こんにちは、食と農業担当の関根です。
今、日本各地のミツバチ、さなぎ、そしてハチミツまで、ネオニコチノイド系農薬に広く汚染されていた、という新しい研究結果のニュースが駆け巡っています[1]。

「ネオニコ農薬は今すぐやめてほしい」。養蜂家や消費者の切実な思いをよそに、農林水産省はさらなるネオニコ解禁に向かおうとしています。それを止めるため、7818筆の署名[2]を農林水産省に8月25日に提出しました。

提出に行ったのは、日本有機農業研究会、ネオニコ農薬の中止を求めるネットワーク、グリーンピース・ジャパンの3団体。
「7818筆の署名と意見、そして計900件あまりのパブコメ(下の写真)の内容を重く受け止め、新たなネオニコ農薬『スルホキサフロル』を承認しないこと」をあらためて要請しました。

後退する農林水産省

話し合いの中から、農林水産省のミツバチを守るための対策が、足踏み…というより後退しつつあることがわかってきました。

❏ まず、7月の農水省の審議会では、農薬登録時のミツバチへの被害を考慮した農薬登録制度の改善が議論されたということが話されました。これは、将来的にミツバチへの被害を考慮するという意味でいい方向です。

ですが、実質的なことは何も、スケジュールさえ決まっていないそうで、具体化が急がれます。

❏ 一方、農林水産省では、新ネオニコ農薬のスルホキサフロルについては、厚労省や環境省など他の省の審査*で問題がなければ、そのまま登録する予定だというのです。これはむしろ後退です。現行の登録制度を改善しようとするなら、解禁には慎重になるべき。私たちはその点もあらためて強調しました。

*厚生労働省の決める残留基準や環境省の決める水産動植物の基準など。審査はすでに終了している。

❏ また、実際の被害に対しては、「平成25年からミツバチの農薬の影響の調査を実施している。農家と養蜂家とのコミュニケーションの強化を引き続き図っており、結果や効果も把握・公表する。ミツバチの注意事項をラベルにはるなど、農家の使用方法を徹底する」と、従来の説明範囲にとどまっていました。

農薬メーカーに不利益な情報は秘密

アメリカでは、スルホキサフロルの使用範囲が厳しくなりましたが、それは、スルホキサフロルを使った農薬「製品」の毒性が、有効成分であるスルホキサフロル単体のときより強いことが明らかにされたためでした。
では、日本ではどうしているのか?農水省は、「農薬メーカーに不利益になる」といって、「製品」の毒性データを入手しているかどうかさえ説明しようとしません。でも、将来ホームセンターや農協やネットで誰でも手に入り、農家や一般の人が使う「製品」のほうが毒性が強いとしたらなおさら、有効成分と同じように毒性を公にすべきです。

ニホンミツバチへの毒性は不明

日本の固有種であるニホンミツバチを飼育する養蜂家は増えています。しかし、スルホキサフロルのニホンミツバチに対する毒性は調べていないそうです。最近では、セイヨウミツバチよりもネオニコ農薬に対して弱いことが報告されています[3]。野生のものと飼育されているもの、両方いるニホンミツバチへの毒性は、生態系と家畜、両方の保護の面から、無視できません。

<↑ニホンミツバチ>

ミツバチにも農家さんにもやさしくない農薬散布はもうやめて

稲の穂が出る時期、7月末から8月にかけて、無人ヘリやドローンで空中散布されるネオニコ農薬などがミツバチの大量死につながっていることは、農林水産省もみとめています。
お米(稲)にネオニコなどの農薬をまくのは、カメムシを殺すため。カメムシが若い稲穂の汁を吸うと、黒い点のあるお米ができてしまうのです。黒いお米が0.2%まじるだけでお米の買取り価格ががっくりさがってしまうというのが今のお米の等級制度で、こういう仕組みさえなければネオニコ散布はやめられる、と農家さんたちからも声があがっています。

いまは、黒いお米を取り除く機械「色彩選別機」も性能が上がり、普及していて、農林水産省も購入補助をしています。
農林水産省は、お米にまで新たなネオニコ農薬使用を解禁するのではなく、ネオニコを使わない方向をもっともっとサポート、そしてリードすべきです。このことも合わせて要望しました。

 ネオニコフリーにチャレンジする農家

政府の対応が後退しつつある中、環境を守り、消費者に安全なお米を届けたい、という農家さんたちが各地でネオニコフリーに取り組みはじめています。

その1つはグリーンピースも調査のために訪問した石川県の河北潟の農家さんたち。その「生きもの元気米」は、NPOの河北潟湖沼研究所が、生きもの調査を行い、生物多様性を保護しながら米作りをしていることを認証しています(上の写真は、田んぼの生き物調査をする同研究所研究員)。
そんな農家さんたちと、あなたもつながってみませんか?
農薬不使用の「生きもの元気米」は、今予約を受け付け中です。農薬に頼らず、生きものが元気な田んぼですくすくと育っているお米、この秋にお届けします。

☆予約はこちらから☆

河北潟湖沼研究所のサイトにとびます。サイトからは農家さんごとの田んぼの情報も見られます。

身近なスーパーの出番です

ネオニコフリーに取り組む農家さんたちも、スーパーの役割に注目しています。

「多くの人が買い物をするスーパーや生協には、 安全なものを求めているあなたのような一人ひとりの手元に、きちんと届くような仕組みをつくってほしいと思います。」(河北潟で無農薬の米をつくる石橋さん)[4]。
作り手と買い手が安心でつながる場所になるよう、ぜひあなたも、署名をお願いします。

「有機のコーナー全ての店舗に!」いますぐ署名で伝える>>

[1]  蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出 (日本経済新聞2018年8月28日)
[2] この署名はオンライン署名サイトyouandme.jpと署名用紙により集まったものです。すでに厚生労働省、環境省にも提出してきました。
[3] ブログ ニホンミツバチたち、気をつけて!〜農薬の有害性に新事実
[4] ブログ農薬ではなく生きものの力を借りた農業を

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