こんにちは、海洋生態系担当の花岡和佳男です。
福岡で行われていた「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第9回北小委員会(NC9)」が、さきほど閉幕しました。

北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が示すように、太平洋クロマグロの資源量は乱獲により過去最低レベルにまで落ち、未開発時の4%程度にまで減少しています。

更に同種の資源は親魚量も加入量も双方が減少している恐れがあると報告されており、今後も資源量が一層落ち込む可能性が高い状態にあります。

ISCの報告後に行われた今回のWCPFC-NC9はしかし、明確な資源回復計画策定のロードマップを描くことに失敗し、資源回復計画が策定されるまでの暫定的な措置にすら加盟国政府のコンセンサスが得られないまま閉幕するという、生物多様性、水産業、消費のあらゆる面にとって、残念な結果に終わりました。

今回のWCPFC-NCで最も重要なことは、太平洋クロマグロの資源回復計画の策定に向けどのようなスタートを切れるかということでした。

会議の結果、来年以降に資源回復計画を策定する方向性ができ、その計画には明確な管理基準値を含む必要があることを、議長や日本政府代表も指摘していました。
ただ今年の会議ではロードマップを描くには至らず、具体化は来年以降に持ち越しとなりました。

限られた会議の時間の多くは、資源回復計画ができるまでの暫定的な保護管理措置について割り当てられました。暫定措置におけるポイントは以下2点:

  • 未成魚の漁獲量の削減: 15%削減することとなりましたが、韓国の漁業は例外となりました。
    15%削減は日本政府が提案し会議でも強く推していたものですが、この数値には科学的根拠がなく効果も懐疑的と言わざるを得ません。
    あくまで暫定的な措置と言うことですが、これから何年間暫定的な状態が続くか分かりません。
  • 例外措置の削除: これまでは日本の零細漁業と韓国の漁業に対し、保護管理措置の一部において例外措置が適応されていましたが、その例外措置の完全削除に向け日本政府が提案し、韓国以外の全加盟国政府から合意を得ました。
    これにより、保護管理措置から外れるのは韓国の漁業だけが唯一という形となります。
    韓国はこれまで何年も同様の態度を取ってきており、卓上を囲む加盟国政府も「やれやれ、またか…」といった白い目でした。

管理基準値を含む具体的な資源回復計画がないまま、未成魚の漁獲量を一部例外的に認めた上で科学的根拠のないまま15%削減するとするWCPFC-NC9が出した暫定措置は、持続性の確保からは依然として遠いと言わざるを得ず、今後も太平洋クロマグロの乱獲が続けられることを意味します。

WCPFC-NCが予防原則や科学に基づき持続可能性を追求した漁業資源管理をしきれない現状下では、太平洋クロマグロの漁業や消費、そして海の生物多様性を次世代に残すためには、長期的な資源回復計画が策定・実施され明確な資源回復の兆しが見られるまで、太平洋クロマグロを一時的に全面禁漁にすべき状態にあります。

残された時間は限られています。
意思決定者であり太平洋クロマグロの漁業や消費および海の背物多様性の未来を左右するWCPFC-NC加盟国は、管理基準値を含む効果的な資源回復計画の策定に関し、来年のWCPFC-NCでこそ建設的な議論の上でコンセンサスを得て速やかに実施に移せるよう、その準備を本日より直ちに行うことが責務です。

特に世界最大の漁業国および消費国でありWCPFC-NC議長国でもある日本政府には、太平洋クロマグロ漁業の持続性確保への動きを、引き続き牽引することが求められます」と続けました。

進行が遅い漁業資源管理機関に頼るだけでは、次の世代の海や食卓に太平洋クロマグロを残すことはとても難しい現状です。
しかし、世界の太平洋クロマグロ総漁獲量の約80%を消費する日本国内のマーケットや消費者からの働きかけも、大きく欠けています。

太平洋クロマグロに限らず、他のマグロ類やウナギを始め、多くの魚が乱獲されている背景には莫大な需要があり、その需要は、日本の食卓に並ぶ魚介類の約70%を提供するスーパーマーケットや、全国展開する飲食店等によって作り出されています。

影響力のある大手はどこも、資源状態や環境負荷を十分に考慮せず短期的利益を追求して薄利多売を続けています。

生物多様性、漁業、そして魚が欠かせない日本の食卓を次の世代に残すため、グリーンピースは消費者と共に国内の大手スーパーマーケット5社(イオン、イトーヨーカドー、ダイエー、ユニー、西友)に対して、持続可能な魚介類の調達方針の策定を求め、働きかけを行っています。

スーパーマーケットに呼びかけるオンライン署名に、ぜひご参加ください

グリーンピースではこの他にも、海の環境をまもる活動を行っています。
詳しくは、「海をまもる」のページをご覧ください。 >>