こんにちは。広報担当の柏木です。

グリーンピースは、10月1日から5日、福島県田村市内にて、放射線調査と住民の方への生活状況の聞き取りを行いました。

田村市は、国道288号線を郡山から東にまっすぐ進んだところにあります。

東部の都路(みやこじ)地区の一部は、原発から半径20㎞圏内に位置し、避難指示解除準備区域に指定されています。
今年6月に、避難指示区域に指定されている11市町村の中で最初に、政府による除染作業が終了しました。
8月~10月の3か月間、避難区域としては初めて長期宿泊が認められています。
なお、調査を実施した時点では、11月にも避難指示が解除予定とも言われていましたが、10月14日、政府は解除の時期は来春との見方を発表しました。

調査概要ページではお伝えしきれなかった、住民の方に伺ったお話しをこちらのブログでお伝えします。
(写真は全て ©Noriko Hayashi / Greenpeace)

 

(1) 原発から20㎞圏内に元のお宅があり、田村市中心部の仮設住宅から毎日自宅に通っている渡辺さん

私たちが訪れたときに、外で作業をされていた渡辺さん。
200年続く農家の後継ぎで、自宅の目の前に田んぼ、そしてすぐ横に畑が見えます。

原発事故前は、起きたら畑仕事をし、自宅から少し離れたところでイワナなどを育てて生計を立てていたとのこと。自然を相手に何でもこなし、仲間や家族と一緒に過ごした生活を、思い出しながら話してくれました。

しかし、原発事故でそれら全てができなくなってしまいました。
「原発事故ですべてを失った」、「人とのつながりもない、仕事もない。一番つらいのは家族と一緒に住めなくなってしまったこと」と、静かな口調で話してくださる渡辺さんに、私は返す言葉がありませんでした。

現在、渡辺さんは除染作業の仕事をしながら、自宅の目の前に新しい住居を建てています。避難のために自宅を離れていた2年半で、雨漏りなど本宅の修繕が必要となるため、修繕の間の住まいです。

新しい住居には、いろりを作って、また皆で集まりたいと、未来を語る渡辺さんの笑顔に、これまでどれだけ人とのつながりを大切にしていらしたのか、そして原発がそれを奪ってしまったのだと、強く感じました。

 

(2) 原発から30㎞圏内に元の自宅があり、田村市中心部の借り上げ住宅にお住いの渡辺さん

こちらの渡辺さんは、旦那様とお孫さんの3人暮らし。
お孫さんの健康を心配して、元の自宅に戻らずに暮らすことを選択されています。

渡辺さんは、原発事故以前は元の自宅から程近い果樹園で収穫したウメやナツハゼというブルーベリーに似た果物から、梅干しやジャムを作って販売していました。
原発事故が起こったのは、インフルエンザ予防など、ナツハゼの効能が着目され始めた矢先のことだったそうです。

渡辺さんの果樹園は、山の谷合にある、とても美しい場所でした。しかし、果樹園の除染を行政に依頼したところ、行政からは「除染するカテゴリーに”果樹園”はないので、作業できない」と判断され、渡辺さんの果樹園は除染作業が入っていません。そのため、果樹園の放射線量は周囲と比べて高くなっていました。

事故以前はお孫さんもよく果樹園を訪れていたのに、もうお孫さんは連れて来られない、と少し小さな声でおっしゃる渡辺さん。今年小学校5年生のお孫さんは、果樹園で遊んだことを覚えているでしょうか。

 

(3) 田村市中心部の仮設住宅でお会いした渡辺さんたち

小雨の降る中仮設住宅に伺ったら、「濡れるから中に入りなさい」と仰ってくれたのが二人の渡辺さんです。
お二人とも、20キロ圏内にご自宅があって、以前からとても仲良くされていたそうで、仮設住宅でも隣あって生活をされていました。

震災直後、4か月で3か所もの避難先を転々としたこと、ご家族のこと、補償のための手続きが非常に煩雑であることなど、色々なお話をする中で、そっとひとつの書類を見せてくれました。それは原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続申立書でした。

書類は、封筒に入ったままで、未記入です。
「弁護士さんが来て、その書類を置いていったけど・・・」と言葉少なになる様子から、弁護士とのやり取り、書類の記入など、手続き一つ一つが、大きな負担になっていることが感じ取れました。

 

(4) 原発から45キロ圏内にお住いの大河原さん

大河原さんは、30年近く有機農業をされています。
事故前は、丹念に育てた農作物を個別に届けていたそうですが、放射能のリスクを恐れて顧客が激減してしまったそうです。

大河原さんは、ご自分の畑の土を「農家の子どもみたいなもの」と言います。これまで代々受け継ぎ、多くの野菜を育んできた土が放射能で汚染されてしまった気持ち、想像しきれません。

それでも、大河原さんは歩みを止めませんでした。土壌と野菜の放射線調査をし、結果と向き合い、問題ないレベルであることを確認して、野菜の個別配達を開始しました。
それに留まらず、仲間と一緒にお店を開店、検査結果を明示した上で野菜を販売しています。お店にお邪魔しましたが、地域に根差したとても温かいお店でした。

 

田村市は、山の合間に集落が点在する、とても美しい土地でした。
都会からの移住する方も多いと聞きましたが、自然と隣り合った暮らしを目にして、すぐに納得しました。 

これまで、自然に囲まれた広い自宅で暮らしてきた方が、避難先の住宅で暮らすのはどれだけ窮屈でしょうか。
これまで、地図がなくても山菜やきのこが採れる場所を熟知していた方が、放射能汚染を恐れて何も口にできないというのはどれだけ寂しく感じられるものでしょうか。
これまで、丹念に土を耕し手塩にかけて農作物を育ててきた方が、それをやめる、という決断をするのに、どれだけのためらいがあったでしょうか。

「除染が終了した、住民が帰還できる」、そういったニュースに隠れがちな、今でも続く住民の方々の苦労。
道路を走っていると、通学路、住宅の目の前、畑の脇などに山積みになった除染作業で発生した廃棄物を目にします。原発事故は、終わることがありません。

 

それでも、前を向いて力強く歩みを進めている方たちがいます。

千差万別なそれぞれの選択が全て等しく尊重されることを、その権利を、守っていかなければなりません。 政府や東電は、お金には決して換算できない一人一人の人生を守ることこそ、最優先にして取り組むべきです。

最後になりますが、突然の訪問を快く迎えてくださった皆さんに、心からの感謝を申し上げます。

 

国連人権理事会の勧告を受け入れて、原発事故被害者の暮らしをまもってください

いますぐ署名する >

 ぜひ、この署名を広めてください

署名は国連人権理事会が始まる2月23日に向けてまだまだ継続します。1月22日から始まった国会でも勧告受け入れについて議論してもらおうと、国会議員へも積極的にはたらきかけています。

ぜひ、こちらの署名にご協力をお願いします!

 

すでに署名された方へ。

ぜひ、まわりの方にこの署名のことを広めてください。

紙の署名用紙もあります>>こちら (白黒コピーしてお使いください)

関連情報

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ライターについて

グリーンピース・ジャパン
グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。世界中の300万人以上の人々からの寄付に支えられ、企業や政府、一般の人々により良い代替策を求める活動を行っています。ぜひ私たちと一緒に、行動してください。

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