こんにちは。食と農業の石原です。
台湾から食の安全に関する嬉しいニュースが入ってきました。
学校給食で遺伝子組み換え食品の使用を禁止することが決まったのです。
12月14日、台湾の立法院院会(国会本会議)は学校給食で遺伝子組み換えの食材や加工食品を給食で使用することを禁止する学校衛生法の改正案を通過しました。今後、台湾の給食で遺伝子組み換えの生鮮食品や一次加工食品を使用することができなくなります[i]。
子ども達の食の安全を考慮した決定
台湾では近年、食品に有害な添加物や成分が混入しているのが次々と見つかり、人々の食の安全に対する意識が高くなっています。2015年の12月12日には、食品の安全を求めるデモが台北市内で行われ、陳情書を渡された内閣は食品の安全維持の対応を約束しました[ii]。
遺伝子組み換え食品に対する懸念も指摘されています。
民進党の林淑芬議員によると、台湾では年間230万トンの大豆を輸入しており、そのうちの90%が遺伝子組み換え[iii]。さらに遺伝子組み換え作物の多くは、家畜の餌と同レベルの規準で手続きされ、出荷されているという[iv]。
林議員は、「もしこのような作物が学校給食で子ども達に提供されるならば、子どもの健康に悪影響を及ぼす恐れがある」と言及しました。
国民党の盧秀燕氏も、「もし学校の生徒が遺伝子組み換え作物で作られた食事を食べているならば、生徒は“不必要な危険”にさらされることになる。これは食の安全の危機に等しい」とコメントしています。
リスクだらけの給食を食べさせたくない
遺伝子組み換え食品にはどのようなリスクがあるのか、研究者の間でも様々な議論がありますが、ここでは2つのリスクについてお話します。
一つ目は、遺伝子操作した作物の安全性が確かではないということ。
WHOは「遺伝子組み換え作物は安全ですか?」という問いに対して、「遺伝子操作は異なる作物ごとに異なる方法で行われるため、安全性はケースバイケースで確認する必要があり、すべての遺伝子組み換え作物が安全と言い切ることはできない」と回答しています[v]。
さらに2015年には、300名を超える研究者によって、「遺伝子組み換え作物の安全性には科学的な合意がなく、安全性は個別のケースで調査されるべきだ」との共同声明を出しています[vi]。
このように遺伝子組み換え技術はまだ完璧とは言いがたく、遺伝子操作によってどのような結果が生じるのかは未知数です[vii]。
タイでの抗議活動(2015年12月)
二つ目は、農薬汚染。
遺伝子組み換え作物には、多くの場合、生産の際に毒性が強い除草剤が撒かれていて、あらゆる植物を枯らしています。
そのため、農薬汚染による健康や環境への影響が懸念されています。
遺伝子組み換え作物とセットで使われる除草剤に含まれるグリホサートという成分は2015年3月に国際がん研究機関(IARC)は「ヒトに対しておそらく発がん性がある」とランクしました[viii]。これに対して製造会社は猛反発しており、グリホサートの安全性をめぐる議論が世界中で渦巻いています。
遺伝子組換え作物に使われる農薬、ラウンドアップレディー
このように遺伝子組み換え作物による環境と人体へのリスクは、まだ確実にわかっていないことが多く、長期的な影響への研究もまったく不十分です。
成長真っ盛りの子ども達に、学校給食で“あえて”遺伝子組み換え食品を食べさせて、“不必要”なリスクにさらす、そんなことを望む親はいないはず!
台湾の遺伝子組み換え食品を給食から排除する決定は、子ども達の食の安全を守る第一歩となりました。
それでは日本の現状は・・・?
台北市教育局によると、すでに市内の235校の内103校が遺伝子組み換え食品を使わないようにしています[ix]。この法律が施行すると、遺伝子組み換え作物に配慮していない学校にも転換が迫られます。
保護者としては、食の安全面で学校を選びたくなるのではないでしょうか?
安全な給食を提供しているリストがあればと思ったことはありませんか?
子ども達に安全安心な給食を届けるため、グリーンピース・ジャパンはハッピーランチガイドを作成しました。
▼クリックするとガイドをご覧いただけます
全国の私立幼稚園にアンケート調査した結果に基づき、給食に無農薬食材をほぼすべて導入している幼稚園、将来的に使っていきたい幼稚園、食材の放射能調査を行っている幼稚園のリストを掲載しています。
リスト以外にも、身近で有機農業を実践できるCSA農園(CSA:Communiy Supported Agriculture地域が支える農業)の紹介など、地元の農家さんと協力しながら幼稚園に安全安心なオーガニック給食を広げるためのアイデアがたくさん書かれています。
日本でも有機給食を広げていく取り組み、どんどん広めていきましょう。
是非ハッピーランチガイドもダウンロードしてください!!
>関連記事「遺伝子組み換え食品 食べてませんか?」
出典
[i]“台湾、学校で遺伝子組み換え食品の提供禁止へ.” 中央社フォーカス台湾, 2015年12月14日. http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151214-00000007-ftaiwan-cn
[ii]”食品の安全求め市民がデモ 内閣が対応を約束.”フォーカス台湾, 2015年12月13日.http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201512130002.aspx
[iii]“台湾、学校で遺伝子組み換え食品の提供禁止へ.” 前掲.
[iv]“Law passed to ban GM food in school meals.” Focus Taiwan News Channel, 2015年12月14日. http://focustaiwan.tw/news/afav/201512140031.aspx
[v] WHO, “Frequently asked questions on genetically modified.” May 2014. foodshttp://www.who.int/foodsafety/areas_work/food-technology/faq-genetically-modified-food/en/
[vi] Hilbeck, A., Binimelis, R., Defarge, N., Steinbrecher, R., Székács, A., Wickson, F., … & Wynne, B. (2015). No scientific consensus on GMO safety. Environmental Sciences Europe, 27: 1-6.
[vii] Greenpeace 2015. “Twenty years of failure: Why GM crops have failed to deliver on their promises.
[viii] International Agency for Research on Cancer. “IARC Monographs Volume 112: evaluation of five organophosphate insecticides and herbicides.” March 20 2015.
[ix]“Law passed to ban GM food in school meals.” 前掲.