グリーンピースの活動を紹介する足立氏こんにちは、森林について担当している高田です。

きょう2月24日は、国連大学で行われた「生物多様性と企業の役割――認証パーム油の最新動向」というシンポジウムに行ってきました。主催は、NPO法人ボルネオ保全トラストジャパン、財団法人地球・人間環境フォーラム、 NPO法人ゼリ・ジャパンの3団体で、後援は農林水産省と環境省でした。200名以上の参加があったとのことです。

シンポジウムではパーム油生産が抱える問題点や、その解決に向けて動き出している企業やNGOの働きなど、持続可能なパーム油の生産・消費について様々な取り組みが報告されました。この中で、講演者の株式会社レスポンスアビリティの足立直樹さんや国際環境NGOのFoE Japanが、グリーンピースの森林キャンペーンの活動を紹介してくださいました。

食品から化粧品、洗剤など私たちの暮らしのいたるところで使われている植物油・パーム油。その便利さから世界的な需要は増加していて、いま世界で最もたくさん生産されている植物油脂です。パーム油の生産の8割以上はインドネシアとマレーシアで生産されており、需要の急増によって熱帯雨林や泥炭地(植物の残骸が積もり有機質の土のようになった土地)の破壊が進行しています。これにより、絶滅が心配されるオランウータンなどの森の生き物たちや、森とともに暮らす地元の人々の生活が脅かされています。

森林破壊の常習犯として不名誉な注目を集めてきたインドネシアのシナール・マス社や同社からパーム油を購入している企業に対して、グリーンピースは森林や泥炭地を破壊しない方法でパーム油生産などの事業を行うよう、2007年から継続して働きかけてきました。

きょうの足立さんの講演ではこのことも取り上げられました。これは世界最大の食品・飲料会社ネスレ社が販売するチョコレート「キットカット」がテーマです。森林破壊で生産したシナール・マス社のパーム油を使った「キットカット」を題材に、グリーンピースは森林破壊ストップを呼びかけるキャンペーン映像を制作しました。ネットに掲載されたこの映像は2カ月間で150万回視聴され、世界中の消費者は森林破壊の実態と身近な商品との接点を知りました。この実態を知った世界中の消費者からネスレ社に多くの声が寄せられました。この結果、ネスレ社は熱帯雨林を破壊して作られた原料の使用を中止することに至ったのです。

また、ユニリーバ、クラフト、バーガーキングなど世界的な企業もパーム油の調達方針を転換。ついに今年2月、シナール・マス社のパーム油生産部門GAR社は、森林破壊をこれ以上行わない新しい方針を発表しました。詳しくはこちら。

シンポジウムの中では具体的な事例とともに、持続可能なビジネスへシフトする重要性が強調されていました。持続可能性にどう取り組むかは、もはや企業にとって他社との競争力向上のための問題ではなく、企業のそのものの存在意義が問われる重大な課題となっています。――企業の環境への取り組み方は変わり始めています。

 

(写真: グリーンピースの活動を紹介する足立氏)