〜院内学習会「守ろう子どもとミツバチ、食の安全」—ミツバチ編(上)〜

 

みなさんこんにちは。食と農業担当の関根です。

9月16日、衆議院第二議員会館で、ミツバチと農薬についての院内学習会を開きました。

講師は、ネオニコとミツバチの影響を研究する山田敏郎さん(金沢大学名誉教授)と、ベテラン養蜂家の依田清二さん(長野県養蜂協会会長)です。今回のブログはその報告の第1回目、山田敏郎先生のお話です。

 国会議員にも現場の声と最新の情報を聞いてほしい、と企画した小規模な学習会で、参加は国会議員と秘書が12人、報道7人、NGOから3団体、じっくりお話を聞く機会となりました。


山田敏郎先生のお話 

<ネオニコチノイドの特性>

ネオニコチノイド系農薬は、残効性が長く約2年のものもあって、従来使われてきた有機リン系の農薬が約2週間なのとくらべると桁違い。

浸透性で植物の細胞全体(根から実まで)にまわり、また水を介して環境に拡散しやすいという問題も挙げられました。

問題のミツバチへの毒性の強さもDDTの5000から10000倍近いものもあるとのこと。

 

<畑にまく農薬濃度とほうれん草の農薬残留濃度が同じ!? >

畑に来るカメムシを防除するためにまく農薬の濃度は40ppm(クロチアニジン)。山田先生が問題視するのは、水田に散布するのと同じ濃度の食品の流通が許されているという点。

たとえば、お茶の葉の残留農薬濃度は50ppmまで許されており、実際に散布する濃度よりも食品事態の濃度の方が高くてよいという基準になっています。

そして、ほうれん草も、残留濃度は40ppmまで許されているので、散布する農薬と同じ濃度のものを食べてよい、というのが日本の残留基準なのです。

 

 

(2015年9月16日院内集会山田敏郎氏講演スライドより)

 

 

<ミツバチの被害が少なくみえるトリック?>

日本では、ミツバチの大量死があっても「ない」ことになってしまう、そしてそれは調査方法に問題がある、と山田先生は指摘します。

まず、ミツバチが大量に死んでいる、と養蜂家さんから第一報が入ると、(都道府県が)原因を調べます。そこでまずウィルスやダニの検査をします。「ウィルスやダニがいる」とわかったらそこで原因調査は終わり。農薬の検査をしないのです。 

結果、「ウィルスがいなくて農薬が検出された」という場合だけが農薬が原因と特定されるので、本当は農薬で弱っていてウィルスやダニに負けてしまった、というようなケースはカウントされてこない、というのです。

 

(2015年9月16日院内集会山田敏郎氏講演スライドより)

ということは、政府が把握・発表しているよりも実際の被害は大きいのだ、と考える必要があります。

調査方法については、養蜂家さんの立場からも問題が挙げられていますので、ぜひ次の号も読んでくださいね。

>すでに1万人以上が参加!危険な農薬からミツバチを守る署名にご協力をお願いします

 

<ミツバチへの影響—最新の実験結果から>

 

山田先生は、2010年〜2014年まで、石川県とハワイのマウイ島でネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響に関する長期野外実験にとりくんでいらっしゃいました。今回、その最新の結果を含めて、影響の実態をお話していただいたものを要約します。詳しくは、先生の論文もご覧ください(英文:2010年の研究2011年の研究)。

 

2010年の研究では、ネオニコ農薬(クロチアニジン、ジノテフラン)を散布したあとの水田の周辺の水の濃度と同じ4ppm(クロチアニジン)やその10分の1の0.4ppmなど6通りの濃さと種類で水を与えたところ、直後に大量死が始まり、残ったハチもやがて姿を消すという蜂群崩壊症候群(CCD)に似た現象がおき、20日〜80日経過するまでには全滅してしまったそうです。

 

(2015年9月16日院内集会山田敏郎氏講演スライドより)

 

2011年の研究では、砂糖水と花粉ペーストにネオニコ農薬(ジノテフラン)を混ぜ、かつ、水田に散布する場合の農薬の濃度の10〜100分の1という低濃度で与えてみたところ、どの濃度の場合でもミツバチたちは冬を越すことができなかったそうです。

2012年と2013年の研究では、従来から使われている有機リン系農薬とネオニコ系農薬での影響の違いを調べました(2012年は中濃度、2013年は低濃度)。

2012年はネオニコ系農薬を与えた巣は越冬できずに全滅してしまいましたが、有機リンの場合は越冬に成功、生き延びることができたそうです。

翌2013年は、冬が厳しかったこともあり、どちらも越冬はできなかったそうですが、この年の研究でハチの巣の全滅時期(1月初めはネオニコ系農薬群が、その1~2か月後に有機リン系農薬群とコントロール群が全滅)や全滅するまでのミツバチの農薬摂取量が有機リンとネオニコ系では大きく異なるというデータが得られたということです。

2014年の研究はマウイ島で行われました。研究の舞台にマウイ島が選ばれたのは、ここにはハチのウィルスやダニがいないから。有機リン系とネオニコ系の農薬の差は、この実験でも明らかに現れたといいます。

 

<ネオニコを禁止する勇気を>

こうしたミツバチたちとの研究を通して、山田先生はこう提言しています:

「ネオニコは無味・無臭で、ミツバチは田畑の水に含まれていても長期間摂取し続けてしまいます。残効性が強い農薬なので、巣に蓄えられたハチミツにも長く残留し、たとえ極低濃度でも、ミツバチの群を弱体化させます。

 その長期残効性は有機リン系のようなこれまでの農薬には見られないネオニコ特有の性質といえるでしょう。この長期残効性と強い毒性(農毒)がこれまで経験したことのない脅威をミツバチに与えているのです。

 短期間に分解するため蓄積・拡散の恐れが小さい農薬と違い、ネオニコはその長期残効性と高い毒性のために取り返しのつかない環境汚染を引き起こす恐れがあります。ネオニコチノイドのモニタリングを行い、日本での汚染の実態把握も急がれます。

 同時に、我々は、ネオニコのミツバチへの脅威が人類に対しても現実となる前に、かつてのDDT*と同様に“禁止する”という勇気を持つべきです。」

*DDT:1950年代、60年代に大量に使用された有機塩素系殺虫剤。その毒性の強さと残留、蓄積性により、鳥や魚など野生生物の減少、人への健康影響から現在は世界的に禁止物質となっている。

 

なんとかしたい、と思ったら直ぐにあなたにできること

このメッセージが国会議員そして一人でも多くの人に広がるよう、あなたの声を署名を通じてぜひ国会に届けませんか?

日本でも一日も早くネオニコ系農薬の禁止を実現し、農薬に変わる唯一の解決策として、有機、無農薬などの生態系農業をもっと身近にすることが必要です。

このため、ただいま“子ども・ミツバチ保護法を求める署名”を実施中。8月には、農林水産委員長(衆・参)、有機農業推進議員連盟会長に第一次集約分を提出しました。まだまだ募集中です、ぜひご参加ください。

 

▼このバナーをクリック、20秒でできます。

 

【次回予告】

農林水産省の調査でも、ネオニコとミツバチの大量死の関係は明らかになってきています。

これに対して、農林水産省では「農薬をまくときには、巣箱を移動させてください」という方針。それがいかに効果がなく、養蜂家にとって負担となっているか。次回は、これについてベテラン養蜂家さんからのお話です。(つづく

 

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