こんにちは。海洋生態系担当の花岡です。

今年も「夏の土用の丑の日」まであとわずか。日本は世界生産量の70%以上を消費する世界最大のウナギ消費国ですが、その国で「夏の土用の丑の日」はウナギが最も多く消費される一日です。美味しいウナギをたくさん食べて日本独自の習慣を次世代に繋げていきたいですね……と言いたいですが、獲り過ぎなどの理由でウナギが自然界から激減しており、とてもそうはいかない現状にあります。どれくらい深刻かと言うと……

日本で売られているウナギの99%以上が絶滅危惧種

皆さんご存知でしたか?日本で売られているウナギの99%以上はニホンウナギとヨーロッパウナギという2つの種類で占められているのですが、共に絶滅危惧種に指定されています。

  •  ニホンウナギは、農林水産省によると稚魚(シラスウナギ)の池入れ量(採捕量と輸入量の合計)は2009年の28.9トンから2013年では12.6トンとなっており、その量は激減。環境省は2013年2月1日に同種を「近い将来に野生での絶滅の危険性が高い」として絶滅危惧種に指定しており、同年、国際自然保護連合(IUCN)も絶滅危惧種に指定することを検討しています。
  •  ヨーロッパウナギは、1990年代に中国などを経由して日本へ輸出される販路が定着すると、輸出量の激増に伴って資源状態が激減。 国際海洋探査委員会(ICES)によると、ヨーロッパ12カ国にある19の河川で漁獲されたウナギの稚魚(シラスウナギ)の量は、1980年から2005年までに、平均で95%から99%も減少しています。2007年に開催された第14回ワシントン条約締約国会議で国際取引の規制が決まり、2008年には国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)で「近い将来の絶滅の危険が極めて高い種」に指定。2009年に実際に国際取引が規制されることとなりました。

薄利多売される絶滅危惧ウナギ

専門店で食べられるウナギの量は国内総消費量の30%程度と言われており、現在のウナギ食の主流は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなので比較的安価で売られているパック詰めにされた加工商品。全国展開する大手スーパーマーケットはウナギ蒲焼商品の価格競争を激化、コンビニエンスストアも予約受付を相次いで開始、牛丼チェーンまでウナギ商品を押し出しています。薄利多売型のビジネスモデルにより肥大した需要を賄おうと乱獲が進んだ結果、世界一大市場国・日本で消費されるウナギはここまで深刻な状態になってしまいました。古くから暑い時期を乗り切る栄養をつけるためにウナギを食べる習慣のある土用の丑の日は今や、日本の食文化において重要な位置付けにあると同時に、絶滅危惧種を国を挙げて消費する日という悲しい側面を持ち、ウナギ食の持続可能性を脅かしています。

ニホンウナギやヨーロッパウナギだけじゃない!

悲劇は続きます。国内のウナギ流通業界はいま、ニホンウナギやヨーロッパウナギの激減を受けて、アメリカ、オーストラリア、タスマニア、マダガスカル、フィリピン、インドネシアなど世界各地で、代替となるウナギを探しています。既にこれらの国からのウナギ輸入は少しずつ始まっていますが、問題なのは、これらのウナギのほとんどが持続可能性を担保する資源管理や漁業規制が行われていないこと。特定の種を獲り尽くしたら次の種を乱獲する焼畑的な漁業・流通・消費を今後も続けていけば、代替ウナギもすぐに次々と、ニホンウナギやヨーロッパウナギと同じ道を辿ってしまいます。

ウナギだけじゃない!

薄利多売が後押しする乱獲により資源状態が深刻な状態にあるのは、ウナギだけではありません。例えば、夏にスーパーなどでも広く流通する太平洋クロマグロ(ホンマグロ)は今や未開発時の3.6%しか海に残っていとされています。また世界の海洋漁業資源でまだ開発の余地のあるものは全体の13%しか残されておらず、残りは既に過剰開発の状態あるいは十分に開発された状態にあると言います。日々多くの魚介類商品がスーパーに並ぶ光景に見慣れた私たちには想像が難しいかもしれませんが、ウナギもマグロも他の魚においても、食べ尽くしてしまい、もう食べられなくなる日が現実に来る。私たちはそういう危機に直面しています。

「消費者の声」でまもる

世界有数の魚介類消費国である日本において、スーパーマーケットは家庭で消費される魚介類のおよそ70%を販売しています。漁業や消費の持続可能性の確保に大きな影響力を持つ流通チャネルで、企業間競争が激しく、消費者の声に敏感です。皆さん、ぜひオンライン署名「一週間、魚食べずに過ごせる?」に参加して、スーパーマーケットに「絶滅危惧種や乱獲された魚の薄利多売は止めてほしい。持続可能に獲られた魚を買いたい」という消費者の声を届けてください。 グリーンピースは豊かな生態系と恵みを次の世代の海と食卓に確実に残すため、大手スーパーマーケットに対して、絶滅危惧種、乱獲されている種、持続可能性が確保されていない魚介類を調達しないとする調達方針の策定・実施を求め、働きかけを行っています。

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