原発輸出が許されてしまう理由

安倍首相がトルコやアラブ首長国連邦(UAE)を訪れ原子力協定を結び、原発輸出を約束してきた。一方、福島第一原発事故の現場では、たまり続ける汚染水に悩まされるなど綱渡りの状態が続く。

海外では「原発は安全」と原発を売り込むが、国内では収束とは程遠い原発事故の脅威に市民がさらされ続けているわけだ。

なぜ、こんなことが許されるのか。

その大きな理由の一つは、日立、東芝、三菱重工などの原子炉メーカーは原発事故の責任を問われないという強固な仕組みがあるからだ。

 

法律で守られる原子炉メーカー

原子炉は、製造物責任法(PL法)の対象から除外されているのをご存じだろうか。

「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」の第4条3項には「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、(中略)製造物責任法の規定は、適用しない」と明言されている。

 

製造物責任があれば、原発ビジネスは成り立たない?

インドは、2010年に、事故の際に原子炉メーカーの責任を問える法律をつくっている。

この法律について2月21日、原子炉メーカーであるGEインドの元CEOが以下のように述べている。

「GEは(原子炉メーカーが事故責任を問われる)法律がある間は、インドで原発ビジネスを追求しないだろう。我々は民間企業で、そのようなリスクはとれない」(『Forbes India』誌)

どんなメーカーでも、製造物が引き起こすかもしれない事故の責任を問われるとなれば、事故を防止しようとするインセンティブが生まれる。また、起こりうる事故がメーカーでは責任の取りきれないものであれば、企業の存続リスクを考えてそのビジネスから撤退するだろう。

メーカーに責任を問うのは、社会がこのような自浄作用を期待するからだ。

 

さらに儲けようとする原子炉メーカー

一方で、つくった原子炉が大事故を起こしたにもかかわらず、日立は今後8年で原発ビジネスの売上高を2倍の3600億円に、東芝は今後5年で1兆円の売上達成をめざすと公式に発表している(注1)。

原発輸出、福島第一原発での汚染水処理、燃料取出し技術の開発などを売り上げ拡大チャンスと期待しているわけだ。

この事業計画をみてもわかるように、原子炉メーカーの責任意識は皆無で、自浄作用はまったく存在していない。

だからこそ「原発は安全」などということが言えてしまう。「原発はメーカーにとって安全なビジネス」ということだろうか。

(注1) 日立の2012年6月14日発表の中期経営計画、東芝の同年5月17日発表の中期経営計画より 

 

もし日立や東芝が原発事故の賠償を引き受けていたら

もし、東電だけではなく原子炉メーカーが今回の原発事故で責任を負うことになっていれば、除染や汚染水処理などは国ではなく原子炉メーカーの責任でやるべきものとなっていただろう。

そうであれば、今ごろ海外への原発輸出どころではなかったはずだ。少なくとも「原発ビジネスの拡大」など投資家には説明できなかっただろう。

事故や、無謀な原発輸出を防ぐためにも、まずは普通の工業製品と同様に、原賠法で原子炉メーカーに責任を問えるようにすべきだ。

責任が問われないビジネスほど、おいしい話はない。 

グリーンピースでは、原子炉のメーカー責任を問えるようにするよう訴えるキャンペーンを行っている。 詳しくは以下をクリック