先日、第5回お魚スーパーマーケットランキングを発表しましたが、もうご覧いただけましたか?海洋生態系担当の吉野良子です。

 

準絶滅危惧種のビンチョウマグロも大量廃棄されていました・・・

連日トップニュースで取り扱われている、廃棄食品の再流通スクープ。その中には、ビンチョウマグロの冷凍加工品も含まれていましたね。

『中日新聞』によれば、当初廃棄対象だったのは2トンだそうです。2トンってどのくらいでしょう?ダンボール箱96箱で、やっと0.5トン(※1)。単純計算でダンボール箱約400箱…。どのくらいのビンチョウマグロが廃棄の憂き目にあったのでしょう。

幼い子を持つ一消費者として、食の安全の根幹が揺らぐような大事件であり、不安とともに強い憤りを感じています。と同時に、やっぱり思った通り、マグロだって山のように廃棄されているじゃない!無駄になっているじゃない!と怒りがこみ上げてきました。絶滅危惧種なのに

 

誰かの犠牲の上に成り立つ経済モデルは、ノー!

現在、絶滅の危機にある魚介類でさえ、薄利多売され、廃棄されています。美しい言葉の並んだ調達方針・・・でもそれは持続可能な調達基準にまで具体化されていない場合がほとんど。絶滅危惧種などの資源評価が実際の調達行動に反映されていないのです。文章化された調達方針さえないところも多数存在しているのが悲しい現実です。

だから当然のように絶滅危惧種も店頭で安売りされ、大量廃棄されているのです。

加えて、薄利多売の収益モデルの影には、現代の奴隷労働問題さえ潜んでいます。こうしたビジネスと人権侵害の問題は今や世界的に注目される問題ですが、実は日本政府はこうした問題に対して適切な対策をまったく取っていません。特に漁業は一度航海に出てしまうと、戻りたくても戻れないという仕事上の制約から、強制労働が発生しやすいとされています。

私たちの食卓の向こうにそんな深刻な人権問題があることを知ってしまった以上、黙って見ているわけにはいきません。知らずに知らずのうちそうした経済モデルに加担させられる現実には、消費者自らが断固レッドカードを突きつける必要があります。今回のランキングは、そうした問題点に光をあて、大手小売業の責任として調達方針の具体的改善を求めました。(※2)

そして、今年の調査では、新たな試みとして、マグロに焦点を当てた食品廃棄問題も問いました(※3)。日々、スーパーでお買い物する主婦として、絶滅危惧種の魚介類もかなり「もったいない」状態にあるのでは?という感覚があったからです。

 

スーパーのマグロ、実際どうなの?!

聞いてみました。スーパー各社に(イオン、イトーヨーカドー、西友、ユニー、ダイエー)。マグロがどれくらい廃棄されているのか。

各社への質問票では、食品ロスの責任の一端を担う小売業者として、持続可能性という観点からどのような取り組みをしているか、鮮魚マグロ(刺身盛合せを含む)、それ以外の鮮魚、惣菜(寿司)の各年間廃棄量、そして規模の異なる各社から出てくる数値を公平に理解するために、仕入れ量に占める割合を質問しました。またこの問題に関する消費者への情報提供の取り組みについても触れています。

マグロ廃棄の実態など、各社の回答の詳細は、次回のブログでご紹介したいと思います。

いつものスーパーが何を考えているか、知りたい方は、こちら!

 

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参考資料

※1)「産廃業者から108食品 みのりフーズ、生協のマグロも」2016年1月19日付け『中日新聞』ウェブサイト(http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016011902000063.html)

※2)グリーンピース・ジャパン「ブリーフィングペーパー:お⿂スーパーマーケットランキング 5 ̶過剰漁業・違法漁業・強制労働を⽣む薄利多売モデルに変化を」http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20160127-briefing-Supermarket5.pdf

※3)「食品廃棄(Food Waste)」と「食品ロス(Food Loss)」の違いについて:FAOは「食品ロス」を「生産や収穫、加工などの過程で失われてしまうもの」とし、小売業者や消費者の販売行動、消費行動に起因する「食品廃棄」と区別して定義しています(FAO, “Global Food Losses and Food Waste,” 2015, p.2, http://www.fao.org/docrep/014/mb060e/mb060e.pdf

しかしこのFAOの用法と、日本の農林水産省が使用する「食品ロス」の用法は、FAOの「食品廃棄」を指す概念として使用されています。日本での一般的用法も考慮して、ここでは、両者を特段の区別なく使用することとします。