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こんにちは、食と農業担当の関根です。ヨーロッパからうれしいニュースが舞い込んできました。

4月27日、欧州連合(EU)は、ミツバチに毒性の強い3種のネオニコチノイド系農薬をほぼ全ての用途で使用禁止(但し植え付けから収穫まで温室内で栽培する場合を除く)にすることを決定しました![1] 

ミツバチに危険との判断が多数派

投票では、28カ国中、16カ国が禁止に賛成。それは、EUの人口比で76.1%の国が支持したことを意味します。農薬によるミツバチをはじめとする生態系への影響を心配し、声を上げてきた市民にとって、非常にうれしい結果となりました。

「ミツバチを守って!」子どもたちが署名を提出へ。ベルリンで

EUでは2013年に、3つのネオニコチノイド(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)について、予防原則に基づき、屋外での使用を部分的に禁止した上で、さらに詳しく、これらの農薬(殺虫剤)の使用がミツバチなどに与える影響を調査していました。

 今年2018年の2月には欧州食品安全委員会(EFSA)が、これらネオニコ3種のミツバチへのリスクは高いことを再確認する報告書を発表しました。

 そして今回の決定。英ガーディアン紙によると、今回決まった使用禁止は、2018年末までに発効するとみられています[2]。

「ミツバチを守って!」子どもたちのメッセージ。ローマのコロッセオで。

EUの次のステップ

今回決まった使用禁止はミツバチなど花粉を運ぶ生物や、生態系、そして私たちの食を守るために画期的です!

一方、この3種のネオニコの問題は氷山の一角にすぎない、という視点も大事です[3]。他のネオニコチノイド系農薬をはじめ、ハチや生態系に毒性の強い化学農薬がありますし、代替として、それらを使ったりしないようにすることも重要だからです。

「ミツバチは私たちの食を支えている」子どもたちがイベント。バルセロナで。

そのため、グリーンピース・EUは今後のステップとして以下の3つを提言しています:

  • フランスのように、EU全体でもすべてのネオニコチノイドを禁止する[4]。
  • この3種のネオニコに対して行ったと同じ厳しい試験基準をすべての農薬に適用する[5]。
  • 化学合成農薬の使用を大幅に減らし、生態系の力を活用して害虫を抑える農法へのシフトを支援する。

日本へのメッセージとは

日本では、ネオニコ系農薬の規制は緩和の傾向にあります。

EUでネオニコ系農薬を禁止する明確な判断が下された今、日本政府も、農薬メーカーの利益ではなく、問題と真剣に向き合うべきです。

昨年から、日本の農林水産省や環境省が設置する専門家の会議も、ようやく日本でもミツバチ被害と農薬の関係は見過ごせない問題だとの認識を明らかにしてきました。 

農薬の関与が疑われる蜜蜂の被害が毎年発生しており、現行の対策の実施に加え、更なる取組が必要」(農林水産省農業資材審議会農薬分科会[2017年7月]の資料より)

今、農薬の承認の検査をより詳しくしたり、生態系を守る基準を新たに追加したりする方向性が検討されていますが、毒性の強い農薬を規制できる制度の策定と早急な実施が望まれます。 

夏、水田に殺虫剤を散布するヘリコプター

そして、農薬の季節が近づいている今、現実にネオニコ系農薬の使用を止めていくことも急務です。

国内では、ミツバチの大量死との関連が明らかで、かつ、農家や自治体からも疑問の声が上がっているのは水田でのネオニコ使用です。

消費者と農家が力を合わせれば、不要な殺虫剤散布はやめられます。

あなたにできることがあります

グリーンピースでは今、農家団体や消費者グループとともに水田に殺虫剤をまく構造を作り出しているお米の等級制度を見直し、ネオニコ系農薬の散布を規制するよう求めるオンライン署名を実施中です。

あなたも下のバナーをクリックして賛同してください!>>賛同する >

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注 

[1] EU加盟国代表の投票によるもので、EUと16カ国が全廃を支持し、多数決で承認されました。詳しくはEUのウェブサイトへ

賛否の内訳

全廃に賛成:EU、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、英国、オランダ、オーストリア、スウェーデン、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スロベニア、エストニア、キプロス、ルクセンブルグ、マルタで、EUの人口の76.1%を占める加盟国。

全廃に反対:ルーマニア、チェコ共和国、ハンガリー、デンマーク

棄権:ポーランド、ベルギー、スロバキア、フィンランド、ブルガリア、クロアチア、ラトヴィア、リトアニア

[2] “EU agrees total ban on bee-harming pesticides”  The Guardian 2018年4月27日

[3]EU ではまだ禁止されていない アセタミプリド、チアクロプリド、スルホキサフロル、フルピラジフロンなどの4種のネオニコチノイドや、シペルメトリン、デルタメトリン、クロルピリホスなどの殺虫剤も、ミツバチや他の有益な昆虫への脅威となっている。

[4] フランスでは、EUと同じ3種に加えて、アセタミプリド、チアクロプリドのネオニコ系農薬の使用が、2018年9月1日以降禁止される(特定の用途のみ2020年7月1日まで猶予)。スルホキサフロルおよびフルピラジフロンの禁止も議論の最中である。

[5]EUでは、この3種のネオニコ系農薬のミツバチへのリスクを再評価するにあたり、従来より包括的な手法を用いたが、他の農薬の調査では用いられていない。


 

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