こんにちは、食と農業担当の関根です。
みなさんが厚生労働省に送った、新ネオニコ系農薬スルホキサフロルに関するパブリックコメントが、6月21日に開示されました。
暮らしや養蜂の立場からの切実な意見、専門家から、スルホキサフロルの危険性を警告する科学的な意見など386件(95%以上が反対意見)です。
前回のパブコメ534件とあわせると900件を超える真剣な意見が厚生労働省に届けられています。以下のリンクで全文公開していますが(*1)、その中からいくつか紹介します。
 
 

 養蜂家から

「養蜂を営んでいます。養蜂家の立場からコメントします。現在までの8〜9種類のネオニコチノイド系農薬に対しても充分な養蜂家の意見に耳を傾けず、ミツバチで詳細な実験もしなかったまま世に出し、大変な問題をひきおこしているのをみると、現段階においての新たなスルホキサフロルの承認には反対です。」中略」
続きと他の意見も読む⇒PDFリンク① 
 

子育て中の方から

「現在二歳児の子育て中ですが、この子が今後の人生で食べる日本の野菜が本当に安心で安全なものであることを願ってやみません」「こどもへの影響が心配です。また、ミツバチの大量死などについても充分審議されておらず、諸外国と比較してもともと基準が甘いのだから規制を強化する方向で審議を進めることが妥当と考えます」
他の意見を読む⇒PDFリンク②

 

医師も看過できないと考え始めています

「小児科医師として、今回のネオニコチノイド系農薬の中止を求めます。将来生まれてくる子どもたちに大きな奇形や異常をもたらす可能性のある農薬や化学薬品類については、充分に慎重であり、敏感であるべきである。」(以下略)
 続きと他の意見を読む⇒PDFリンク③
  

データの中立性の問題を指摘する意見も

「人体への影響については、第三者による研究が未だ不十分であると考えられる点。食品安全委員会なども採用している情報は製造メーカーによって出されたものであり、当然ながら利害関係が生じます。(中略)メーカーによる調査結果についても、外部の団体からは反論が出されており、しっかりとした第三者による調査が望まれます」(以下略)
続きと他の意見を読む⇒PDFリンク④
 
Dow Chemical
 

今回は賛成意見も十数件出されています

「果樹のアブラムシ、カイガラムシ等の抵抗性対策のため、スルホキサフロルのような新規作用性農薬の早期登録を希望する」

でも消費者からはこんな声が

「ネオニコ系農薬スルホキサフロルの使用を認めないでください。安心して食べ物が食べれるように農薬に頼らない農業政策をお願いします。個人的に有機野菜等を選んだとしても、ミツバチがいなくなったり少なくなったりすると、有機農業等にも影響します他人事ではないのです。ネオニコ系農薬スルホキサフロルはいりません。」
他の意見を読む⇒PDFリンク⑤
農薬に頼らない農業を支えること、政策でも、消費者や小売店からも、もっと進めていく必要がありますね。

 [↑ビタミンAを多く含む食物の多くは、花粉媒介によって支えられています]

今回は専門家からの意見も多数寄せられていました

下記はその1つで、科学的な観点から、政府の毒性評価や基準案には問題があるとしています。文章の一部を抜粋して引用します。
「(中略)今回の評価で、スルホキサフロルに遺伝毒性がないにもかかわらず、高投与量とはいえ、ガンの発生を増加させたことは、遺伝毒性がない被験物質の発がん性の危険性を評価する際の新たな問題を示しています。(中略)スルホキサフロルは、(中略)nAchRに対する結合性はラットよりも10倍高いことがわかっているので、人においてはラットよりも強力に何らかの生理作用を有することはまず確実です。これらの背景からスルホキサフロルがDNAに損傷を及ぼさない非遺伝性物質であっても、ヒトでがんを引き起こす危険性はこれまでよりもさらに慎重に評価されるべきだと思います。(以下略)」 
続きとその他の意見を読む⇒PDFリンク⑥
こうした危険性をもつ物質がゆるい残留基準で許可されてしまうと、この農薬を使った「輸入農産物」が流通できるようになってしまいます。 

厚生労働省の専門家の部会・分科会が残留基準値案を承認してしまいました!

養蜂家、消費者、子育てする人、科学者など多くの方のこうした意見を背景に、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会が6月22日に、分科会が6月26日に開かれました。
しかし、スルホキサフロルのパブリックコメントは、事前に委員に送付されてはいたといえ、その場では「報告」のみ(*2)。そして、「食品安全委員会に差し戻すような新しい科学情報がなかった」として、残留基準案は部会を通過してしまいました(*3)。 続く分科会でも委員が、アメリカでは散布に条件がついたことをとりあげ、「ミツバチや環境への影響を配慮してほしい」との指摘をしたにもかかわらず、審議が深まることはなく、そのまま次に進んでしまったそうです。
残留農薬の基準は、暮らしにも直接関係し、市民が高い関心を持ち、多くの意見を述べてきた重要な問題で、こんなに簡単にすすめてはならないことです。
もしもこの先、手続きが進んで、国内の使用(登録)が許可されると、国産の農産物や環境にも農薬の影響が広がってしまいます。
ネオニコ系農薬がもたらす生態系への影響も明らかになってきている今(*4)、新たなネオニコの使用を許さないために、私たちには、できることがあります。

今、あなたにできることがあります!

〈1〉スーパーに私たちの声を届ける

このキャンペーンを通して、スルホキサフロルを含む、ネオニコ系農薬の問題について、あなたをはじめ多くの消費者が気づき、考えています。これはとても大きな力なんです。その声を今度はスーパーや生協にも届けましょう。
たとえば、スーパーや生協など小売店が新たなネオニコを使った農産物は扱いませんと決めたり、「農薬にたよらない有機農産物をもっと売ります」といった方針を示すことは、農薬に頼らない農業を支援し、新たなネオニコ系農薬の国内での使用を防ぐ力になります。
このバナーをクリックして、スーパーに、国産オーガニックの野菜やの常設コーナーをつくるように伝える署名に参加してください。
 

「国産オーガニックを全国に!」いますぐ署名する >

〈2〉環境省に、スルホキサフロルを許可しないで、というパブコメを送る

スルホキサフロルは、まだ登録(使用許可)になったわけではありません。まだ環境への影響という観点での評価があります。
残留性が強く、水に溶けて拡散するネオニコ系農薬の生態系への深刻なリスクはわかってきたばかり。環境省は水産動植物の被害防止のための基準「農薬登録保留基準」を設けていますが、残留性の高いネオニコ系農薬の危険を正しく評価できているかどうかは疑問視されています。水性動植物以外の野生の生物(たとえば野生のミツバチなど)への被害を防ぐしくみもありません。いま拙速に新たなネオニコ系農薬を導入しないよう、あなたも意見を伝えませんか?
パブコメ募集のページはこちらです(←リンク先ページの下の方に案と解説資料があります)。
 
*1 パブリックコメント全ファイル       
*2厚労省の作成した 報告資料
*3パブリックコメントは、「国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的」(総務省)としたものです。新たな情報がないことは、議論を省く理由にはなりえません。
*4 グリーンピースの最近のレポート「ネオニコチノイド系農薬の環境リスク:2013年以降明らかになった証拠のレビュー」日本語版)では世界の科学的知見をまとめています
 
 
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