花王は、みなさんにもおなじみのビオレや洗剤のアタックなどを販売する大手化学メーカーです。その花王が11月14日、グリーンピースとの協議を経て新たなパーム油の調達方針を発表しました。

その内容は「2020年までに、花王グループの消費者向け製品に使用するパーム油は、(RSPO)認証された持続可能性に配慮した原産地追跡可能なもの(生産したプランテーションまで※)のみを購入することをめざす。」というものです。

原料として購入しているパーム油のトレーサビリティー(原産地追跡可能性)の改善を達成期限つきで約束したのは、日本の企業としては初であり、重要な一歩です。国内企業をリードしていこうと一歩を踏み出したくれた花王の姿勢を評価したいと思います。

 

花王の方針:今後の改善点

パーム油の伐採許可地から助け出されたオランウータン、インドネシア

しかし、国際的な基準に照らし合わせると、花王の新方針にはまだまだ改善の余地があると言えます。

例えばユニリーバ社は、2014年末までにパーム油を完全にトレーサブル(追跡可能)にするという新方針を今月発表しています。(注1)

この方針と比べると、花王の「2020年までに(中略)認証された持続可能性に配慮した原産地追跡可能なもののみを購入する」という目標は野心的とは言えません。

一年間に東京都と同じくらいの面積(約25万ヘクタール)の森林がインドネシア、スマトラ島で失われていることを考えると、森林破壊を止めるため残された時間は決して長くないのです。

 

花王をはじめ多くの企業が依存する、RSPO認証の問題点

さらに花王は持続可能なパーム油の調達方針として、RSPO認最近開発されたアブラヤシのプランテーション、インドネシア・リアウ州証システムを利用するとしていますが、グリーンピースの調査でRSPOに参加している企業の中にも環境的・社会的に破壊的な生産を行う企業があることが明らかにされています。(注2)

つまりRSPO認証システムだけを利用して“持続可能なパーム油”調達を行うと、花王のガイドラインにある「原産地の法律・規則を守り、原産地の環境面および社会面の持続性に配慮されて生産されたもの」ではないパーム油も含まれる可能性があるのです。

 

 

一方、国際的にはユニリーバ社を含む3社が今後「森林破壊ゼロ」で作られたパーム油のみを原料として使用することを約束しています。(注3)

花王が一歩を踏み出してくれたとは言え、日本企業の持続可能なパーム油調達への取り組みは非常に遅れているのが現状です。しかし、大量のパーム油を消費している日本が変わることはインドネシアなどの森林保護においても重要な意味を持ちます。

パーム油を原料として使用している企業は「森林破壊ゼロ」で作られたパーム油のみを使用する方針をいち早く導入することで、私たち消費者に“森林破壊の手助け”をさせないようにしてほしいと思います。

 

400頭まで減少するスマトラトラ

 

「タイガーチャレンジ」トラをまもるために「森林破壊ゼロ」パーム油を約束してくれるのはどこの企業?

クリックして著名に参加今回のオンライン署名「タイガーチャレンジ」は、インドネシアでの森林破壊に深く関与する、シンガポールに拠点を置くパーム油世界大手ウィルマー・インターナショナルから、パーム油を購入する8つの企業にパーム油調達方針を変えてもらおうという署名です。これには、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や、オレオを販売するモンデリーズ・インターナショナルも含まれています。

止まらない森林破壊により残されたスマトラトラは約400頭にまで減っています。絶滅を止めるために残された時間は長くありません。大手企業の方針転換は、大規模な環境問題を解決へ導く糸口となることから、より多くの企業が一刻も早く「森林破壊ゼロ」方針を導入する必要があります。

このオンライン署名(英語)から、私たちになじみの深いブランドに「森林破壊ゼロ」方針を導入してもらい、 “トラにやさしい”パーム油を使って製品を作ってくれるようお願いしましょう!

 

 

注1)ユニリーバの持続可能なパーム油の新調達方針 (英語)

注2)『Certifying Destruction』レポート(英語)

注3)グリーンピース・インターナショナルのブログ(英語)

※ グリーンピースとのメールでの回答より


◆インドネシアの森林問題について、さらに詳しい情報はこちら(英語)