こんにちは、食と農業担当の関根です。
ドローンや無人ヘリなどで、お米に散布されるネオニコチノイド系農薬。ミツバチ大量死の原因にもなっています。
でも、消費者ニーズをよく見つめれば、農薬をやめることは難しくない、という稲作農家の意見もあります。
米どころ秋田県大潟村の稲作農家、今野さんに詳しくお話をききました。 
 
[写真:今野さんの後ろには、丹精こめて世話をしてきた稲穂が見渡す限りひろがる]

農家はムダな農薬に費用をかけたくない

「ミツバチ被害の多くは水田に撒かれたカメムシを退治する殺虫剤が原因と言われていますが、その主流はネオニコチノイド系農薬です。でも実は、ミツバチの大量死を防ぐのはそれほど難しくないのです。米農家だって、必要のない経費を掛けてまでカメムシを退治したいとは思っていませんから」と今野さんはいいます。これはどういうことなのでしょうか。


[写真:これが斑点米の原因となっているカメムシの一種。岩手農業研究センター提供]

異物の混入よりも「見た目」に厳しいお米の検査基準

「カメムシが米の若い穂に含まれるデンプンを吸うと、黒い点のあるお米(斑点米)ができてしまいます。それを防ぐためにカメムシ退治の農薬をまく必要がありました。昔は斑点米がまじっていると消費者からクレームがあったからだそうです。でも、今は違います。私が大手生協の広報に問い合わせてみたところ、現在ではほとんどの精米工場には、色が付いた米粒などを自動的に取り除く機械(色彩選別機)が設置されていますから、クレームはありません、といっていました。」と今野さん。 
「それなのに、安全性に問題がなく、精米のときに取り除かれる斑点米の混入が、小石など異物の混入よりも厳しいという規定が残っているのはおかしいです」と指摘します。
確かに、スーパーで買ったお米に斑点米を見かけることはまずないですよね。しかも、斑点米は特別な味やにおいもありません。消費者ニーズは「安全」や「おいしさ」が優先なのに、見た目ばかり厳しい規定になっています。

[写真:斑点米 岩手農業研究センター提供]

自治体からも疑問の声が

「それでも、厳しい斑点米の規定があるかぎり、農家はカメムシ退治の農薬をやめたくてもやめられないのです」と、悩ましい現実を語る今野さん。
水田の農薬によるミツバチ被害にもつながる斑点米の検査規定。いま、この規定を見直すべきだという声が、都道府県の病害虫防除担当の間でも広がりつつあります。
市民団体が行った都道府県アンケート*1によると回答した22府県のうち12の県がこの規定を緩和すべきと答えています。さらに、
『流通段階では問題となっていない一方で、生産段階では(カメムシ)防除コストが負担となっている』(香川県)
「(カメムシ類は)減収被害を引き起こすものではない。着色粒の規定をクリアするためだけに農薬が使用されている」(岩手県)
など具体的な指摘もあがっています。

[写真:流通過程の精米で、通常は取り除かれてしまう斑点米]

農家も農林水産省に要望

今野さん自身も、農作業の合間を縫って今年9月8日、秋田県から新幹線に乗り、霞が関の農林水産省を目指しました。「農産物検査法に基づく米穀検査規定の見直し手続きを進めるよう求める申し入れ」を同省の穀物課に提出するためです。提出時に今野さんは、「斑点米の検査の規定が、無駄な農薬散布を助長していて、農家の不必要な負担を強いるものとなっている」と、問題の解決を訴えました。

[写真:農林水産省への申し入れと交渉。左は同省の穀物課課長補佐]

消費者の声がないと変えられない

「とはいっても、検査規定を変えるのは農家の意見だけではできません。お米に不必要な農薬が使われていることを消費者にも知ってもらって、本来、米の検査は誰のためにあるのか、一緒に考えてほしいんです。
そして、消費者にも農家にもメリットのない斑点米の規定を一緒に変えていければ、と思っています。
そうすれば、農家は無駄な農薬を散布しなくてすむようになり、お米もより安全になり、ミツバチ被害や環境汚染をなくすことにもつながると思うんです」
 

あなたの声でネオニコフリーのお米を「当たり前」にしよう

無駄な農薬を「当たり前」のように使わせるしくみを終わりにするためには、消費者と農家がちからをあわせることが不可欠です。ぜひ下のバナーをクリックして賛同してください。声を大きくして、どれだけの人が環境や農家に負担のないお米を求めているか見える化し、ネオニコフリーのお米を「当たり前」にしましょう!
 

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*1  『農産物検査(お米)に関するアンケート調査』(H27年農林水産省)市民グループ調べ
*2 米には1等米、2等米、3等米という等級があり、その等級を決める農産物検査で、色が付いた米「着色粒」が混じっていると等級が下がる規定がある。 この規定はとても厳しく、着色粒の混入限度が1等米で0.1%(1000粒に1粒)なのに対し、小石など異物の混入限度は0.2%で、着色粒よりも緩くなっています。  着色粒の一種である斑点米の規定は厳しくて、斑点米が1000粒に1粒までだと「1等米」、1000に2〜3粒だと「2等米」。1等米とくらべると2等米では、60kgあたりの出荷価格が600円〜1000円も下がってしまう。
 
 

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