一枚岩ではない財界

経団連・米倉弘昌会長の「原発ゼロ批判発言」に憤りを感じた市民は多いはずだ。

政府が原発稼働ゼロを盛り込んだ文書自体の閣議決定を見送ったことも、経済3団体(経団連、日本商工会議所、経済同友会)からの必要以上の圧力があったからだ。

多額の税金を費やして国民の意見を聞いた意見聴取会やパブコメなどのプロセスを侮辱している。

一方、「新経済連名」を立ち上げた楽天の三木谷浩史代表理事は、ツイッターで経済3団体が原発ゼロ反対会見をしたことについてコメントを求められ、「新経済連盟は脱原発です」と表明している。

ソフトバンクの孫正義社長も、城南信用金庫の吉原毅会長も脱原発を表明し、自然エネルギーの推進に尽力している。中小企業があつまり脱原発を目指す「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」(世話役代表・鈴木悌介「鈴廣かまぼこ」副社長)もある。

財界も一枚岩ではないのだ。

それにも関わらず、「原発維持」が財界全体の意見であるかのように経済3団体が振る舞うのは論外だ。

 

経団連の恣意的アンケート

8月13日に経団連が行ったアンケートがある。

133団体に対して、「エネルギー・環境政策の選択肢等」に関して聞いたものであるが、わずか33団体が回答したのみで、回収率は24%にすぎない。そのうち20団体が製造業だという。

回答した企業のほぼすべてが「原発維持」を選んだわけだが、それらの団体は電力を大量に消費するいわゆる重厚長大企業である可能性が高いだろう。

それよりも注目すべきは、回答しなかった団体が76%にも及んだということだ。

財界が一枚岩ではないことを如実に表している。

 

市民・消費者としての力を行使

脱原発を目指す市民が日頃からできることがある。それは、脱原発を支持するかどうかで利用する企業を選ぶことだ。

経済3団体に所属する全企業が原発を支持しているわけがない。私たちを「お客さま」と呼んでいるさまざまな会社の連合であり、消費者なしには立ち行かない企業も多いからだ。

ここに経団連の会員企業一覧がある。

例えば、大阪ガス、味の素、キッコーマン、イトーヨーカ堂などの企業は原発賛成なのだろうか。

これらの企業のお客様相談室などに問い合わせた結果を、市民がネットを通じて公表していき企業の方針を「見える化」していくこともできる。

そして、脱原発を目指す企業の商品を購入したり、サービスを利用して応援する。

 

脱原発こそ、企業の社会的責任

海外と比べると、日本では従来から市民の企業への信頼が高かったと言われる。これは、日本企業が「儲け」だけではなく「戦後の社会発展」に寄与する経営をしてきた実績からだろう。市民の支えで企業が成長したとも言える。

就職することを「社会人になる」と言うが、これは「社会のために働く人」という意味が強かったからに違いない。しかし、創業者の熱い思いが形骸化し、社会との対話より、四半期ごとの決算の数字と対話する企業が増えたのではないか。

政府は、「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」とした。いまこそ社会が企業の底力を求めている。

脱原発社会の実現に貢献していくことこそ、今一番求められている企業の社会的責任(CSR)だ。それを妨げる企業に、CSRを語る資格はない。市民社会と乖離していく企業がそもそも今後成功していられるだろうか。

国民の意見を聞くプロセスを経て国が決めたことに、足を引っ張る企業を市民社会が批判するのは当たり前だ。今こそ、私たちは社会的責任を果たさない企業への批判を強め、脱原発を支持する企業を応援したい。グリーンピースもそのような企業への働きかけを強化する。