こんにちは。核/エネルギー担当の鈴木かずえです。

2月27日、参議院議員会館で「原発にもメーカー責任を」グリーンピース・セミナー

「モハンティ弁護士に聞くインド原賠法--インドでは、原発にも『メーカー責任』があるって本当ですか?」を開きました。

 

インド ボパール事故・多国籍企業の事故で1万人あまりが死亡

 

1984年12月3日未明、インドのボパールで操業していたアメリカのユニオンカーバイド社の化学工場から強い毒性のある有害ガスが、50万人の住む住宅街に流れ出しました。事故直後だけでも8000あまりの人々が亡くなり、失明や呼吸困難など後遺症に苦しむひとをたくさんだしました。

史上最悪の産業事故といわれたこの事故は、多国籍企業に事故の責任を取らせる仕組みが重要という教訓を残し、インドの原子力損害賠償法に大きな影響を与えました。

 

30億ドルの賠償請求。4億7千ドルで和解。責任者は失踪。

1986年、インド政府はユニオンカーバイド社を訴え、30億ドルの損害賠償を請求したのですが、1989年、同社からインド政府に支払わられた賠償は、たった4億7千万ドルでした。告訴されたウォーレン・アンダーソンは失踪し、インド政府が米国政府に身柄引き渡しを要請したが、米国政府は拒否し続けています。

外国の企業がやってきて、大惨事を引き起こし、賠償もそこそこに、責任者は姿をくらました…この経験があって、インドの人々は「原発にもメーカー責任を」という運動に共感を寄せたのです。

 

前司法長官とともに

そして、モハンティ弁護士は、2009年、前司法長官やNGOとともに、「原子力損害に関する民事責任法」(以下「インドの原賠法」)制定運動を起こしました。インド政府は常任委員会を設置して、政府、NGO、労働組合などからのヒアリングを実施して、意見を募り、2010年9月にインド原賠法が成立しました。

 そこでは、原子力事業者がメーカー責任を問えるようになっています。その17条では以下のように定められています。


 

「原子力施設の運転者は、第六条が定める賠償を支払ったときは、以下の場合、求償権を有する」

(a) かかる求償権が契約上明文で定められていること

(b) 原子力事故が供給者又はその従業員の行為によって引き起こされたこと。これには、明らかな若しくは隠れた瑕疵を有する機器若しくは原料の供給又は水準に達しない業務の提供を含む。

(c) 原子力事故が原子力損害を生じさせる意図を有する個人の作為又は不作為によって引き起こされたこと。


つまり、電力会社と原子炉メーカーの間で、メーカー責任が定められていたり、メーカー側に過失があったり、メーカー側の故意によるものである場合は、電力会社が賠償金をメーカーに請求できるのです。

 ひるがえって日本では、メーカーは一切責任を問われていません。

 この原賠法は、「国の援助を受ける原子力事業者(東電)の株主やその他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から必要な措置を講じるものとする」とされています。けれど、そう決められてから1年以上たった今、そうした措置はとられていません。

 

グリーンピース・ジャパンでは「原発にメーカー責任を」キャンペーンをしています。

ボパール事故という大惨事の影響で原賠法にメーカー責任が明記されたインド。

日本でも、いまだに16万人が故郷に帰れず避難生活を送り、それ以上の人々が日々苦しみの中で生活を送っています。福島原発事故を経験した日本こそ、原賠法を変え、メーカー責任を問えるようにすべきです。

原発を推進するなら、責任も伴うべきでは?

その責任を引き受けることができないならば、原発をつくったり、動かしたりする資格はないのではないでしょうか?

原発のない明日へ。まずはオンラインアクションにご参加を。

「原発にもメーカー責任を」キャンペーンについては、こちらをご覧ください。

モハンティ弁護士のパワーポイントプレゼンテーション

日本語 http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20130227_i.pdf
英語 http://www.greenpeace.org//japan/Global/japan/pdf/20130227_i_e.pdf

 

モハンティ弁護士によるセミナー映像

・YouTube
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レポート・参考資料