こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。
4月25日、九州、関西の市民団体*とともに、原子力規制庁への質問をしました。佐賀、鹿児島、京都、大阪などから脱原発グループの仲間がかけつけたほか、呼びかけを見てくれた市民など50人が集まりました。
老朽原発・高浜原発1,2号機、ただいま、運転期間延長審査中
写真:関西電力の高浜原発。老急原発の1,2号機は、左奥の円柱型。
福井県にある関西電力高浜1,2号機の運転期間延長審査が進んでいます。
高浜原発1,2号機はともに運転期間40年を超えた老朽原発。
7月7日までに延長認可がおりなければ、廃炉となります。
しかし、今、原子力規制委員会は、なんとかこの期限までに間に合わそうと躍起になっているように見えます。
東京電力福島第一原発事故の反省から、原子力発電所は、運転開始から40年で原則廃炉、と法律で定められました。
しかし、例外規定があり、原子力規制委員会が認可すれば、1回に限り最長で20年の延長ができます。
民主党政権では「例外中の例外」としていましたが、最近、原子力規制委員長の田中俊一氏が「お金をかければ、いくらでも技術的な点は克服できる」などと発言するなど、扱いが変わってきています。
会合では、「原子力規制を監視する市民の会」の阪上さんが問題点を解説してくれました。
以下、その解説に、原子力規制庁の回答を交えながら報告します。
老朽原発のリスク:応力腐食割れ
いきなり難しいですが、原発は、放射能の核分裂のエネルギーで作られた熱で水を沸騰させる機械ですよね。(その蒸気でタービンをまわして発電)
その機械の要の炉心のステンレスに中性子が何回も何回もあたると、ひび割れがおこりやすくなります。それが応力腐食割れ(IASCC)、と呼ばれるものです。
だから、長い間使われ続けてきた老朽原発では、その状況をよく調べる必要があります。
出典:https://www.nsr.go.jp/data/000108536.pdf
目視検査で「大丈夫」?!
上図の洗濯槽みたいなものが炉心バッフル。その洗濯槽に黒い点々がズラ〜っとついています。これらがバッフルフォーマボルトです。
このボルトも、中性子にあたって劣化する。
アメリカの原発では数本が劣化したそうです。
高浜原発1,2号機では、このボルトの点検は、水中テレビカメラを使った目視検査を定期的にしているとのこと。
でも、目で見ただけでは、ボルトが外れちゃっている、とかはわかっても、傷とかヒビとかまではわかりませんよね。
20年前の検査で「大丈夫」?!
なので、超音波探傷検査もしたそうです。いつ?1991年と1997年。
20年前ですね。そのとき、大丈夫だったそうです。
それで、今度の延長審査でも超音波探傷検査するのか?と聞いたら、機械学会の検査規格によれば、次の検査は今後10年の間にやればいいとの返事でした。
原子炉半周だけの検査で「大丈夫」?!
しかも、そのときの検査、高浜原発1号機では、一周、ぐるっと検査したのに、高浜原発2号機では半周しかしてないそうです。
理由は「左右対称だから」。(じゃあ、なんで1号機は全周?)
では、アメリカで劣化したボルトというのは、左右対称の位置のボルトだったのか?と聞いたら、原子力規制庁の答えは「データを持っていない」。
ということは、根拠なく、「左右対称だから、半周でいい」としているということです。
実は、原子力規制庁は、すでにこの「半周問題」を関西電力に指摘し、全周やらせることになっています。ただ、時期がわからない。
それでは認可は、出せないはずです。
検査のデータは非公開
また、問題なのは、そうした検査の結果の資料の重要なデータが公開されていないこと。
阪上さんによると、検査結果の資料は、「真っ白シロスケ」だそうです。
(関西電力資料よりhttps://www.nsr.go.jp/data/000147569.pdf)
原子力規制庁の中桐さんは、資料は原則公開だが、企業秘密に関わるものは非公開と回答しました。
けれど、それでは、第三者による安全性(危険性)の検証ができません。
高浜原発1,2号機の運転期間延長認可期限は7月7日。
締め切り優先の審査をさせないため、多くの市民の目が必要です。
あなたも声をあげてください。ぜひ、この署名にご参加を。
今、福井・関西・東海・首都圏の23団体が、関西電力の老朽原発三兄弟、高浜1,2号機と美浜3号機(福井県)の廃炉を求める署名を呼びかけています。
ぜひ、こちらからご参加ください。
(くわしくはこちらのブログをごらんください)
*主催団体:川内原発30キロ圏住民ネットワーク/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/グリーン・アクション/美浜の会/FoE Japan/福島老朽原発を考える会/原子力規制を監視する市民の会/グリーンピース・ジャパン
この日、原子力規制庁への質問で、九州電力の川内原発をなぜ止めないのか、についても質問しました。その様子はこちらから>>
関連ブログ
原子力“規制”委員会というより原子力ムラ“応援団” 傍聴してきました: 高浜原発1,2号機 議論ナシで再稼働へのステップ許可
高浜原発1,2号機、引退を求めて。原告として提訴してきました
わたしたちの思い、届けてきました。「とめよう再稼働」オンライン署名37,503筆、福井県へ提出
グリーンピースの活動は、おひとりおひとりの個人の寄付で行っております。自然エネルギーをつかう毎日を実現するために、ぜひご寄付でのご支援も、よろしくお願いします。
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