わたしの知っている福島は、福島駅を降りて少し歩けば阿武隈川のほとりから青い山並みがぐるりと見えるうつくしい福島。

その風景は今も変わっていません。

けれど、放射線調査のために訪れた福島は違います。

それがこのビデオに収められた福島です。

原発事故が変えた風景

何段にも積まれた黒いフレコンバッグ。

それらをビニールシートで覆った山、また山

そして森の中に隠すかのように存在する除染廃棄物を燃やす焼却場。

原発事故が変えた福島の風景です。

日々運ばれる除染廃棄物

調査場所に向かう私たちの車を、1時間に6台もの除染廃棄物トラックが追い越していきます。

除染ででた土壌などの廃棄物を貯蔵施設や焼却場に運んでいます。

2017年4月から9月末までに、33,723台のトラックが、大熊町と双葉町にある中間貯蔵施設に除染廃棄物を運びました。

政府は、2020年の東京オリンピック開催までに500万~1250万m³程度の除染土壌等を搬入したいようです。

もちろん、それで終わりではありません。

除染廃棄物の量は、約1,600万~約2,200万㎥と推計されているのです。

これは、東京ドーム (約124万㎥)の約13~18倍に相当します。

福島県内の除染廃棄物だけ、しかも焼却して量を減らした後の数字です*。

帰還困難区域の避難指示解除

除染は避難指示解除と連動しています。

政府は、現在最も高濃度の放射能が測定される地域である「帰還困難区域」でさえ、除染して一部避難指示を解除しようとしています。

なるほど、例えば飯舘村で言えば、市街地の線量は下がりました。

しかし、村の75%を占める森林は除染されていません。

それなのに、政府は「除染は完了しました」として、人々を戻そうとしています。

事故を起こし、到底償いきれないような迷惑と困難を住民に強いておきながら、事故前とはかけ離れた状況に住民の帰還を進め、賠償や援助も打ち切っていく。

それは、人権侵害にほかなりません。

 

実際に来てもらわないとわからない

飯舘村の村民で、今も仮設住宅に暮らす安齋さんは、こう言います。

「放射能は目に見えないし、臭いもしないので、ある学者さんが、放射能に色がついてたらもう誰も帰らないよね、そういう話もしていましたけど、本当にこの原発事故の恐ろしさ、飯舘村の現状、というのは、実際飯舘村に来てもらわないと分かりません。初めて飯舘に来ましたという遠くから来る人もいますけど、あの現状をみて、もう絶句ですね」

国連人権理事会の勧告の受け入れを

東京電力福島原発事故被害者への人権侵害は、高線量の地域の避難指示解除だけではありません。

いわゆる自主避難者の住宅支援の打ち切り、避難解除の基準を年間20ミリシーベルトにしたままであることなども深刻な問題です。

グリーンピースは、2017年3月から、他団体や原発事故を経験した福島の女性と協力して原発事故被害者の実情を国連に訴えてきました。

そして2017年11月、スイス・ジュネーブで、国連人権理事会の対日審査の作業部会が開かれ、日本政府に、オーストリア、ポルトガル、ドイツ、メキシコから福島原発事故被害者の人権侵害を是正するよう勧告がでました。

それらの勧告は以下のとおりです。

  • 避難者が帰還に関する意思決定に参加できるようにする、そのために「国内避難民に関する指導原則*」を適用すること
  • 妊婦および子どもの権利を尊重し、放射線の許容量を年間1ミリシーベルトに戻すこと
  • いわゆる自主避難者の住宅面・経済面の支援、健康モニタリングなどを継続すること
  • 福島原発事故の被災者や、原爆の被ばく者が保健サービスを利用できるようにすること

日本政府が勧告を受け入れれば、実際に是正措置をとっていくことになります。

日本政府がこれらの勧告を受け入れるよう求めるこちらの署名に、あなたも参加してください。

原発事故被害者の暮らしを守るために、あなたもぜひ署名して、シェアしてください。

鈴木かずえ エネルギーチーム

*「世界各地に存在する国内避難民の具体的な必要に対処する」ことを目的に、国内避難民の権利、国の責任を述べた国連の文書

*数字は「中間貯蔵施設の現状について」平成29年10月環境省 環境再生・資源循環局 より


グリーンピースは、政府や企業からお金をもらっていません。独立した立場だからこそできる活動で、人のくらしや自然を壊す原発をなくしていきます。寄付という形でも一緒にグリーンピースを応援していただけませんか?

寄付する 

関連記事・ブログ

国連人権理事会の勧告を受け入れて 原発事故被害者の暮らしをまもってくださいーー署名にご協力を

国連に、原発事故の人権侵害を訴える

福島のお母さんが国連に訴えた 原発事故被害者への人権侵害

2017/11/14 国連人権理事会の対日人権審査で、福島原発事故被害者の人権問題に懸念 ーー日本政府は勧告の受け入れを

こちらもオススメ

アップル、Facebook…IT企業が自然エネルギー100%を目指す理由とは?

電力自由化から1年半。もう乗り換えた?よくある疑問、お答えします 

やんばるの森の世界自然遺産登録を喜べない理由

神戸製鋼不正スキャンダル:原子力規制委が電力会社に調査を文書で指示しない理由

石油よりいのちを選ぼう

地球上でいちばん大きい海洋保護区を南極につくろう!

「消費者と一緒なら、水田でのネオニコ系農薬はやめられます」

グリーンピース・ジャパン

ライターについて

グリーンピース・ジャパン
グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。世界中の300万人以上の人々からの寄付に支えられ、企業や政府、一般の人々により良い代替策を求める活動を行っています。ぜひ私たちと一緒に、行動してください。

Comments

あなたの返答を残す