こんにちは。核・エネルギー担当の鈴木かずえです。

関西電力の高浜原発の再稼働差し止め決定を、もう読まれましたか?

私は胸がスカッとしました。まだの方はぜひ読んでみてください。

 

避けられた「切迫した危険」

「仮処分」での決定は、昨年の大飯原発差し止め「訴訟」での判決と違って、「切迫した危険」を避けるためのもの。

原子力規制委員会の審査が終わっても、知事が同意しても、たとえ関西電力が異議申し立てをしても、それが法的に認められるまでは再稼働できません。 

このように、裁判によって原発の再稼働に歯止めがかかったのは、日本で初めてのことです。

関西電力はすでに意義申し立ての準備に入っているそうです。ただ、その裁判には時間がかかるので、今年中の再稼働は無理になるでしょう。

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否定された新規制基準

今回の決定の大きな特徴は、「関西電力の高浜原発の危険性」についての判断から踏み込んで、原子力規制委員会の再稼働適合審査に合格しても、住民の安全は確保できず、「現実的で切迫した危険」があるとしたことです。

全国の自治体の原子力安全対策課や関係部署の方々にも、ぜひ、読んでいただきたいですね。ブログ末尾に決定要旨をテキストで掲載しました。

ぜひ、このブログのツイートボタンで拡散してください。

(理由全文などは「脱原発全国連絡会」のサイトにあります

【決定要旨ハイライト】

・想定された地震の最大の揺れは最大ではなく、より大きい地震が原発に到来しうる

・想定内の地震の揺れであっても、過酷事故が起こりうる

・新規制基準は合理性がなく、新規制基準に適合しても安全が確保されない

大飯・高浜原発運転差止仮処分申立人、弁護団は、415日、「高浜原発3.4号機の運転差止決定を受け基準適合性審査等の中止を求める緊急申入書」を原子力規制委員会・原子力規制庁に提出しています。

新規制基準に安全を確保できる合理性がないと判断されたのだから、審査を中止せよ、というわけです。

原発の再稼働や運転差し止めの裁判は全国で取り組まれています。

それぞれに支える会などがありますから、支援していきたいですね!

 Sendai nuclear power plant

 

川内原発の仮処分の司法判断は22

来週422日には、今度は九州電力川内原発の再稼働差し止め仮処分裁判での判断が下される予定です。

この裁判には、グリーンピースも、証拠提出に協力しています。差し止めが命じられることを心から願っています。

川内原発差し止め裁判については、ぜひ、こちらのブリーフィングペーパーをご覧ください。


すべての再稼働をとめるために、原発立地自治体の首長へ提出する「とめよう再稼働」オンライン署名にぜひ、ご参加ください。

すでに署名にご参加の方は、ぜひ拡散をお願いします。

<決定要旨全文>

高浜原発34号運転差止仮処分命令申立事件

主文

1 債権者は、福井県大飯郡高浜町田の浦1において、高浜発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

2 申立費用は債務者の負担とする。

理由の要旨

 

1 基準地震動である700ガルを超える地震について

基準地震動は原発に到来することが想定できる最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。

 しかし、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来している。本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づいてなされ、活断層の評価方法にも大きな違いがないにもかかわらず債務者の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見いだせない。

 加えて、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉幸次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」と答えている。地震の平均像を基礎として万一の事故にそなえなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見い出し難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。

 基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が認められる。

2 基準地震動である700ガル未満の地震について

 本件原発の運転開始時の基準地震動は370ガルであったところ、安全余裕があるとの理由で根本的な耐震補強工事がなされることがないまま、550ガルに引き上げられ、さらに新規制基準の実施を機に700ガルにまで引き上げられた。原発の耐震安全性確保の基礎となるべき基準地震動の数値だけを引き上げるという対応は社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないものと思われる。

 基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあることは債務者においてこれを自認しているところである。外部電源と主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿である。安全確保の上で不可欠な役割を第1次的に担う設備はこれを安全上重要な設備であるとして、その役割にふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。このような設備を安全上重要な設備でないとする債務者の主張は理解に苦しむ。債務者は本件原発の安全設備は多重防護の考えに基づき安全性を確保する設計となっていると主張しているところ、多重防護とは堅固な第1陣が突破されたとしてもなお第2陣、第3陣が控えているという備えの在り方を指すと解されるのであって、第1陣の備えが貧弱なため、いきなり背水の陣となるような備えの在り方は多重防護の意義からはずれるものと思われる。

 基準地震動である700ガル未満の地震によっても冷却機能喪失による炉心損傷にいたる危険が認められる。

 

3 冷却機能の維持についての小括

 日本列島は4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震の1割が我が国の国土で発生し、日本国内に地震の空白地帯は存在しない。債務者は基準地震動を超える地震が到来してしまったほかの原発敷地についての地域的特性や高浜原発との地域差を強調しているが、これらはそれ自体確たるものではないし、我が国全体が置かれている上記のような厳然たる事実の前では大きな意味を持つこともないと考えられる。各地の原発敷地外に幾たびか到来した激しい地震や各地の原発敷地に5回にわたり到来した基準地震動を超える地震が高浜原発には到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険である。

 

4 使用済み核燃料について

 使用済み核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない。使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。また使用済み燃料プールの給水設備の耐震性もBクラスである。

 

5 被保全債権について

 本件原発の脆弱性は、①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する、②外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする、③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにするという各方策がとられることによってしか解消できない。また、地震の際の事態の把握の困難性は使用済み核燃料プールに係る計測装置がSクラスであることの必要性を基礎付けるものであるし、中央制御室へ放射性物質が及ぶ危険性は耐震性及び放射性物質に対する防御機能が高い免震重要棟の設置の必要性を裏付けるものといえるのに、原子力規制委員会が策定した新規制基準は上記のいずれの点についても規制の対象としていない。免震重要棟についてはその設置が予定されてはいるものの、猶予期間が設けられているところ、地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは明白である。

 原子力規制委員会が設置変更許可をするためには、申請に係る原子炉施設が新規制基準に適合するとの専門技術的な見地からする合理的な審査を経なければならないし、新規制基準自体も合理的なものでなければならないが、その趣旨は、当該原子炉施設の周辺住民の生命、身体に重大な危害を及ぼす等の深刻な災害が万が一にも起こらないようにするため、原発設備の安全性につき十分な審査を行わせることにある(最高裁判所平成41029日第一小法廷判決、伊方最高裁判決)。そうすると、新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきこととなる。しかるに、新規制基準は上記のとおり、緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くものである。そうである以上、その規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく債権者らが人格権を侵害される具体的危険性即ち被保全債権の存在が認められる。

6 保全の必要性について

 本件原発の事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり、本案訴訟の結論を待つ余裕がなく、また、原子力規制委員会の設置変更許可がなされた現時点においては、保全の必要性も認められる。

 

グリーンピース・ジャパン

ライターについて

グリーンピース・ジャパン
グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。世界中の300万人以上の人々からの寄付に支えられ、企業や政府、一般の人々により良い代替策を求める活動を行っています。ぜひ私たちと一緒に、行動してください。

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