なぜユニクロはグリーンピースと合意したのか

2013年1月9日、ユニクロを展開するファーストリテイリング社が、「国際環境NGOグリーンピースと2020年までに有害化学(危険)物質の全廃を目指すことで合意した」と表明した。

「あのユニクロがグリーンピースと?」と驚いた人も多いのではないか。

しかし、世界規模でグリーンピースの取り組みを見ると、有害化学物質全廃を目指す活動だけでも、アパレル業界トップの経営方針を次々に変えている。

これまでにH&M、Zara、リーバイス、ベネトンなどのアパレル業界のトップブランドを展開する15社(1月31日現在)が、グリーンピースと2020年までの有害化学物質全廃を約束しているのだ。グリーンピースが大手企業とこのような合意に至ることは珍しくない。

 

市民社会、政府、企業のバランスが大事

現在、政府と企業が日本社会の2大プレイヤーとして認識されている。本来であれば第3のプレイヤーとして市民社会が同レベルの存在感を示すべきだ。もっと理想を言えば、市民社会の基盤の上で政府や企業というプレイヤーがあるべきだと思う。

残念ながら、今の日本において市民セクターの存在感はまだまだ小さい。市民社会が政府や企業の基盤になっている状態にはほど遠く、また政府、企業をチェックしバランスをとるという本来の機能も果たすことはできていないのではないだろうか?

経済成長を最優先にしてきた日本では、企業が、政府よりも、そして市民社会よりも発言権の強い構造となっていると思う。本来、ジャーナリズムが市民社会を代弁して、政府や大企業をけん制するという役割を果たすべきだと思うが、マスコミは政府や大企業を代弁している感が強い。

 

市民社会の役割

企業も政府も、市民社会からの強いプレッシャーがあるがゆえに、その社会的責任を果たそうという理由が生まれる。

例えば、ヨーロッパではグリーンピースの影響力が非常に大きい。グリーンピース・ドイツの例を挙げるとその会員数は58万人で、国内のどの政党の政党員よりも多いといわれ、政治や企業活動へ多大な影響を及ぼしている。それは市民社会を代弁するプレイヤーとしてのNGOの重要性が理解されているからだろう。

市民社会を形成する前提として、まずは「どのように生きたいか、どのような社会を作っていきたいか」を考えることが私たちひとりひとりに求められる。例えば「環境汚染を起こす可能性のある洋服は着たくない」、「危険な原発で発電された電気は使いたくない」など誰もが心に抱いている思いはあるだろう。そういった「市民の声」が社会のルール形成に反映されれば、人権、環境、安全、福祉などの長期的な展望を重視した要素が社会全体で重視されていく構造ができあがる。

 

社会的責任をイノベーション力に

市民社会の声が届かないのは、企業にも悪影響ではないか。

市民社会からの厳しい目に常にさらされている企業は、社会的な責任を果たすことを企業経営の柱としている。だからこそ、最近の大企業経営者は、経営について語るときに、その企業が社会に対して果たす役割をこれでもかというぐらいに語る(その意気込みが本当かどうかは別として)。

社会的な責任を「奉仕」というレベルで考えるのではなく、経営に直結する分野でのイノベーションを呼ぶ「好機会」として位置付けられるか、これが今後の企業の生き残りを左右すると思う。

 

「消費者個人のニーズ」より「社会のニーズ」を

冒頭に紹介したユニクロの例は、日本の現状を打開できる例となりうる。NGOからの要請を社会の要請として真剣に受け止め、経営方針に組み込んだからだ。

有害化学物質を使用しながら衣類を製造するということは、近い将来大きな経営リスクになる。しかし、その有害化学物質をまったく使わないで衣類を製造できれば、それがブランド力を圧倒的に高めることへとつながる。

「消費者個人のニーズ」をもとにビジネスを営む時代から、これからは「社会のニーズ」に基づいてビジネスをする必要があるのではないか。既存のビジネスこそ社会企業家の精神が必要となるべきだろう。

グリーンピースが、企業を批判するのは、その企業に期待をしているからといえる。その批判をイノベーション力に変えてほしいからだ。

グリーンピースは、今後も企業への働きかけを強化するとともに、市民社会の重要性も広めていきたい。それが、グリーンピースが企業からも政府からも財政的支援を受けずに活動する理由でもある。

 

ユニクロとの合意を導いた「デトックス・キャンペーン」について詳しくはこちら:

http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/csr/detox_water/