ゴールデンウィーク中の4月30日、東京・虎ノ門の駐日米国大使館に行ってきました。キャロライン・ケネディ大使に提出予定の「沖縄・辺野古のジュゴンを守ろう!」署名に関連して、大使館担当者と意見交換をするためです。

 大使館からは、科学・技術・環境、広報、軍事政策の担当者が出席。グリーンピースからはプログラム部長のチア、広報の関本、キャンペーナーの関根が参加しました。セキュリティを通過してものものしい雰囲気の中、30分のミーティングが行われました。

 グリーンピースの伝えたかったことは、普天間基地の移設先として新基地建設が計画されている辺野古に棲むジュゴンを守ること、そして辺野古・大浦湾の豊かな生態系を守ること。辺野古の海を守るために、様々なステークホルダー(利害関係者)が何をできるだろうかといった、率直な意見交換をすることも目的でした。

辺野古は生物多様性の宝庫

ところで、辺野古・大浦湾には、長い年月をかけて形成された美しいサンゴ礁と青い海が広がるのをご存知でしょうか? マングローブ林、干潟、海草藻場、砂場、泥場、サンゴ礁が連続し、ブロッコリーのような(!)やんばるの森から流れ込む川により、豊かな海洋生態系が作りあげられています。2007年に発見された巨大なアオサンゴ群集や、絶滅の恐れが最も高い哺乳類のジュゴン(環境省、絶滅危惧IA類)が生息するなど、生物多様性に豊む海です。環境省の「ラムサール条約湿地潜在候補地」のひとつにも選定され、確認されているだけでも、絶滅危惧種262種を含む5,300種以上の海洋生物の生息地といわれています。

 

 写真:『大浦湾生き物マッププロジェクト』(沖縄リーフチェック研究会発行)8 ページ

沖縄の人々と接点はあるの?

さて、沖縄の人々が辺野古の新基地建設に反対していることは、知事選、衆議院選挙、名護市長選の選挙結果からもわかるとおり明らかです。そこでまず、米国大使館などアメリカの政府系機関は、沖縄の人々と直接会って意見を聞いたり話し合いなどをしているのか聞いてみました。

答えは、沖縄のことについては在沖米国総領事館が主な窓口で、米国大使館よりも地元の人々との接点が多いとのことでした。それは「他の基地がある地域でも地元の意見は聞いており、それに基づいて、神奈川県厚木の米軍基地から山口県岩国への米軍機移駐を進めるなどもその例だ。普天間飛行場の移設も同じだ」とのこと。

 

 

ケネディ大使と翁長知事の会談は?

また、ケネディ大使が翁長県知事の面会要請を「目的が不明確」として断っていたと4月に報道され話題になりましたが、これが本当かどうか聞いてみました。すると「それは違う。だが私たちがケネディ大使に代わって回答することはできない」と、納得のいく回答ではありませんでした。 

2014年2月にケネディ大使が沖縄を訪れて仲井真前知事と会談したときに、基地負担軽減に努力したいという旨の発言をしたことは、みなさんも記憶に新しいはずです。辺野古移設反対の民意が明らかであるいま、基地負担軽減は辺野古の新基地建設を止めること以外にないのでは? 沖縄の民意がケネディ大使に直接届く日はいつになるのでしょうか。

 

「何も問題無い」?! 環境評価の共有は十分?

ミーティングを通じて私たちが感じたことは、辺野古の埋め立てがもたらす環境破壊についてきちんと大使館に伝わっているのかどうかという疑問でした。環境破壊の可能性について聞いたところ「何も問題無い」との答えが返ってきたからです。

ジュゴンは国際自然保護連合(IUCN)に絶滅危惧種に指定され、日本の環境省の絶滅危惧種リストにも掲載されています。また、沖縄のジュゴンは世界で最も北に生息する「北限のジュゴン」として知られ、いま確認されているのは3頭のみで、絶滅の危機に瀕しています。

環境省から委託を受けている財団の報告書の中で、ジュゴンの回遊ルートを示す資料(注:沖縄防衛局による、主にヘリコプターからの目視調査)も見せましたが、初めて目にする出席者もいたように見受けられました。 

資料:一般社団法人自然公園財団「平成26年度ジュゴンと地域社会との共生推進業務報告書」(平成27年3月)北限のジュゴン調査チーム・ザン提供

また、沖縄防衛局が海底に設置した巨大コンクリートブロックがサンゴを傷つけている写真も見せました。沖縄のメディアだけでなく全国の新聞やテレビでも報道されていたにもかかわらず、全員が見入っており、現地で起きている自然破壊を大使館が把握していなかった可能性が感じられました。日本政府(沖縄防衛局)は、辺野古の埋め立て申請書や環境影響評価書をアメリカ海兵隊へ提供しているはずですが、情報提供は十分だったのでしょうか? 日本政府から米国大使館に、最低限の科学的調査すら共有されていない印象を受けました。

 

 

「FRF」って何の意味?

また、ミーティング中に「FRF」という聞きなれない言葉が耳に入ってきました。沖縄の生物多様性を守る活動をしている「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」の吉川秀樹さんに確認したところ、’Futenma Replacement Facility’(普天間代替施設)の略で、「辺野古の新基地」をそのように呼んでいるそうです。

この言葉は、私たちには、埋め立てられた場所の上に立つ基地や建物のことしか考えていないように響きます。

移設は、新たに他の地域の環境を犠牲にすること。

辺野古・大浦湾の豊かな自然環境や生き物、下敷きにされるサンゴ、人々の生活を破壊するのだということをまったく無視しているように聞こえました。

突然、打ち切られたミーティング

辺野古の環境破壊について情報提供をしたあと、私たちは、辺野古に新しい基地を作るという以外の案についてどう考えているのかということを聞こうとしました。すると軍事政策担当者の方が急に立ち上がり、今日は来てくれて、情報あ りがとう、といって話を終わりにしようとしました。もう一度、代案が何か有るのかを聞きたいと、尋ねましたがそれは検討の末に決まったことだと趣旨の言葉が返ってきただけで、面会はそこで打ち切られてしまいました。

今回の米国大使館とのミーティングの成果として、日本政府を介さずに、直接情報を渡すことができたのは大きな成果でした。しかし、私たちが希望した、沖縄の地元の方に同席していただいての面会は、大使館の意向により実現しませんでした。今後、さらに現地で活動する方々の声を大使館に届けられるよう活動を続けたいと思います。

あなたの賛同署名が新基地建設を止める力になります

ケネディさんは、海洋哺乳類の保護にも熱心な人物として知られています。北限の希少なジュゴンの生息地が基地の犠牲になろうとしている現実を、もっと知ってもらうために、あなたの力が必要です。

「沖縄・辺野古のジュゴンを守ってください!」署名は引き続き実施中。下のジュゴンの画像をクリックして署名に参加ください。50秒で出来ます!