みなさん、こんにちは。

ボランティア・キャンペーン担当の宮地です。

 写真に写っている犬は、福島県浪江町津島付近で 撮影したものです。飼い主が避難したために離ればなれになってしまい、町中をうろうろと歩き回っているところを、あるNGO団体に保護されました。僕がこの犬と出会ったときは疲れきっていて、立ち上がるのも難しい状態でした。この後、NGOが管理する施設に移動し、新たな飼い主を探すことになります。

 先週に引き続き福島第一原発周辺の放射線レベルの調査を行うために、ベルギーから来たヤン・バンダ・プッタ(グリーンピース・インターナショナル、放射線安全アドバイザー)、リアナ・トゥール(グリーンピース・インターナショナル、エネルギー担当キャンペーナーで放射線の専門家)、トーマス・ブリュアー(グリーンピース・ドイツ、気候変動・エネルギー部門チームリーダー)ら8人と共に山形県米沢市に来ました。

 政府も発表しているように、依然として福島第一原発周辺では高い放射線量が検出され、避難勧告・自主避難地域以外の周辺住民の方々の平穏な生活は取り戻せずにいます。原発から30キロ以上離れた街でも商店は被災当時の混乱を残したまま、休業の表示もなく店が閉じられたままでした。

 こんな中、再度福島を訪れ、この目で見て感じたことは、多くの生き物の命が危険にさらされていることへの無力感でした。

 今回訪れた福島県相馬郡飯舘村の村内では、首輪を付けた犬や猫が町中をうろうろと歩いています。避難する時に村民のみなさんが放していったのでしょう。牛や豚などの家畜は畜舎につながれたままです。そして、鷹や雉などもこの周辺の地域に生息していると聞きます。

 正直、人影のない町中を犬が徘徊しているような光景は、僕の人生の中で今までに無い衝撃でした。人間が作り出した原子力発電所の事故が原因で、全く罪のない地域住民の方々はおろか、放射能の恐ろしさを知るすべのない動物の命が削られていく現実がいま、この日本の中で起きています。

 人間の多くは、目に見えない放射線であっても、さまざまな角度からの情報によってその危険性を認識し、そのうえで判断して行動できます。しかし、僕が放射能汚染の現場で目撃した動物たちは違うのでしょう。被曝量の危険性はわからず、えさや飼い主を探してそれぞれが暮らしてきた自然環境のまま過ごしています。

 僕がこの現場で飼い主とはぐれてしまった動物たちのためにできることは何一つありませんでした。ただただ、その哀れな姿を見て立ち尽くすだけでした。豊かな自然環境や優しい飼い主と暮らす動物たち何の罪もありません。人間だけでなく、動物たちにも悲劇を生み出すのが原発事故だということを、身にしみて感じました。