こんにちは、インターンの新野です。
これまで人道支援を専門として国連機関など世界各地で活動してきましたが、グリーンピースで短期インターンとして活動しています。


(写真: 井戸川さんの話を聞く海外からのゲスト © Greenpeace / Alex Yallop)

「福島の証言」を聞きに、海外からのゲストとともに福島へ

福島第一原発事故から3年。
政府は福島を忘れさせようとしています。

そんな中、被災者の方々がいまどのような状況にあるのか――。
グリーンピースは世界から反原発運動に携わる市民を招き、福島第一原発事故で被害にあわれた方を直接訪ね、お話を伺う企画を実施しました。

参加したのは5か国から計11名。
記録的な大雪の2月、私もスタッフの皆さんと福島への旅に同行してきました。

今回お会いした原発事故の被害者は5名。
飯舘村出身の元酪農家や農家、伊達市の元保育園の先生、田村市の有機野菜農家、前双葉町長。
お立場、顔ぶれは多様です。

一方、訪問者の方々の出身国は、日本同様、原発輸出に積極的なフランス、福島の事故をうけ、脱原発に舵を切ったドイツ、国内初の原発を建設しようとしているポーランド、日本の原発輸出に対し大規模な反対運動が起きたインド、そして、日本よりも狭い国土に23基の原発を持ち、建設中あるいは建設予定の11基を含めると、間違いなく原発密度が世界一の韓国。
それぞれのお国の事情があり、彼らが”FUKUSHIMA”に重ねる思いもまた、多様です。


(写真: インドからの参加者が持参した原発建設予定地の地域で配布している会報に見入る菅野さん © Greenpeace / Alex Yallop)

実は世界共通の原発安全神話

「インドのような国と比べれば格段に発展している日本でさえ深刻な事故が起きるという事実に世界は気づきました」――インドから参加したスンダラジャン・ゴマティナヤガム氏の言葉です。

3月11日の東日本大震災に引き続いて、原発事故が始まりました。
戦後の復興を“東アジアの奇跡”とたたえられ、かつては途上国の開発のモデルになった日本で、それも人類史上最大規模の原発事故。
その収束は人災に人災が重なり、いまだ先が見えません。

しかし、今回の参加者の一人、グリーンピース・フランス事務局長ジャン-フランソワ・ジュリアードは「福島の方々が、何度も『原発の技術は100%安全なので心配は無用だと言われてきた』と仰っていました。これは今、フランスをはじめヨーロッパ各地で語られていることと全く同じです」と言います。

フランスで原発広告にいくらかかっているか知りません。
日本では、東電は福島の事故以前、原発広告を含めたPR費として200億円以上かけていたそうです(詳しくはこちら)。
これらのPR費は私たちの電気代に上乗せされていたはずです。

200億円と聞いてもピンとこないかもしれませんが、実は私にとっては象徴的な数字です。
あれは2004年、当時私が勤めていた国連世界食糧計画(WFP)が、インド洋の津波の際人道支援に費やした総額に匹敵し、WFPにとっては歴史を塗り替えた桁違いの数字が200億円でした。

原発の安全神話はしょせん、神話でした。
それでも破格のコストをかけて安全を神話化しなくては成り立たないビジネスだったのです。

そして神話は他国でもつくられている模様。
ところ変われど、人間のすること、あまり変わりはないようです。


(写真: 田村市の畑の側に積み上げられた除染廃棄物の袋 © Noriko Hayashi / Greenpeace)

人道支援の立場から見る福島の「復興」

政府は2月25日、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた「エネルギー基本計画」の原案を発表しました。

事故からたった3年。
政府は確実に再稼働に舵をとり、原発メーカーと組んで積極的に原発を海外へ輸出をしようとさえしています。

その一方で、復興は一向に進みません。
いいえ、「復興の前に救済がされていないのです」――事故当時、双葉町長であった井戸川氏の言葉が胸に刺さります。

冒頭でご説明したように、もともと私は人道支援を専門として世界各地で活動しています。
震災当時は、偶然が重なり、たまたま霞が関で勤務していました。
普段はODA(政府開発援助)のビッグドナー(大口拠出国)である我が国政府が、悲しいくらいアマチュア的に人道支援にあたるのを目の当たりにして感じた、やるせない思いは今もくすぶります。

人道支援において二つの法則があります。

ひとつは「不均衡に重い負担を強いられるのは常に弱者」という法則。

私のこれまでの勤務地は主に途上国でしたが、残念ながらこの法則、日本にもしっかり当てはまるようです。

被災者・被害者(弱者)は置き去りにされ、個々人の頑張りに頼らざるを得ない始末。

今回、福島を訪れたドイツ地方議員のマーティン・ドーナット氏は、もっとも印象に残ったこととして、「人々が電力会社と政府を信頼することができず、自分たちで何とかせねばと奮闘し、NGOからの支援を緊急に必要としている」点を挙げています。

そしてもう一つの法則は、「人道支援の質がのちの復興の質を決める」というもの。

同じくポーランドから福島を訪問したアンジェイ・スラヴィンスキ氏は「ほとんどの方が全く、もしくは非常に限られた支援しか行政から受けていません」と証言しています。

(写真: 福島の方の証言を聞き質問するドイツからのゲスト © Greenpeace / Alex Yallop)

このような状態では、住民のためのまともな復興はまずあり得ません。

新しい住宅地であろうが、病院であろうが、箱モノをいくら取り繕っても、復興の主体者たるコミュニティーが癒されなければ復興はなされません。
そしてそのコミュニティーを構成するのは被災者・被害者です。

繰り返しますが、この原発事故では、被害者が置き去りにされています。

除染も思うようには進んではいません。(詳しくはグリーンピースの放射線調査をご覧ください

ドーナット氏も、「見せかけの『除染成功』のもとに、被害者たちは汚染が残る地域への帰村を促されている」現状を憂慮しています。

福島第一原発からのたび重なる汚染水漏れで、海も汚染されています。

時間だけが過ぎ、事故を終わったことにしようとする政府に騙されてはいけません。
福島訪問に参加した韓国のユン・ホセブ国民大学名誉教授は「福島の方々は今も苦しんでおり、健康に生きる権利や、幸せな生活は意図的に壊されています」と強調しています。

(写真: 移動中のバスの中で福島の方の証言を語り合うポーランドからのゲスト © Greenpeace / Alex Yallop)


福島原発事故以降、日本の役割とは?

「明治時代に後戻りしています」
前双葉町長の井戸川氏は現政権をこう評します。

偶然にもこの1月、Independent Web Journalの岩上安身氏が全く同じことを指摘しています。
「戦争ができる政府になってしまった明治時代に、安倍政権は後戻りしている」と。
しかも原発ではなく、秘密保護法についてのシンポジウムでの発言です。

しかしながら、現行の日本国憲法は謳います―― “国際社会において、名誉ある地位を占めたい”(日本国憲法前文)。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。

そんな日本が本来めざすべきところはどこでしょうか?

「日本の政府が他国に原発を売ろうとしていることが理解できない」といぶかるインドのサティヤジット・チャヴァン氏はジャイタプール原発反対活動の中心人物。
福島を訪れた彼は、「日本がすべきは、本質的に危険な原発という技術を世界からなくすことだ」と示唆します。

また前出のグリーンピース・フランス事務局長のジュリアードも、日本こそ「老朽化した原発の延命ではなく、自然エネルギー利用へと舵を切る」リーダーになるべきだと断言しています。

「もし、(中略)これから生まれ来る世代が、『原発しか選択肢はなかったのか』と尋ねることができたとすれば、どうでしょうか」ユン・ホセブ教授は問いかけます。
「真実から目を背けることは止めるべきです。安全でクリーンでより安価な他の選択肢が、私たちにはあるのですから」

たち遅れる原発の被害者救援と復興支援。
そして海外から求められる日本の役割。

福島第一原発事故から3年。
みなさんなら、この問いにどう答えますか?


(写真: 福島の方の証言をソウルで伝える韓国からの参加者 © Lim Tae Hoon / Greenpeace)

――――
新野智子:
グリーンピース・ジャパン短期インターン生。国連および赤十字を通じて、アフリカ、アジア、南米などで合計15年以上に渡り人道支援分野で活動。

 


 

 「忘れないでほしい」ーー福島の証言を聞いて、広めてください。

ぜひ、以下のサイトから原発事故で被害を受けた方々のお話しを聞いて、広めてください

 

とめよう再稼働オンライン署名にご協力をお願いします。

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【関連項目】 原発フリーの明日>> 

 

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