本ガイドは、スマートフォン、タブレット型端末、ノートPCといった電子機器製品を製造・販売するグローバルIT企業17社の環境への取り組みを評価した「Guide to Greener Electronics 2017」の日本語版です。

急成長を続けるIT業界によって、サプライチェーンも含めた環境負荷は急増し、今後も増加が見込まれます。本ガイドでは、世界のトップIT企業を、持続可能性に重要な3つの分野(1)自然エネルギーの導入による温室効果ガス排出量の削減、(2)リサイクル材料の使用、(3)有害化学物質の削減について、透明性、目標、実績、政策提言の取り組みの観点から評価しました。

高評価だったのはフェアフォンとアップルで、スマートフォンの世界市場トップを占めるサムスンとファーウェイは、環境負荷低減に取り組む責任を十分に果たしていないことが明らかになりました。

【主な調査結果】

・サプライチェーンも含めた石炭などの環境汚染エネルギー需要
電子機器のライフサイクルで発生する温室効果ガスの80%が製造時に発生する。アップル、グーグルなどのIT企業はデータセンターの稼働電源を自然エネルギーに移行しているが、一方、ほぼすべての企業が、増加するサプライチェーン全体の排出量や、石炭などの汚染エネルギーに大きく依存している状況の改善には着手していない。現時点で、サプライチェーンの100%自然エネルギー化に取り組むことを宣言したのはアップルのみ。

・計画的旧式化
頻繁な買い替えを必要とするような、持続可能ではない設計が増加している。例えば、アップル、マイクロソフト、サムスンの最新製品の多くは修理やアップグレードが難しい。 一方、HP、デル、フェアフォンは修理、アップグレード可能な製品を製造している。

・サプライチェーンに関する透明性の欠如
アマゾン、グーグルやファーウェイなど多くの企業はサプライチェーンの環境フットプリント(地球温暖化以外の複数の環境影響指標)を公表しておらず、透明性に欠ける。

・工場等での化学物質のモニタリングと透明性の欠如
すべての企業は、製造に使用される有害化学物質の特定と排除を行い、作業従事者の健康と安全性を改善する必要がある。評価した企業のうち、電子機器の製造において制限されなければならない物質リスト(製造時使用制限対象物質、MRSL)を公開していたのは アップル、デル、グーグル、HP、マイクロソフトのみ。

 

グリーンピースは、急速に拡大する環境影響に対して責任を果たすよう、以下をIT企業に求めています。

    • サプライチェーン全体で自然エネルギーの電力にシフトする
    • より多くのリサイクル材料を使用した長持ちする製品設計をし、鉱物や他の資源の消費を抑えること
    • 製品とサプライチェーンで使用される有害化学物質を除去し、代替品を見つけること

日本語版はこちらから

English version here (2017年10月17日にグリーンピース・アメリカより発表) (全22ページ)

(ご参考)2006年から2012年にかけて、グリーンピースは同ガイドを定期的に発表、特に一般消費者向け電子機器業界に有害化学物質の使用を段階的に減らしていく取り組みを各社に働きかけ、その結果アップルが有害化学物質を廃止する方針を発表しました(詳しくはこちらをご覧ください)。本年発表したガイドは、製品に含まれる有害化学物質だけではなく、サプライチェーンも含めた自然エネルギーの利用や化学物質の使用など、評価する範囲を広げたもので、第19版となります。

また、2012年以降、データセンターに必要な電力が急増したことを受け、データセンターにおける自然エネルギー利用を働きかけるキャンペーンに注力し、IT企業が自社事業や利用するデータセンターにおける自然エネルギー利用の割合を大きく増加させることとなりました(詳しくはこちらをご覧ください)。