*追記: グリーンピースは、APP社の「森林保護に関する方針」の採用をもって、インドネシアで森林破壊を続けてきたAPP社に対するキャンペーンを一時的に停止しました。しかしこの方針は実行されなければ意味がありません。よってグリーンピースはAPP社が方針通りの森林保護を継続的に実行し、それが第三者によって確認されるまでAPP社との取引を再開・もしくは開始するのは時期尚早だと考えます。詳しくは"Greenpeace Update: Asia Pulp & Paper’s new commitments to end deforestation"(英語)をご覧ください。

「APP社の森林保護方針の進捗状況に関するグリーンピース報告書」( APP's Forest Conservation Policy英語、2013年10月29日発行)

「APP社 森林保護方針宣言から1年」(APP's forest conservation commitments, one year on英語、2014年2月5日)

  

 (世界に400頭しかいないと言われるスマトラトラ  © WWF)

 先ほど、インドネシアから大きなニュースが飛び込んできた。

「動物たちがたくさんいる熱帯林が次々と破壊されていくのを見るのがつらい…」という人には特に明るいニュースになるかもしれない。

世界最大規模の製紙会社で、熱帯雨林破壊の代名詞とされてきた企業であるAPP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社が、熱帯雨林の伐採をやめると宣言したからだ。

 

1時間に東京ドーム約1.8個分のスピードで30年間伐採し続けたAPP

 

APP社は、1984年にスマトラ島で操業を開始してから過去30年近くにわたって1時間あたり、東京ドーム約1.8個分を伐採するという恐ろしいスピードで熱帯雨林を含む自然林を破壊し続けてきた。(注1)

この自然林伐採によって、世界で400頭しか残っていないと言われるスマトラトラをはじめ、さまざまな動植物が絶滅にさらされている。

APP社はこれまでも「森林保護を行う」と発表しては、ことごとくその約束を裏切ってきた。それゆえに、今回の発表を本当に喜べるのは、熱帯雨林の伐採が現地で本当に止まったことを確認してからということになる。

 

APP社を変えたグリーンピース・消費者・企業のコラボキャンペーン

 

(米国KFCのパッケージにも熱帯雨林が含まれていることを証明し、KFCにAPPとの取引をやめるように迫る)

 

今回、APP社がこのような発表に至るきっかけとして、グリーンピースが国際的に行ったキャンペーンがあった。

グリーンピースは、インドネシアの熱帯雨林 → 製紙工場 → 商社 → 購入企業とAPP社が伐採した木材が、どの国でどの企業によって消費されるのかという「サプライチェーン」を徹底的に調べ上げた上で、消費者と一緒にAPP社の商品を購入していた企業に、その購入をやめるように働きかけてきたのだ。

 

(参考)グリーンピースのキャンペーンサイト 「Asia Pulp & Paper Under Investigation」

 

コピー用紙や商品のパッケージに熱帯雨林が含まれていることを科学的調査で証明し企業に示すことで、ネスレ、ユニリーバ、ダノン、レゴ、マテル、ナショナルジオグラフィックなど100社以上の企業がAPP社との取引をやめた。

 

 (バービー人形の梱包に熱帯雨林が使用されていたとして、バービーを展開するマテル社に働きかけた。後に、APP社との取引をやめる)

 

このようにして、グリーンピース、消費者、そして熱帯雨林をパッケージなどとして販売したくない企業、そしてインドネシア国内外のNGOが協働して、APP社に熱帯雨林の伐採をやめるように迫ってきたというわけだ。

ここでもNGOと消費者が協力して行動したことが、成果につながっている。

 

あなたの身近なところでもAPP社の商品が

 

 (国内のホームセンターなどでは、植林パルプ100%としてAPP社のコピー用紙が販売されている)

 

APP社の商品は、実はたくさん日本にも輸入されている。

機会があったら、ホームセンターなどで販売されているコピー用紙を見てほしい。通信販売などで注文するコピー用紙にもAPP社のものがある。

2012年に、グリーンピースは国内で販売されているAPP社の紙を調査した。その結果、植林材100%と書かれていても熱帯雨林材の繊維が25%も含まれていることがあった。

 

APP社の製品が日本で多く販売されているからこそ、インドネシアの伐採現場だけではなく、国内でもAPP社が約束をしっかり守っているかを監視するのがNGOと、消費者である私たちの役割だ。また、APP社の競合で、こちらも規模の大きい製紙会社であるAPRIL社の製品も同様に調査していきたい。

 

インドネシアの熱帯林、そしてスマトラトラなどの希少動物をまもるために、この調査を、グリーンピースのサポーターとして支えてくださる方は、ぜひこちらからご支援ください。

サポーター募集ページ

 

(注1)1984年にスマトラ島での製紙工場をはじめて、2010年までにおよそ200万ヘクタールもの熱帯雨林を伐採したとされる(2011年12月14日 Eyes On The Forest レポート)。また、2009年から2012年中旬の3年半でもそのスピードは衰えず、約25万ヘクタールの熱帯雨林が破壊されたとみられる(グリーンピースの衛星写真による調査による)。それぞれの伐採スピードを年間に平均し、東京ドームを4.7ヘクタールとして計算。