こんにちは、気候変動・エネルギー担当の高田です。今週、気候変動についての国際会議(IPCC総会)が横浜で開催されています(グリーンピースも、国連認定の正式なオブザーバーとして参加中)。
それに関連して、わたしたちに「遠くて近い」問題をご紹介したいと思います。


(写真:© Jeremie Souteyrat / Greenpeace)

「気候変動にSOS、自然エネルギーにGO!」――この写真はIPCC総会に合わせて、横浜の石炭火力発電所などを背景に撮影したもの。

実は、この発電所を運転する電源開発株式会社(J-POWER)が、日本政府の強力なバックアップを受けながら、同じタイプの石炭火力発電所をインドネシアに輸出・建設しようとしています。これに対して、地元住民が猛反対している理由とは?

以下、グリーンピース・ジャパンのインターン生、齋賀さんが現地の様子をブログにまとめてくれました。

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こんにちは、インターンの齋賀です。住民の猛反対を押し切り、東南アジア最大級の石炭火力発電所の開発が進められようとしていることをご存知ですか? 私がインドネシアの同僚から聞き取りしたことを書きたいと思います。

舞台はインドネシアの首都があるジャワ島の中央、バタン地方。リゾートでおなじみのバリ島のすぐ隣です。


■田んぼと漁業の村

バタン地域には5つの村があり、人口は約1万。住民の多くは漁業や農業で生計を立てています。よい漁場に恵まれた豊かな海が目の前に広がり、お米の栽培も盛んで、収穫はなんと1年に3回というので驚きです。




ところが、そんな穏やかな暮らしと自然環境、そして住民の健康が、いま危機に直面しています。
石炭火力発電所が建設されようとしているからです。

そして、その計画を進めているのは、日本企業と日本の銀行、そして日本政府…。
電力会社の電源開発(J-POWER)、総合商社の伊藤忠商事、資金提供をする日本の国際協力銀行(JBIC)らが中心となり、日本政府からの支援を受けて、発電所建設が強引に進められようとしています。


■「石炭は殺人だ」

石炭火力発電所の開発は、大気汚染、川などの水質汚染、酸性雨、生態系の破壊を招きます。それだけでなく、環境破壊により漁業や農業を営めなくなると住民は失業に追い込まれ、家計やコミュニティーに深刻な影響をおよぼします。また、重金属、酸性ガス、硫黄など何種類もの有害化学物質を排出するため、健康被害も懸念されます。

このため地元バタンの人々は、発電所建設に猛反対を続け、安倍首相・日本政府に対しても建設中止を求めています。しかし、こうした抗議の声を抑えようとするインドネシアの軍・警察により、住民に負傷者が出る事態も起きているとのことです。


(写真:顔を白黒に塗り、「石炭は殺人だ」と書かれた板をもち抗議するインドネシア・バタンの人々)

電源開発は、バタンに建設するのは最新式の石炭火力発電所で、有害物質の排出や二酸化炭素の排出が従来型よりも少ないものだとしています。しかし、いくら外に排出される有害物質が少なくても、石炭を燃やせば有害化学物質が発生することには変わりなく、地元の環境や住民を脅かします。

また、いくら二酸化炭素の排出が少ないといっても、石炭を燃やせば、自然エネルギーと比較にならないほど大量の二酸化炭素を排出します。石炭火力発電所は、二酸化炭素排出で世界最悪の原因となっています。

● ビデオ: 黄色の旗を掲げ石炭火力発電所の建設反対を訴えるバタンの人々の声(インドネシア語・英語) 

 


■人や自然を生かす、これからの発電所を

バタンの石炭火力発電所は住民への電力供給が開発の目的とされています。住民のためにと言うのなら、反対を押し切って住民の生活を壊す発電所建設を進めることは矛盾しているのではないでしょうか。

国連のIPCCの科学者たちがまとめた2000ページ以上に渡る報告書では、二酸化炭素の排出を今すぐに大きく減らさなければ、深刻な気候変動は避けられないと警告しています。新たに石炭火力発電所をつくり、大量の二酸化炭素を排出する余裕は地球に残されていません。

(写真:ジャワ島中央のジェパラ石炭火力発電所の前に立つ放牧農家)

また、今後世界では水の確保が重要な問題になると指摘されています。運転に大量の水を必要とする石炭火力発電所は、飲料水や農業用水と地域の水資源を奪い合うことになるでしょう。

一方で、インドネシアは世界有数の地熱発電の有力地で、太陽光や風力など自然エネルギー活用の大きな可能性をもっています。日本が貢献すべきは、人や自然を傷つける従来型の発電所ではなく、人や自然を生かすこれからの発電所ではないでしょうか。

インドネシアで起こっているこの問題、自分には関係ないと思われる方も多いかもしれません。
しかし、インドネシアの美しい自然と人々の暮らしを脅かす環境汚染に、日本が加担しようとしている事実は受け止めなければいけません。

何か少しでもできることあれば、協力してみませんか?
以下のウェブサイトで、石炭問題が詳しく紹介されています。