace / David Sims
そこで、グリーンピースは海洋投棄の中止を求めるためブレント・スパーに向かいました。
洋上のプラットフォームを占拠したことがニュースで伝えられると、消費者はシェル石油の態度を変えるために不買運動をスタートし、瞬く間にヨーロッパ各国に広がりました。
市民の声に押され、海洋投棄反対を表明する政府も現れ、国際議論にまで発展。
ついにシェル石油は海上投棄の計画を撤回し、ブレント・スパーを陸上で解体し、ノルウェーで埠頭の土台としてリサイクルされることになったのです!さらに、これを機に同様の設備を海に投棄することが国際的に禁止されました。
CSRの先駆けとなったブレント・スパー
その後、シェル石油は同様の間違いを起こさないためにグリーンピースと継続的な会合を持ったり、グリーンピースのセミナーで当時の経験を話すなど、積極的にNGOとの情報交換を行っています。
企業の一つの行動が大きな消費者運動の引き金となることを世界中に知らせたこのブレント・スパーの例は、近ごろ頻繁に聞かれるようになった「企業の社会的責任(CSR)」という概念を生むきっかけとなった事例として、現在も様々なところで引用されています。
緊張感のある企業・政府との関係
© Greenpeace / Waltraud Geier
NGOが企業や政府に向かってはっきりと問題を指摘すること、そして緊張感をもって協力し合うことは、今ますます必要とされているNGOの役割であり、長年グリーンピースが大切にしてきた姿勢でもあります。
グリーンピースは、企業からも政府からも財政的な援助を受けないからこそ、スピーディーで効果的な活動を続けることができます。
これからも応援をよろしくお願いします。