こんにちは。核/エネルギー担当の鈴木かずえです。

11月28日で、川内原発再稼働をしないように求める仮処分裁判の法廷でのやりとりが終わりました。

司法判断は、年明けになるようです。


鹿児島地方裁判所へ入廷する弁護団

すでに川内原発の再稼働は、“再稼働がされたとしても”、来年2月以降と報道されていますが、その前に裁判所の再稼働差し止め命令が出ることを期待します!

さて、差し止めを求めている「原発なくそう!九州川内訴訟弁護団」が鹿児島地裁での最終の法廷でのやりとりの後、報告会見を行いました。

グリーンピースから、ジャーナリストのまさのあつこさんに依頼して鹿児島に飛んでいただき、レポートしてもらいました。


 

かごしま県民交流センターでの報告会開催の挨拶をする森雅美弁護団⻑

司法の力で再稼働差し止めを 「原発なくそう!九州川内訴訟弁護団」森雅美弁護団⻑は、「行政は再稼働に向けて着々と手続を進めている。しかし、裁判は三権分立の一つの機構であり、そこがダメだと言えば行政とはいえ強行するわけにいかない。仮処分を申請して再稼働を止めることを決意してやっている」とその意義を強調した。

第4回目で最終となったこの日の法廷でのやり取りでは、弁護団側は争点である地震動についてさらなる弁論を行ったが、九州電力側は裁判所の質問に答えただけだったと言う。
双方とも主張を裏付ける書証を提出したが、九電側は大量の書面を提出、「危機感」や「焦り」の現れだと弁護団は捉えている。 報告の中で弁護団は、仮処分の審尋で争点となった3点(避難計画、火砕流、基準地震動)を解説した。

10キロ圏内ではバス300台が不足

避難計画については「国によって作るように要請されているが機能するかが問題だ。新規制基準の対象とはなっておらず、原子力規制委員会は考慮していない」と論証に使った具体例を紹介した。

避難に使う自家用車の気密性や長時間、長距離移動による被ばくの問題、自家用車を持たない人のためのバスは半径10キロ圏内で415台(30~50人乗り)が必要となるが最低300台が不足し、災害弱者の避難に必要な医療従事者や設備、受け入れ先などの不足や対応の不十分であるとした。

火山学者が、巨大噴火の「予知は無理」

火山による危険性については、川内原発は5つの活⽕⼭と3つのカルデラに囲まれているにも関わらず、原子力規制委員会の審査からは火山学者が排除されていたとし、九電が新規制基準の適合審査で「危険性が十分小さい」と主張した根拠は火山学者たちに否定されているとした。

九電は、カルデラ噴火は9万年周期で起きるが最新の噴火からは3万年しか経っていない、破局的な噴火の兆候はないと主張するが、「プロである火山学者は予知は無理だと言っている」とし、11月2日に開催された日本火山学会でも、同学会の原子力問題対応委員長の石原和弘京都大学名誉教授が「今後も噴火を予測できる前提で話が進むのは怖い話だ」と言明したことも指摘した。

九電の想定上回る地震が原発を襲う可能性あり

原発の耐震設計において、原発を襲うであろうことを想定すべき地震動が過小評価されており、原発の安全性が確保されていないことを裁判長に説明したと報告した。

ドキュメンタリー映画「日本と原発」も裁判所に提出

今回の審尋でユニークなのは、弁護団が提出した証拠である。

一つは、ドキュメンタリー映画「日本と原発」。川内原発差し止め訴訟の弁護団の河合弘之弁護士が監督、海渡雄一弁護士が構成・監修をしたものだ。
福島原発事故の被害実態から、原発政策の推進構造、新規制基準の欠陥まで、複雑な問題を裁判官に理解してもらうための説得材料として提出された。

大津地裁の決定は「実質勝訴」

もう一つは、前日27日に大津地裁が出した関西電力の大飯原発と高浜原発の差止を求めた仮処分申請に対する「却下」決定だ。

記者からの「(原告の訴えが)却下されたということで印象が悪かったが」との質問に海渡弁護士は、提出理由を「結論的に言うと、(大津地裁は)原子力規制委員会はよもや早期に再稼働を容認するわけがない。だからまだ(権利者の権利の)保全の必要性はないと行ったんです。その結論の出し方が妥当かどうかという疑問はあるが、少なくとも我々は負けていない」

そして、その決定の結論の部分を一部読み上げた。

『自然科学においてその一般的傾向や法則を見出すためにその平均値をもって検討していくことには合理性が認められようが、自然災害を克服するため、とりわけ万一の事態に備えなければならない原発事故を防止するための地震動の評価・策定にあたって、直近のしかも決して多数とは言えない地震の平均像を基にして基準地震動とすることにどのような合理性があるのか。(略)現時点では、最大級規模の地震を基準にすることこそ合理性があるのではないか。』これね、原告の主張じゃなくて、裁判所の判断の中にこれがある。これはかなり決定的です。基準地震動のあり方については我々が言っていることの方に合理性があるとはっきり言っている決定なんです

双方で12月15日までに反論などを裁判所に提出、裁判所の決定は1月になるのではないかとの見込みを弁護団は示している。


 今、全国の原発について、運転差し止めなどの訴訟があります。
(くわしくはこちら

注目していきましょう!

*「基準地震動の過小評価」など争点についてはグリーンピース・ブリーフィングペーパー『司法判断への期待:川内原発再稼働をめぐる 2 つの訴訟』をぜひご覧ください

*大飯・高浜原発差し止め仮処分についての大津地裁の「決定」についての原告団の見解はこちらをご覧ください。


関連ブログ

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関連資料

大飯・高浜原発差し止め処分の大津地裁の「決定」についての海渡弁護士の見解 (Facebookグループ「YES! 脱原発」にリンクします。メンバーでない方は、この機会にぜひご参加を。)